『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』感想・考察:ドラッグ映画だけど、道徳的な結論に至る

映画『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』の一場面 SF
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鬼才ケン・ラッセル監督作品です。トリップ映像が多く含まれるので、時代背景も考えると普通にドラッグ常用者が作った映画のように見えます。ただ、本作が謎なのは、反社会的な映画に見えるのにスゲー当たり前のメッセージに着地するという点です。

タイレンジャー
タイレンジャー

家庭をおろそかにする旦那は他人事ではないかも?

作品概要

原題:Altered States
1980年/アメリカ/103分
監督:ケン・ラッセル
原作:パディ・チャイエフスキー
脚本:シドニー・アーロン
撮影:ジョーダン・クローネンウェス
音楽:ジョン・コリリアーノ
出演:ウィリアム・ハート/ブレア・ブラウン/ボブ・バラバン/チャールズ・ヘイド ほか

1人の若い精神心理学者が自ら実験台となり、人類の記憶の世界をたどって生命誕生の根源を探ろうと試みる姿を描くSF映画。製作総指揮はダニエル・メルニック、製作はハワード・ゴットフリード、監督は「バレンチノ」のケン・ラッセル。パディ・チャイエフスキーの原作を基にシドニー・アーロンが脚色。撮影はジョーダン・クローネンウェス、音楽はジョン・コリグリアーノ、編集はエリック・ジェンキンスが各々担当。出演はウィリアム・ハート、ブレア・ブラウン、ボブ・バラバン、チャールズ・ハイド、ティオ・ペングリス、ミゲル・ゴッドローなど。

(映画.comより)

予告編

Altered States Trailer (1980) Ken Russell Movie

感想・考察(ネタバレなし)

愛だろ、愛っ。

ドラッグムービーとして名高いカルト映画。

もちろん表面的な物語は「生命の根源の探求」や「行き詰まった西洋文明がスピリチュアルなものに救いを求める」といった所だけど、どう見てもドラッグについての映画。LSD常用者が作ったとしか思えないサイケデリックで大袈裟なトリップ映像が何よりの見どころ。

ただ、そんなバリバリのドラッグ映画であるにも関わらず、超・道徳的な結論に終わるというのが本作の面白いところ。

本作の最終的なメッセージが何かというと、
①ドラッグはやめよう
②奥さんを大事にしよう

です。

…文部省推薦映画か?

こりゃ一体どういうことか。まずはストーリーを追ってみましょー。

いかにも頭が良さそうなウィリアム・ハートが演じるのはハーバード大学に在籍している科学者。父の死をきっかけに信仰心を失い、真理の追求に取り憑かれた男だ。序盤で家庭を持つことになるけど、家庭を疎かににし、離婚することに。

信仰心を持たない、というのは欧米の価値観で言うと「フラフラしている人」ってことでしょうね。この男はフラフラしてる上にヒッピー的な思想を持っていて、研究と称してドラッグにハマっちゃってるんです。

超インテリなステータスながらも根はヒッピーというのは、序盤のホームパーティーでドアーズとかインドの伝統音楽とかを流してることで、それとなく匂わされます。

で、メキシコの少数民族からもらった幻覚キノコでトリップしまくって、どういう訳か原人に退化してしまう(すごい展開)。

それでも研究から抜け出せずにいると、最後は醜い肉塊となって悶え苦しむ羽目に。これはドラッグの副作用を表しているとしか…。
最終的には別れた奥さんの愛の力で禁断症状から解放されて、映画は終わる。

主人公はドラッグを用いて「真理」を追求するけど、最終的に辿り着く真理は「愛」だったのだ。
「愛だろ、愛っ」なんて古いCMのキャッチコピーがしっくりくるような結論なんです。

また、ドラッグばっかりやってフラフラしている主人公が人を愛することに目覚めて大人になる(ドラッグ卒業)物語という風にも見ることもできます。
人を愛することで男は大人になる、なんて書くのも恥ずかしい古典的なメッセージですね。麻薬映画なのに。

実際、この結論に至る展開はかなり強引なので、唐突な印象は否めない。全体的にも話が粗い感じがまたトンデモ映画としての風格が漂う一本。

アヴァンギャルドな映画を期待して、ブッとんだ監督、題材、映像の本作を観たけど、最後は真逆の道徳的なメッセージに終わってしまったのは残念かな。いや、むしろアヴァンギャルド→道徳という唐突な展開こそが本作の一番のブッ飛び要素かも?

(画像はIMDbより引用)

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

バッドトリップを疑似体験したい人やアヴァンギャルドな映画を観たい人は観る価値あるかも。

どうでも雑感

・ちなみに『ターミネーター』のタイトルバック(文字が交差するやつ)はそのまんま本作の影響を受けてます。

・ちなみにちなみに、幼きドリュー・バリモアが本作にちょいとだけ出演している。彼女のその後(12歳でコカイン使用)を予見するような映画でもあります。

・ブレア・ブラウンのヌードがあります。

鑑賞方法

2020年10月時点で『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』はアマゾン・プライムやビデオマーケットで配信されております。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることもできます。初月は無料です!

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