『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』感想:ディズニーに貢ぎますか?それともファンやめますか?

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の一場面 SF
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そりゃあ、重力の設定がおかしいとか、無駄な作戦とか、ローズがブスだとか、皆さんが感じているような不満は多々ありますが、そういう欠点をあげつらうよりも、ここでは僕がなぜディズニー版SWが気に食わないか、という根本的なことについて書きます。

タイレンジャー
タイレンジャー

酷評です。ディズニーのファンは閲覧注意。

作品概要

原題:Star Wars: The Last Jedi
2017年/アメリカ/152分
監督:ライアン・ジョンソン
製作:キャスリーン・ケネディ/ラム・バーグマン
脚本:ライアン・ジョンソン
撮影:スティーヴ・イェドリン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:デイジー・リドリー/ジョン・ボヤーガ/アダム・ドライバー/キャリー・フィッシャー/マーク・ハミル/オスカー・アイザック ほか

「スター・ウォーズ」の10年ぶりの新作として大ヒットを記録した「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に続く3部作の第2部で、「スター・ウォーズ」サーガのエピソード8にあたる。伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを捜し当てた主人公レイがたどる、新たな物語が描かれる。最高指導者スノークが率い、ハン・ソロとレイア・オーガナの息子で祖父ダース・ベイダーからダークサイドの力を受け継いだカイロ・レンを擁する帝国軍残党ファースト・オーダーは、レイアの下に集ったレジスタンスと激しく交戦。レジスタンスは徐々に追い詰められていく。一方、水の惑星オク=トーの孤島で隠遁生活を送っていた伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを捜し当てたレイだったが、ルークはレイを拒絶し、島を去るように告げる。なんとかルークの力を借りたいレイは説得を続けるが……。前作で「スター・ウォーズ」の新たな主人公レイに大抜てきされ一躍注目を集めたデイジー・リドリーのほか、ストームトルーパーの脱走兵フィンを演じるジョン・ボイエガ、ダースベイダーを受け継ぐカイロ・レン役のアダム・ドライバー、そしてルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミル、2016年12月に急逝したレイア・オーガナ役のキャリー・フィッシャーらおなじみのキャストが出演。監督・脚本は「BRICK ブリック」「LOOPER ルーパー」などで頭角を現したライアン・ジョンソンが担当した。

(映画.comより)

予告編

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』予告編

感想・考察(ネタバレなし)

SWが憎きディズニーに買われてしまった!

僕が小学6年生のとき、ディズニー社のアニメ映画『ライオンキング』(1994)が公開された。

『ライオンキング』は紛れもなく手塚治虫の『ジャングル大帝』の盗作である。

『ブラックジャック』や『ブッダ』に夢中で、手塚氏を大変尊敬していた僕は、憤慨した。また、盗作であるにも関わらず、この映画を好む日本人(特に若い女性)が多かったのも余計に腹立たしかった。

中国に溢れるドラえもんやガンダムのニセモノ製品に対しては否定的なくせに、ライオンキングに対してはお咎めなしって、おかしくないですか?

以来20数年に渡り、ディズニー社は僕の目の敵だ。同時に、この国に多く存在するディズニー信奉者も嫌いになってしまった。

僕が『スター・ウォーズ』(以下、SW)に本格的にハマったのは中学3年の頃。
エピソード4~6の特別編が劇場公開された時だ。
それまではテレビの洋画劇場で断片的に観る機会はあったけど、大スクリーンで観るSWは格別だった。

また、田舎での生活に退屈しきっていた自分自身をルークに重ね合わせて観ることができたことも大きい。「おらこんな村イヤだ」と、タトゥイーンの夕陽に黄昏るルークは当時の僕自身だ。

翌年の『エピソード1/ファントム・メナス』には心底ガッカリしたけど、2、3は素晴らしい傑作だ。

旧三部作とは随分かけ離れた世界のようにも見えるけど、ルーカスの映像作家としての宿命と気概を強烈に感じた。大団円を迎えた3においてはルーカスはやりたいことをやり尽くした感があり、これ以上無い有終の美であったと思う。

なので、『フォースの覚醒』を皮切りとする新三部作の製作決定のニュースには「もう作らなくてよくね?」というのが正直な印象だったし、よりによって憎きディズニー社がその権利を保有するというのは僕にとっては非常にショックが大きかった。

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の一場面

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マーケティングこそがディズニー映画のすべて

何よりも『フォースの覚醒』と『ローグ・ワン』は単純に面白くないという点で、受け入れ難い作品だった。ディズニー社製であるという色眼鏡なしに観ても、僕はこの2作品に対しては肯定的になれない。

