若かりし内田裕也さんが麻酔状態の女性たちを襲いまくるという危ない映画です。
仙台クロロホルム連続暴行魔事件(ネーミングがこわい)という実話をベースにしています。
本作のタイトルの意味についても考えてみました。

題材が題材なので手を出しにくい映画ですなぁ。
作品概要
2018年/日本/103分
監督:若松孝二
脚本:内田栄一
撮影:袴一喜
音楽:大野克夫
出演:内田裕也/未唯/中村れい子/藤田弓子/安岡力也/タモリ/沢田研二/原田芳雄/赤塚不二夫 ほか
クロロホルムを部屋にまき散らし、意識を失った若い娘を犯す男がいた。現実に起って世間を騒がせた性犯罪にヒントを得て製作された。脚本は「魔性の夏 四谷怪談より」の内田栄一、監督は「餌食」の若松孝二、撮影は袴一喜がそれぞれ担当。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
水のないプールってどういう意味?
これは大人になってから観ようと心に決めていた映画だ。
中学生の頃、近所のレンタルビデオ屋でオススメ作品として紹介されていたのだけれど、パッケージの写真を見て怖気付いた。防塵マスクをし、暗い眼をした男が裸の女性に触れようとしている様子がただならぬ「イケナイモノ」感があったのだ。直感で、これはまだ観てはいけない映画だ…と。
その頃はデヴィッド・リンチや塚本晋也などの映画にハマっていたので、カルト映画への耐性はあるほうだと思っていたけど、こればかりはどうしても手が伸びなかった。越えてはいけない一線のように感じていたのかもしれない。
それから20年が過ぎ、そんな僕もすっかりいい大人になった。地元の秋田に帰省した時にレンタルビデオ屋に行ってみた。ビデオ屋は建物はそのままに、GEOに様変わりしていた。そして店内を物色しているときに見つけてしまったのだ。「水のないプール」を、DVDで。パッケージの内田裕也さんの表情は「この時を待っていたぜ」と言わんばかりだ、ロッケンロー。
家族が寝静まってから、ディスクを再生する。中学生のとき『エル・トポ』とか『ネクロマンティック』とかのヤバそうな映画を見る時もそうしていた。こういう時は少し罪悪感がある。
物語はこうだ。主人公の男は妻子ある駅員で、ごく平凡な暮らしをしている。しかし、暴漢に襲われている女性を助けたことがきっかけで、反対に女性を犯す願望が芽生える。深夜、一人暮らしの女性宅の窓からクロロホルムを注入して、麻酔状態になった女性を犯す行為を重ねていく。そして男の行動は更にエスカレートしていく…。
男は何か、満たされぬ思いを抱えながら生きているようだ。仕事や家族は心を満たすものではなかった。夢中になれる何かに依存したかったのかと。序盤は常に「何か無いかなぁ」とボンヤリしている様子だ。
結果的に男が夢中になったのは麻酔状態の女性を犯すこと。スマホゲームやSNSがやめられない人が多いのと同じで、男にとってはたまたまそれが夢中になれるものだった、という感じだ。
数をこなしていくにつれ、身体を鍛えたり、モッサリしていた髪の毛を短く刈ったりと、男はどんどん精悍になっていく。と同時に内面はどんどん幼児性が強くなっていく。女性への悪戯も「おままごと」のような趣きに。
水のないプールとは一体何だろう?本編の中では、水のないプールが何度か出てくるけど、これはどう見ても男の内面世界だ。満ちていないプール=男の満たされぬ心だろうか?男をプールへと誘う謎めいた女(いつもシャボン玉を吹いている)は、男の内面の幼児性を象徴しているように思える。
無抵抗の女性を襲うことは幼稚な考えだ。男の内面に残る幼児性がこの犯行を引き起こしたということか。
物語が進んでも、プールが満ちることはない。むしろ水のないプールは最後には廃墟のように朽ち果てている。どんなに女性を犯しても心が満たされることはないと知りながらも、やめられない。男は行為にしがみつく。最後はカメラに向かって舌を出し、観る者を挑発する男。「俺の居場所は此処なんだよぉ!」とでも言っているように思える。男にとっては本当にそれだけが生きがいだったのかと。
僕は本作を「タクシー・ドライバー」と同じような話だと解釈している。孤独で幼稚な男が何かに夢中になるけど、それがたまたま犯罪だったという話。
やっぱり大人になってから観て良かった。
(画像はHMV&BOOKS onlineより引用)
僕の評価
6点/10点

いやぁ、凄い映画でした。内田裕也さんのジトっとした目つきが忘れられません。
どうでも雑感
・ピンクレディーの未唯さんが出ていますが、襲われずじまいでした。ほかの女優さんたちは皆、身体を張っています。
鑑賞方法
『水のないプール』を配信しているのはU-NEXTだけです!31日間無料トライアルなのでぜひ。
(2020年10月時点)

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