『ジェイコブス・ラダー』(1990) 【アウトサイダーアート】悪夢的イメージの元ネタ集

映画『ジェイコブス・ラダー』の一場面 ホラー
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これはエイドリアン・ライン監督のキャリアの中では異色作ですよねぇ。『フラッシュダンス』『ナインハーフ』『危険な情事』など大衆受けするヒット作を連発した後に作られたのが、地味〜で気味の悪〜い本作ですから。

ライン監督はスタジオとの交渉の結果、ファイナルカット(最終編集)権を得た上で本作を製作してますから、どうやら彼にとって並々ならぬ入魂の一作だったようです。


タイレンジャー
タイレンジャー

今回は本作の悪夢的イメージの元ネタを探っていこうという記事です。

作品概要

1990年製作/アメリカ
原題:Jacob’s Ladder
配給:東宝東和
監督:エイドリアン・ライン
脚本:ブルース・ジョエル・ルービン
撮影:ジェフリー・キンボール
音楽:モーリス・ジャール
出演:ティム・ロビンス/エリザベス・ペーニャ/ダニー・アイエロ/マット・クレイヴン/マコーレー・カルキン ほか

夢と現実との区別がつかなくなって悪夢の中を彷徨う男の恐怖の体験を描くサイコ・スリラー。エグゼクティヴ・プロデューサーはマリオ・カサールとアンドリュー・ヴァイナ、製作はアラン・マーシャル、監督は「危険な情事」のエイドリアン・ライン、脚本は「ゴースト ニューヨークの幻」のブルース・ジョエル・ルービン、撮影はジェフリー・キンボール、音楽はモーリス・ジャールが担当。出演はティム・ロビンス、エリザベス・ペーニャほか。

映画.comより)

予告編

Jacob's Ladder (1990) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]

感想・考察(ネタバレなし)

悪夢的なイマジネーションの数々

ざっくりと言うと、悪夢的イメージに溢れたパラノイア映画ですね。悪夢か現実か区別のつかないなかで、無力な主人公が被害妄想を膨らませていきます。

そういう話の構造で言うと『未来世紀ブラジル』のホラー版のようにも見えます。ハッピーエンドかと思いきや…あ、そういうこと…という結末もなんだか似ています。

そんな本作の見どころはもちろん、その不気味な描写の数々。ひとつひとつは「ほぉ…」と思わず見入ってしまうものが多いのですが、全体的に見るとやや散発的で、まとまりに欠ける印象はあります。

悪夢的イメージを多種多様にしすぎたのかもしれませんね。全体的にもう少し統一感を持たせて、それぞれの事象に関連性が強ければ、より「悪夢の集合体」になり得たんじゃないかなーと。

では、ゲーム『サイレントヒル』にも影響を与えたと言われる本作の悪夢イメージはどのようにして生まれたのでしょうか。ちょいと調べてみたら下記の記述がありました。

エイドリアン・ライン監督は本作のヴィジュアルイメージの参考として、ウィリアム・ブレイク、H・R・ギーガー、フランシス・ベーコンらの絵画、ダイアン・アーバス、ジョエル・ピーター・ウィトキンらの写真を用いた。

(Wikipediaより)

はい〜。元ネタが割れました。
僕はギーガーとベーコンは元から大好きなのですが、今回初めて知ることとなった下記のお2人についてお話をば。

ダイアン・アーバス

『シャイニング』の双子やんけ!と思いきやその逆で、『シャイニング』がこの写真にインスパイアされたのだそう。
と言うのも、スタンリー・キューブリックは若い頃は雑誌『ルック』のカメラマンであったのですが、その際に先輩であるアーバスから師事を受けたとのこと。おお!キューブリックに影響を与えた写真家だったのか!

アーバスは小人や両性具有者、サーカス芸人などマイノリティを被写体とした作品が多く、作品を見ると必ずしも不気味という訳ではなく、彼らと対等に向き合ってありのままの姿を写そうとしたような印象があります。

アーバスの作品が本作に直接的に影響を与えた部分は分からなかったのですが、被写体となるその人の人生を窺い知りたくなる深みのある写真の数々だと思います。ひとつ勉強になりましたな。

ジョエル・ピーター・ウィトキン

一方でこちらはやや閲覧注意だと思います。
宗教的でグロテスクな装飾などが施されており、アーバスの「ありのまま」とは対照的に、全てのものが絵画的に配置された写真ですね。これらは一度見たら忘れ難い強烈なイメージだと思います。

本作での「頭を猛スピードで左右に振る、両脚の無い男」は上記のウィトキンのある作品が元ネタだそうな。あまりにもそのまんまですが。

映画『ジェイコブス・ラダー』の一場面

IMDbより)

僕が大好きなナイン・インチ・ネイルズの「Closer」のミュージックビデオもまたウィトキンへの完全オマージュだったのだということがよく分かりました。(ビデオの監督は『わたしを離さないで』のマーク・ロマネク)

Nine Inch Nails – Closer (Director's Cut)

こうして映画のヴィジュアルイメージの元ネタを色々と探っていくのも面白いものです。
個人的も今回はアウトサイダー・アートの勉強になったので良い機会でしたねぇ。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

物語自体や雰囲気は好きです。悪夢感の強いヴィジュアルも。

どうでも雑感

・2020年に制作されたリメイク版は絶不評らしいです・・・。

・主人公の恋人役のエリザベス・ペーニャのおっぱいが拝めます。

鑑賞方法

『ジェイコブス・ラダー』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

・TSUTAYA TV |30日間無料お試し期間実施中

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

エイドリアン・ライン監督作品

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