監督がロバート・ゼメキスで、ハリソン・フォードとミシェル・ファイファーの2大スター主演ということで、当時はけっこう鳴り物入りでしたが、今となっては語られる機会も少なくなった映画かと思います。
僕もすっかりその存在は忘れていたのですが、ネット配信されていたので、とりえず初鑑賞でございます。意味深な題名に謎めいたストーリー、いったいどんな映画なのでしょーか。
ある意味、「熟年夫婦あるある」なんですかねぇ。
作品概要
2000年製作/130分/アメリカ
原題:What Lies Beneath
配給:20世紀フォックス映画
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:クラーク・グレッグ
撮影:ドン・バージェス
音楽:アラン・シルベストリ
出演:ハリソン・フォード/ミシェル・ファイファー/ダイアナ・スカーウィッド/ジョー・モートン/ミランダ・オットー/アンバー・ヴァレッタ/キャサリン・タウン/ジェームズ・レマー/レイ・ベイカー ほか
バーモントの美しい湖のほとりに建つ瀟洒な家。娘を大学へと送り出したノーマン教授と妻のクレアは二人で幸せに暮らしていた。最近隣に引っ越してきたフューアー夫妻はケンカが絶えず、心配して隣家を訪ねたクレアはフューアーの妻メアリーから「夫が恐い」と打ち明けられる。数日後、隣家からメアリーは姿を消し、それと同時にクレアの周りでは奇妙な出来事が起こりはじめる。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
熟年離婚のサスペンスホラー化
本作は熟年夫婦が怪しい隣人に疑念を抱いたり、自宅が奇怪な現象に見舞われるサスペンスホラーです。
同時に【熟年離婚の危機】というものをメタファーとして、サスペンスホラーに置き換えたようにも思えるのです。
大事に育てた一人娘が大学に進学するため、ノーマンとクレアの熟年夫婦のもとを離れるところからこの映画は幕を開けます。これからは夫婦水入らずで「若いころのように2人だけの時間を大事にしょうね、チュッ」とベッドの上で再び燃え上がる熟年夫婦。
仕事熱心なノーマンとは対照的に、専業主婦のクレアは娘がいなくなって心にポッカリと穴が開いたような心情になってしまいます。何よりも愛情を注いだ娘がいなくなった代わりに、他のことに意識が向いた結果、新しく越してきた隣人夫婦に疑いの目を向けるようになります。隣人の旦那が奥さんを殺したのでは、と。
同時に心霊的としか思えない怪奇現象が家の中で多発します。すべてはクレアが一人でいるときに起こる現象です。仕事に没頭するあまり帰宅が遅いノーマンは、隣人への疑惑や怪奇現象については信じておらずクレアが一人で憔悴していきます。そしてクレアはノーマンに対しても疑念を抱くようになり・・・。
というストーリーのですが、僕はこの映画は、「子ども」の存在によって均衡を保っていた夫婦が、「子ども」がいなくなることによって、その関係性に綻びが生じる話だと思いました。
子どもを介することによって成り立っていた夫婦関係が、マンツーマンになるとどうも居心地が悪い、というのは熟年夫婦によくある話ではないでしょーか。長年の「適度な距離感」から急に「密接な距離感」に変わってしまうとお互いに不都合であるというのは「コロナ離婚」という別パターンが示す通りです。
「熟年離婚をちょっと大げさにサスペンスホラーで表現してみました」という作り手の意図だとすると、その後の展開や結末にもある程度は納得がいくものだと思いますね。
© 2000 DreamWorks LLC. and Twentieth Century Fox Film Corporation.
作品そのものに対する疑念(ハラハラ)
ただ、本作にはストーリー展開と演出に少し難があります。
ネタバレ防止のためにあまり詳しくは書きませんが、ひとつはサスペンスの対象となるものが徐々にスライドしていく展開を良しとするかどうかは好みの分かれるところかと思います。
あらゆる不吉な事象の原因はAだと推測される
↓
いや、Aではなく、どうやらBが原因らしい
↓
実は意外にもCかもよ・・・。
というように、悪く言えば「黒幕のたらい回し」状態が長らく続きます。良く言えば二転三転なのですが、それは観客をうまく振り回せた場合に言えることかなぁと。
結局、本作は結末ありきで物語展開が組み立てられているような気がします。その結末を途中で観客に感づかれまいと、様々なカモフラージュを仕込んで二転三転を狙ったのかと思いますが、「いかにもカモフラージュ」感があり、やや興ざめではあります。
この物語展開をまどろっこしいと感じさせる要因はもう一つあって、それはお化け屋敷方式のドッキリ演出が多すぎるということです。
何か不穏な空気が漂い始め、人物の吐息した聞こえないほど静寂が画面を支配して、緊張感が高まったところで・・・ジャキーン!というギロチンが落ちたかのような大きな音を出して「ドッキリさせる」という例のアレです。それがあまりに多いのです。
しかも、その場面で観客も思わず悲鳴をあげそうになったところ・・・「なんだ、犬か」「なんだ、夫か」というホラー映画の常套手段であるフェイント、これも多すぎます。1本の映画の中では使えて2回までだと思いますが、それを越すと映画そのものが「オオカミ少年」であるかのように見られてしまうので注意が必要であるはずです。
てなわけで、なかなか真相にたどり着けないし、ハッタリ演出も多すぎるため、僕は鑑賞中に本作に対してある疑念が沸いてきました。「この映画、ちゃんとオチをつけられるんだろうか?」と。物語そのものにハラハラするのではなく、「映画に着地点があるのか」という点にハラハラするという奇怪な体験をしました。
僕の評価
4点/10点
熟年離婚のホラー化というのは興味深いけど、展開とドッキリ演出が足を引っ張った印象です。
どうでも雑感
・中盤でミシェル・ファイファーがいきなり痴女化する場面は笑えました。
・ヒッチコックを意識しているという演出や、さりげなくCGを活用した「実際にはありえないカメラワーク」なんかは観ていて楽しかったですけどね。
鑑賞方法
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※本ページの情報は2020年12月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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