『ブラインドネス』視力を失くしてブタ箱パニック!

映画『ブラインドネス』の一場面 サスペンス
(C)2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures
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大傑作『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス監督による「急に視力が無くなるパニック」な映画です。

人間どもの汚い本性がむき出しになる内容でして、陳腐な言葉で言えば「胸糞映画」にも分類されると思います。劇中で行われていることを考えれば、攻めた内容ではありますが、どうも映画としては欠陥が多いかなぁと。

タイレンジャー
タイレンジャー

世間的に不評であることは頷けますが・・・。

作品概要

2008年製作/121分/カナダ・ブラジル・日本合作
原題:Blindness
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョゼ・サラマーゴ
脚本:ドン・マッケラー
撮影:セザール・シャローン
音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス/ウアクチ
出演:ジュリアン・ムーア/マーク・ラファロ/アリシー・ブラガ/伊勢谷友介/木村佳乃/ドン・マッケラー/モーリー・チェイキン/ミッチェル・ナイ/ダニー・グローヴァー/ガエル・ガルシア・ベルナル ほか

ノーベル文学賞作家ジョゼ・サラマーゴの「白の闇」を、「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレス監督が映画化。突然視界が真っ白になり視力を失う奇病が世界中に蔓延。隔離された感染者たちは不安と恐怖から次第に人間の醜い本性をむき出しにしていく……。混乱する世界の中で唯一目が見える主人公をジュリアン・ムーアが演じるほか、マーク・ラファロ、ダニー・グローバー、ガエル・ガルシア・ベルナル、伊勢谷友介、木村佳乃ら国際色豊かなキャストが顔を揃える。

映画.comより)

予告編

Blindness (2008) Official HD Trailer [1080p]

感想・考察(ネタバレなし)

やがて共喰いをする獣たち

犬や猫って去勢すると、食欲が増進するんですって。

一つの機能が失われると、ぜんぜん関係ない欲望の増進に作用するって面白いですね。

そんなことをボンヤリを考えさせられたのが本作です。

ある日突然、視力が失われるという奇病が世界中に蔓延した世界を描く映画なのですが、視力が失われた人間(というかオトコ)たちの食欲、支配欲、金銭欲、性欲が増大してエライことになります。

視力を無くした人々が感染拡大防止のために、隔離施設に連れて行かれますけど、これが隔離施設とは名ばかりのブタ箱。職員は食事を持ってきてくれるくらいで、他は何もしてくれんない!診察も治療も無ければ清掃もしてくれないんですね(少なくともそういう描写は無いし、施設の床は排泄物だらけ・・・)。

てなわけで、隔離されているのに、中は全く管理されていないという地獄絵図が展開されます。まるでジョン・カーペンターの『ニューヨーク1997』のように隔離された無法地帯での弱肉強食の世界を見せつけられます。

一部のオトコたちは軍事力(誰かが拳銃を持ち込んだ)にモノを言わせて、このブタ箱の中を支配しようとします。食料はほぼ独占し、金品と食料の交換、果ては食料とオンナの交換までも強いる暴君っぷりを発揮します。

視力が失われた結果、人間(何度も言うけど主にオトコ)の野蛮な本性がドバーッと出てしまうんですわな。人間なんて極限状態になれば、文明的とは言い難い野蛮な生き物なんだよなぁと思わされます。隔離と言う名の檻に閉じ込められた獣たちはやがて共喰いすることになる、なんていう見方もできます。

そう、獣と化す人間たちの醜態を眺めるのが楽しい映画です。

映画『ブラインドネス』の一場面

(C)2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures

ただ、欠点の多い映画でもある

本作の設定で「ほぉ!」と感心したのが、主人公(ジュリアン・ムーア)だけは「見える」ということ。

視力を失ったダンナに付き添うために、自分も視力を失くしたと偽り、隔離施設に入ります。施設内の人間は全員が見えていないのに、彼女だけは見えてしまっているのです。

この状況は彼女にとって圧倒的優位!同時に、見たくないものも見えてしまうという不都合も生じるはずですし、見えていることがバレるのではというサスペンス展開もありそうです。

ただ残念なことに、それらに発展しそうなこの設定が作品の中ではうまく活かされていませんね~。生かされたのは終盤の脱出後の展開や、旦那の浮気現場の目撃くらいですかね。

主人公だけが視力があることに何か象徴的な意味を持たせたかったのかもしれませんが(モーゼやノアの喩え?)、物語上の展開でうまく機能しないのは消化不良。

終盤はそれまでの殺伐とした人間の醜態模様を描いていたのとは反して、幸福な時間が描かれますが、「見えなくなった結果、代わりに見えてくる価値観がある」というのはやや凡庸かなぁと。

つまりは日ごろは見落としていた小さなことの幸せに気づく、というようなことですよ。他者のことをちゃんと見ていなかった者が、他者に対して「心の目」を向けられるようになる、という話です。まぁ普通ですね、普通。

最後の説明的すぎるナレーションには萎えました。ただでさえ取ってつけたような終わり方なのに、言葉での説明を加えると余計に陳腐なんですよ。ナレーションが無いほうがまだ良かった気がします。

僕の評価

5点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

脚本が似煮えきらないまな見切り発車で作った感じがします。粗削りで自主製作っぽい雰囲気は出てましたが、それが奏功したとは言い難いですね。

どうでも雑感

・ジュリアン・ムーア、アリシー・ブラガ、木村佳乃が裸でシャワーを浴びる場面がありますが、木村佳乃以外の二人はおっぱいを出しています。

・フェルナンド・メイレレスの持ち味はシリアスなお話であってもユーモアを忘れない絶妙なバランス感覚だと思いますが、本作ではユーモアがほとんど見られず、本領を発揮しにくい題材だったのでは、と考えます。

・民族音楽風のBGMがすごいミスマッチ感があって、良くも悪くも印象に残ります。音楽単体では良いものの、本当にこの音楽で効果的だったのかと言うと疑問はあります。

鑑賞方法

『ブラインドネス』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2021年1月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

フェルナンド・メイレレス監督作品

コメント

  1. 出張ライオン丸 より:

    お久しぶりですタイレンジャー殿。
    拙者も本作の評判は聞いておりますが未だ鑑賞には至らず、おそらく未見のまま忘却の彼方へ消える可能性大でござる。「ある日突然、人類の大半が盲目になる」という設定を聞いた時は往年のSF映画『人類SOS』を連想いたしました
    ( ^o^)

    • ライオン丸殿、ようこそおいで下さいました。
      見どころはある映画ですが、オススメではないゆえ、そのままスルーでもよいかもしれません。
      『人類SOS』とは初めて知る映画でしたが、食肉植物に襲われるなんてそそられますねぇ!

  2. キャン より:

    タイさんの評価も世間の評価もイマイチっぽいですが、この設定だけでかなりそそられてる自分がいます。
    目が見えなくなった人たちの具体的な所作とか、どう表現されるのか、そういった枝葉末節が気になる世界観です。

    木村佳乃さんはオッパイNGだったんですかね?

    • 本作はけっこう挑戦的な内容だと思いますし、観る価値のある映画だと思います。
      ただ、面白いかで言ったら微妙なところかもしれません。
      ディテールには関しては人によって「よく描けている」「全然足りない」に分かれるんじゃないかなぁと。
      なかなか扱いが難しい映画ですよ。

      日本の女優さんは「乳首だけは絶対に死守!」という人が多いですからね笑。
      バンバン脱ぎまくるフランス女優の潔さとは真逆の傾向がありますね。