しかしながら、これらの作品に対しては不可解なくらいに好意的な人が多数であり、爆発的な興行成績を納めた。

そして今回の『最後のジェダイ』だ。すっかり期待値もゼロの状態で、「本家じゃなけいけど、一応SWの新作なので」と半ば義務的に鑑賞。

ディズニー社の映画の作り方は分かり易い。既存の人気キャラ、人気シリーズを保有し、焼き直しを繰り返すによって安定して儲け続けるというのが、最近の戦略かと。だから、ピクサー、マーヴェル、SWだけでは飽き足らず、20世紀FOXまで買い漁る節操の無さよ。

現実的には、アイディアが枯渇した現代映画界において、これは最も確実に稼ぎ続ける方法ではある。
映画がビジネスであることは当然ながら、彼らにとって映画づくりとは、創造ではなく、マーケティングであることを強く印象づけるものだと思う。

では、マーケティング重視の映画作りの結果、どのような作品が生まれるかの答えが『フォースの覚醒』だ。新シリーズということもあり、まずは熱心なSWファンの支持を獲得すべく、極端なファンサービスに徹した内容になった。

ただ、サービスがあまりに過剰で懐古的なので、僕にはそれが「媚び」にしか見えなかった。媚び媚びのぶりっ子、というのが「フォースの覚醒」に対する印象だ。

媚びること自体はまだ良いとしても、媚び以外に売りが無いのが一番の問題で、媚を取っ払えば中身の無さばかりが目立つ空虚な作品だと思う。

一般的にぶりっ子は嫌われる。「も~!プンプン!」(古い)とか言ってるあざとい女子の言動、及びそれに喜ぶ間抜けな男性陣。僕が『フォースの覚醒』を嫌うのは、それらに対して反感を抱く女性陣の気持ちに近いのかもしれない。「いや、その女は媚びてるだけだから」ってな感じで。

『ローグ・ワン』は『フォースの覚醒』ほどではないにせよ、モフターキンやベイダーの登場シーンが最大の見所になってしまっている時点で、ぶりっ子映画の域を出ていない。新キャラクターに絶望的なくらい魅力がないという点も共通している。

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の一場面

(C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

卒業勧告

では『最後のジェダイ』がどうかと言うと、一転、本作は媚びの要素は控えめだ。

むしろその逆で、オールドファンを敵に回しかねない内容になっている。どういう点が、というのは書かずもがな。

なぜ、こんなにもオールドファンに「踏み絵」を突きつけるような内容になってしまったのか。
これは恐らく、長期的な視点で、オールドファンを喜ばせるよりも、新しい層を取り込む方が儲かるというディズニー社の戦略なのだと思う。

実際に『フォースの覚醒』は新たな客層を取り込むことによって興行的に成功した作品でもある。
そこに手応えがあったのか、ディズニー社が今後さらに自分たちが作りやすい方向性に舵を切ったと思われる。

ルーカスのSWは童貞臭いし、コアなファンは口煩いし、少しでも縛りを撤廃した方が今後は作りやすいじゃん?ということなのだろう。だから、口煩い老害はもうついてこなくてもいいよ、という非情とも言えるスタンスを本作は貫いている。

フィギュアを買い集めるオジサンよりも、ハロウィンにコスプレをする女子を優先したのだ。

このハロウィンにコスプレをする女子というのが、ディズニー社にとっては重要な客層だ。この層のディズニー社に対する信奉ぶりはすごい。

僕は仕事柄、大学生くらいの若者たちと知り合う機会が多いのだけど、彼女たちにとっての「エンタメ=ディズニー」率は呆れるくらいに高い。「ディズニーが最高」という共通の価値観に、「お前らは集団洗脳されてるのか?」と問いたくなるレベルだ。「他にないの?」と。

若者の価値観を均一化してしまうディズニー社の独裁は看過できない。

でも、これからのディズニーSWを支えていくのはこの層なのだ。

鑑賞後、「もう、どうでもええわ・・・」という気分で劇場を後にすると、後ろから「マジ泣けた!」という女性の声が。
10代後半くらいの女性二人組だ。
「ルーク、強すぎ!」
「ヤバイよね!」
「グッズ見ていこ~」

ディズニー社にとってはこれで良いのだよね。。。と思いながら、寂しく帰路についた。

子どもの頃、「あなたはもうお兄ちゃんなんだから、その玩具は弟に使わせてあげなさい」と言われたときのような感覚だ。
オールドファンである僕はSWからの卒業を促されているのだろうか。
老いた旧三部作の主要キャラが前作と本作で非情な「卒業勧告」を受けているのと同じように。

世界最大の映画スタジオになろうとしているディズニー帝国は、コアな映画ファンの楽しみを奪っていく。

(画像は映画.comより引用)

僕の評価

1点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

前作『フォースの覚醒』では「呆れ」だった感情が、本作では「怒りに」なってきました。

どうでも雑感

・本作の具体的な問題点はというと、やっぱりルークの描き方なんですよね。シリーズの功労者に泥を塗るようなことはあってはなりません。長年ひとつのチームに在籍したベテラン選手を無下に扱えないのと同じです。そんなことをしたらファンの気持ちが冷めてしまうのも当然というもの。

鑑賞方法

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
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