『ピアノ・レッスン』ホンマに名作?カンヌを制したポンコツ映画

映画『ピアノ・レッスン』の一場面 ドラマ
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えーっと、カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルム・ドールを受賞し、『シンドラーのリスト』と同年のアカデミー賞の座を争った誉れ高き名作のはずなんですが・・・。

僕にとってはポンコツ映画でした。

そもそも感性が合わなかったのと、色々と雑すぎません?って話です。

タイレンジャー
タイレンジャー

雰囲気はあるのかもしれませんが、主人公の心が読めない映画です。

作品概要

1993年製作/121分/オーストラリア
原題:The Piano
配給:フランス映画社
監督・脚本:ジェーン・カンピオン
撮影:スチュアート・ドライバーグ
音楽:マイケル・ナイマン
出演:ホリー・ハンター/ハーヴェイ・カイテル/サム・ニール/アンナ・パキン/ケリー・ウォーカー/ジュヌヴィエーヴ・レモン/タンジア・ベイカー/イアン・ミューンホリ・アヒペーン/ピート・スミス ほか

ニュージーランド出身の女性監督ジェーン・カンピオンが、1台のピアノを中心に展開する三角関係を官能的に描き、第46回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた恋愛ドラマ。19世紀半ば。エイダはニュージーランド入植者のスチュアートに嫁ぐため、娘フローラと1台のピアノとともにスコットランドからやって来る。口のきけない彼女にとって自分の感情を表現できるピアノは大切なものだったが、スチュアートは重いピアノを浜辺に置き去りにし、粗野な地主ベインズの土地と交換してしまう。エイダに興味を抱いたベインズは、自分に演奏を教えるならピアノを返すと彼女に提案。仕方なく受け入れるエイダだったが、レッスンを重ねるうちにベインズに惹かれていく。第66回アカデミー賞ではエイダ役のホリー・ハンターが主演女優賞、娘フローラ役のアンナ・パキンが助演女優賞、カンピオンが脚本賞をそれぞれ受賞した。

映画.comより)

予告編

The Piano (1993) Official Trailer – Holly Hunter, Anna Paquin Movie HD

感想・考察(ネタバレなし)

ポンコツ映画あるある

ポンコツ映画の定義は人それぞれだと思いますが、展開に無理があり過ぎるものや、登場人物の行動原理がまるで理解できないものはそれに該当するのではと思います。

ブライアン・デ・パルマ監督の『ボディ・ダブル』もまさにそうでした。謎めいた美女に好意を抱く主人公が彼女を尾行。言葉も交わしたこともない相手をただただ追いかけるのです。

Body Double (1984) Trailer

しかし、尾行が美女にバレてしまう!どう釈明をしようかと主人公が戸惑っているところで、二人は言葉を交わすこともなく情熱的なキスを交わすのです。優美な音楽と共にカメラは2人を舐めるようにメリーゴーランドのようにグルグルと周り、無理やりロマンチックに盛り上げます。

なんでやねん!

当時、米国の劇場ではこの場面で笑いが起きたそうですが、それがマトモな反応というものです。もちろん作り手には意図があって、このシュールな展開なのかもしれません。しかし、この場面はフラットな目線で見ても「はい!ポンコツ映画、認定~!」ではないでしょうか。

『ボディ・ダブル』がポンコツ映画の殿堂入りを果たしても何ら不思議ではありませんが、まさか名作と言われる本作がそれと同類であったとは不意打ちを喰らったものです。なにせカンヌ映画祭パルム・ドール受賞のポンコツ映画ですからね。

もちろん、「僕にとってはポンコツ映画」なのであって、人によってだいぶ評価が分かれる映画なんじゃないかなと思います。

映画『ピアノ・レッスン』の一場面

IMDbより)

不倫と言うよりも、間接的な監禁

本作は一種の「監禁映画」にして「ストックホルム症候群」の話だと思います。

夫に先立たれた主人公の女性エイダ(ホリー・ハンター)は娘と1台のピアノと共にニュージーランドへやって来ます。再婚相手となるスチュアート(サム・ニール)のもとに嫁ぐためです。

口のきけないエイダが一心同体のように大事にしているのがピアノなのですが、スチュアートはピアノの存在を軽視し、地主のべインズ(ハーヴェイ・カイテル)の申し出により、ピアノと土地を交換してしまいます。ピアノの所有者となったべインズは、ピアノでエイダを釣ることを試みます。

「エイダちゃん、ワシの家でピアノの個人レッスンしてくれへん?大事なピアノやろ?何も変なことはせえへんから!な?な?ええやろ?

