『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』【感想・ネタバレなし】マニラ殺人現場体験ツアー

映画『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』の一場面 サスペンス
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2009年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞!
一言で言うと、『冷たい熱帯魚』を『サウルの息子』風に撮るとこうなるという映画だ。
あ、両者ともに本作より後の映画なんだけどね。

タイレンジャー
タイレンジャー

観客が殺人現場に同席させられる感じです。

作品概要

原題:Kinatay
2009年/フランス、フィリピン/110分
監督:プリランテ・メンドーサ
脚本:アルマンド・ラオ
撮影:オディッシー・フローレス
音楽:テリーサ・バローゾ
出演:ココ・マルティン/フリオ・ディアス/マリア・イザベル・ロペス ほか

カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭の受賞作を中心に、各地の映画祭で話題になりながらも日本未公開だった作品を一挙上映する「三大映画祭週間2011」にて上映。貧乏な警察学校の生徒のペッピングは、恋人と生まれてくる子どものために麻薬の売買などにも手を出していき、裏社会への道を転げ落ちていく。やがて自らの内に潜むどす黒い殺意に悩み……。2009年・第62回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。監督は、前作「Serbis」(08・日本未公開)がフィリピン映画として初めてカンヌのコンペティションに選出されたプリランテ・メンドーサ。

(映画.comより)

予告編

キナタイ-マニラ・アンダーグラウンド 予告編

感想・考察(ネタバレなし)

マニラの殺人現場を疑似体験

舞台はフィリピンのマニラ。主人公は警察学校に通う20歳の男。19歳の可愛らしい妻と7ヶ月の子どもがいる。でも、彼は裏でギャングの稼業も手伝っており、遂にストリップ嬢の殺害に加担することになってしまう一夜を描く。

映画の序盤は主人公とその妻の「遅れた婚姻式」という幸せいっぱいの昼間から始まる。手持ちカメラ主体のドキュメンタリー風だ。しかし、夜になると雰囲気は一変。台詞は少なく、不穏な空気が充満する。

悪いパイセンに連れ回される若造の所在の無さをこれでもかという具合に描くんですね。

パイセン、この車は何処に向かってるんすか?パイセン、これから何するんすか?もう帰ってもいいっすか?(困り顔)という質問がしにくい空気。有無を言わさぬパイセンの圧力。
一体何処に行くのか分からない車の中での長く、重い沈黙が息苦しい。
夜のマニラの猥雑な雰囲気が真空パックされているようなリアルさだ。

しかも、時間の流れ方が映画的なテンポを無視しており、実際の所要時間の通りに描写しているような超写実志向。観る者に対して、限りなくリアルな殺人現場の体験を強いる映画だ。本当にその場にいるような臨場感を演出のみで生み出している。

『サウルの息子』よりもずっと前にこのようなスタイルの映画がフィリピンで作られていたことに敬意を表したい。でも、ただリアルなだけでは、ドキュメンタリーと同じなので、映画である以上はもう少し工夫が必要だろうと思う。


(画像は映画.comより引用)

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

マニラこわい。でも映画でこれが疑似体験できるのなら安いものだと思う。

どうでも雑感

・ちなみに殺害される女性が働いているストリップバーの表の看板には「日本語OK マニラ市内HOTELご送迎します」とまんま日本語で書かれている。つまり、お気に入りのストリップ嬢を自分のホテルにお持ち帰りできるという仕組みなのだろう。日本人としては気持ちの良い話ではないけど、マニラにはそういう日本人向けのお店が多いのだろうと思う。

・あと、フィリピンの警察の月給は手取りで2万円ほどなのだそう。「悪いパイセン」が主人公に「警察の給料じゃ食っていけねぇだろ」と言ってたけど、なるほど。いくら日本より物価が安いとは言え、2万円で一家を養うのは無理だろう。なので、警察は本職とは別にお小遣い稼ぎに精を出す、という訳か。公務員の給料が安いと、賄賂社会になりやすいからね。

鑑賞方法

2020年10月時点で『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』は動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!

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