ご存知、80年代低予算ホラーの傑作です。
僕が初めて見たのは中学生くらいの時だったと記憶していますが、その後も繰り返し観るたびに愛着が増していった映画ですね。
僕が思うに、本作は「満たされぬ性欲」についての映画ですー。

ある意味、家族のために自分を犠牲にする若者の話ですよね。[
作品概要
1982年製作/アメリカ
原題:Basket Case
配給:欧日協会
監督:フランク・ヘネンロッター
脚本:フランク・ヘネンロッター
撮影:ブルース・トーベット
音楽:ガス・ルッソ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック/テリー・スーザン・スミス/ビヴァリー・ボナー/ロバート・ボーゲル ほか
奇形人間が自分を殺そうとした医者に復讐するという恐怖映画。製作はエドガー・イエヴィンズ、エグゼクティヴ・プロデューサーはアー二ー・ブルックとトム・ケイ。監督・脚本・編集はフランク・ヘネンロッター。撮影はブルース・トーベット、音楽はガス・ルッソが担当。出演はケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック、テリー・スーザン・スミスなど。16ミリを35ミリにブローアップして上映。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
まずは話を整理しますと、バスケットケースの中に入っているのは主人公の青年のお兄ちゃんです。
この兄弟はシャム双生児として生まれまして、弟の脇腹に顔と両腕だけの兄がくっついていたんですね。
で、醜い兄の存在を忌み嫌った父親が、手術で2人を無理やり引き剥がします。
弟は脇腹に傷跡が残ったものの、他の人と何一つ変わらぬ暮らしができるようになります。その一方、兄はビニール袋に包まれてゴミ捨て場に放棄されてしまう!そんな気の毒な兄を弟は優しく介抱。
世の大人を呪った兄は弟の力を借りて、自分たちを引き剥がした父親、医者たちに復讐をしていくって話なんですね。
弟は少年のようなあどけなさが残った容姿。
(IMDbより)
童貞のくせに年上の受付嬢に速攻で逆ナンされるという、けしからん男です。
一方の兄はつぶらな瞳がカワイイが、素手で人をブチ殺す獰猛な性格。
(IMDbより)
兄は人間の言葉を発することはできないものの、弟にテレパシーで意思を伝えることができます。
また、どちらか一方の心に乱れが生じると、もう一方にも伝わるというフォースのような能力が相互にあります。
つまり、兄弟同士で隠し事はできないんですよ。これが双方にとっての悲劇。
例えば、弟が逆ナンを受けた年上の受付嬢(いい感じにムッチリしていてエロい)とデートして、チュッチュします。
(誠にけしからん…)
弟の気持ちが高ぶる→その感情が兄に伝達。
兄はバスケットケースから飛び出して
(IMDbより)
ムッハー!!!
この時の兄の気持ちを代弁しますと…
「弟の野郎!受付嬢とよろしくやりやがって!俺なんかヤリたくても…ヤレねぇんだぞ!!」
やり場のない怒りをぶつけたくて、ただただ部屋を荒らすことしかできない兄。
彼も男だ。20歳前後と思われるので当然、性欲が有り余っている。彼にはその機会がないだろうけど、弟の「いい思い」だけは感じてしまうのだ。
性欲はあるのに、自分ではどうすることもできない。これは男にとっては重大な悲劇ですよ。
これがどれほどの地獄か…。男性諸氏なら涙なしに観ることができない場面です。
では、モテ男な弟が悪いのかと言うとそうではない。彼の性欲もまた満たされないのです。兄の存在によって。
受付嬢とチュッチュ→兄がご乱心→兄のご乱心が弟に伝達、となるので、チュッチュの後はウッフンになるはずが、弟は戦線離脱。
弟はヤレるチャンスがありながら、家族(兄)の存在が足枷になってヤルことができない。
この受付嬢を巡る兄弟の足の引っ張り合いが、悲劇的な結末に収束します。
時として、家族の存在が若者の欲望を阻害するということでしょーか。
たとしたら、本作は現実世界では言いにくいことをズバリ本音で語っているように思えます。
僕の評価
9点/10点

ほんと低予算でチープな作りではありますが、満たされぬ欲望を抱えた男の哀しみが痛々しくも突き刺さります。
どうでも雑感
・本作の後にヘネンロッター監督自身の手によって続編が2本も製作されましたが、ぜんぜん別物になっていて、ある意味、見ものです。
・本作はニューヨーク近代美術館(MoMA)に永久コレクションされている。その芸術性の高さを評価されてのことでしょう。ほかにも『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』や『悪魔のいけにえ』もコレクションされているそう。
・本作を上映する男女出会いイベントが日本で開催された。
なにぃ…3組のカップル成立だと…!?
鑑賞方法
『バスケット・ケース』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルキャンペーンがあるのでぜひ。

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
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