ピアノを人質にとられたエイダは渋々、べインズ宅に通うことになります。旦那であるスチュアートの目を搔い潜って。

かくして、ピアノを弾きたいエイダと、エイダの肉体を貪りたいべインズの攻防戦が始まったのであった・・・。

そう、べインズは最初っからピアノを習う気など無いのです。いかにエイダを誘惑し口説き落とすかしか考えていません。

エイダにとって自分の命に等しい「そのピアノ」がべインズに所有されてしまっている状況は、エイダ自身が間接的に監禁されているようなものです。だから、これも男が女を監禁することで自身の所有物にしてしまうパターンの一種と考えられます。

はたして囚われのピーチ姫がクッパに好意を抱くでしょうか?いや、ないない。

とはいえ、一般的には理解しがたいかもしれませんが、被害者が加害者に好意的な心情を抱くようになる「ストックホルム症候群」を数多くの映画が証明してきてきました。そして本作のその例に数えられます。

そして、監禁映画の視点で本作を観ると、被害者であるエイダが加害者であるべインズに好意を抱くようになる過程はやはり心情的には理解しがたいものがあり、『ボディ・ダブル』と同様に「なんでやねん!」になってしまいます。

本作をすごく単純化すれば、不倫映画なのですが、やはり間接的な監禁要素が印象としては色濃いため、エイダの心情の変化に観客が同調するのが難しいのではないでしょうか。

映画『ピアノレッスン』の一場面

IMDbより)

難易度の高い口説きテク:全裸で仁王立ち

自分が大切にするものに関心を持ってくれる相手には好意を抱きやすい、というのは一理あるかもしれません。ピアノを放置した旦那スチュアートとは対照的に、ピアノを大事に保護して「ピアノを弾けるようになりたい」と言ってくれるべインズの方が良い、という流れです。

口のきけない(と言うか、話すことをやめたと劇中では言及されている)エイダにとって、ピアノを奏でることが彼女の言葉であり、表現手段である。ピアノという共通言語を通じてべインズとは対話ができる。というのも理解はできます。

それでもやはり「なぜエイダがべインズに惹かれるのか理解できぬ!」の感は払しょくできません。

その要因は、ベインズの口説きテクには心ときめかない、からだと思います。

エイダがピアノを弾いている間に、べインズは背後でコソコソと服を脱ぎ始め、エイダが気づいたときには全裸のべインズが仁王立ち、なんて場面があります。

何の脈絡もなく、「ワシの裸、どない~??」とでも言いたげな全裸アプローチです。なんでやねん!

本作を観た女性にはぜひ訊いてみたいです。あれはアリですか?

僕の評価

3点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

共感のできる/できない、が映画の評価の分かれ目になることはありませんが、やはり理解しがたい・・・。

どうでも雑感

・本作の監督はジェーン・カンピオン。メグ・ライアンが脱いだものの、映画としては酷評された『イン・ザ・カット』(2004)も撮っています。あれもメグが謎めいた男(マーク・ラファロ)に惹かれていく心情が理解できなかったですね。本作と同様に、男がぜんぜん魅力的じゃないんです。本作とあわせて観ると、ジェーン・カンピオンの恋愛観やオトコの好みがよく分かります・・・。

・ホリー・ハンターが時おり見せる笑顔に浮かぶ小ジワが何とも言えぬエロスを醸し出しています。おっぱいも拝めます。

・サム・ニールは大傑作『ポゼッション』でも妻を寝取られる旦那の役でしたね。

鑑賞方法

『ピアノ・レッスン』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2021年6月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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コメント

  1. じんちゅ より:

    久々の記事アップおつかれさまです。

    「ピアノレッスン」は興味はあったものの、なんとなく今までスルーしてきた映画だったんですが、ブログ記事のおかげでだいたいの感じが理解できました。

    結論として、たぶん今後観ることはないですね。

    • じんちゅさん、長らくコメント返しできてなくてすみません!
      ようやく少し余裕が出てきたので、書けそうであればぼちぼち書いていこうかなと思っています。
      ジェーン・カンピオン監督はすっかり消えたと思っていましたが最新作が高評価で復活のようですね。

  2. キャン より:

    タイさーん!お久しぶりです!
    更新があって嬉しいっす!

    本作は全くのノーチェックかつ、タイさんの評価を読んで「まぁ、いっか…」という思いを新たにしてしまいましたが、僕の中の女の子が囁いています。

    「ハーヴェイ・カイテルの全裸仁王立ちは、ギリありだ」と!

    • キャンさん、ご無沙汰になってしまいすみません!
      以前のようにバンバン書くことは難しそうですが、余裕のあるなかで自己メンテナンス的に更新していくかもしれません。

      全裸アプローチは難易度高いですが、1回は実践しておきたかったものです。