姉と妹による骨肉の争い。姉はかつての大女優、妹はかつての人気子役、ということで今やすっかり落ちぶれてしまった二人がひっそりと暮らすお宅の中を覗いてみましょうじゃありませんか。
どうやらね、妹が脚の不自由な姉を介護するでもなく、いじめているらしいですよ・・・。

という二流ワイドショーみたいな導入ですが、ゴシップ好きは必見です。
作品概要
1962年製作/134分/アメリカ
原題:What Ever Happened to Baby Jane?
監督・製作:ロバート・アルドリッチ
原作:ヘンリー・ファレル
脚本:ルーカス・ヘラー
撮影:アーネスト・ホーラー
音楽:フランク・デ・ボール
出演:ベティ・デイヴィス/ジョーン・クロフォード/アンナ・リー/ヴィクター・ブオノ/メイディー・ノーマン ほか
かつてベビー・ジェーンという名で子役として活躍したジェーン。そして美しいスターだったが、事故で不具となったその姉ブランチ。年老いたふたりは古い屋敷で隠遁生活を送っていた。ジェーンは酒に溺れ、異常な行動を繰り返し、そのあげく体の不自由なブランチに暴力を振るうようになる。追い詰められていくブランチに、やがてジェーンは……? 女性を主人公にした映画でも数々の名作を残したロバート・アルドリッチ、その代表作とも呼べるサスペンス。ジェーン役のベティ・デイビスは鬼気迫る怪演。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
かつての天才子役の成れの果て…。
やっすい芸能ネタでしばしば目にするネタですが、本作はその点を手加減なしに残酷に描きます。
歌って踊って大人気な子役ジェーンちゃん。
彼女を模した「ベイビー・ジェーン人形」も売れ行き好調で父親は鼻高々。
あれから45年…かつてのベイビー・ジェーンは今…
ギョエエエエー!!!
鈴木その子もビックリな白塗りフェイス。
厚化粧でも隠しきれぬ肌の老い。
酒枯れた声。
大きく見開いた眼。
ハート型のホクロ。
それでもフリフリのお洋服を着て、心は少女のまま。しかし可愛い天才子役の面影は全く無い。
…思わず『AKIRA』の一場面を貼らずにはいられまへん。
ジェーンの変化は単純に加齢によるものだけでないことは明らかです。観る者はタイトルの通り、何がジェーンにおこったのか!?と嫌でも知りたがるでしょうね。その真相は本編の終盤に明かされるので、途中離脱せずにどうぞ最後まで見届けるように。
本作の最大の見どころはやはりジェーンを演じるベティ・デイヴィスの怪演です。姉を軟禁し、隣人に毒を吐き続け、その一方で自分がもう一度スターとして返り咲くことを夢見る様子はもはやグロテスクな領域に達しており、鬼婆や醜女(しこめ)という表現がしっくりきます。
特にジェーンが子役時代のヒット曲をフリフリのワンピースを着てあの容姿で歌い踊るシーンは戦慄ものです。いつまでもキラキラしていたい女性は多いと思いますが、ここまで来ると完全にホラーです。
これ、姉のブランチが老いてもなお大女優の気品を失わないのとは対照的で、ジェーンの中身は幼児のままなのですね。幼少期の成功体験に味をしめて、心の成長がストップしてしまったかのようです。
だから、後先考えずにその場の感情だけで凶行に走ってしまいますし、ババアなんだけど少女的な言動は異様そのもの。
でも驚くべきことに、このジェーンが最後に少しだけ少女のように可愛らしくなる瞬間があるんですよ。「あっ!あの時のベイビー・ジェーンだ」と思える顔を覗かせるのです。
それは長年に渡り彼女を不幸にしていたものから解放されたからなんですね。彼女の心の中にドシーンとのしかかっていた「ジェーンに起こったもの」が取り除かれた結果、ジェーンは子役時代のような無邪気な笑顔を見せるというわけです。
でもそれは彼女がハッピーエンドと錯覚しているだけで、現実には何ともやるせないバッドエンドなんですけどね。
古い作品ですが、今もなお面白いです!脚が不自由な人が鬼婆に軟禁されるっていう大筋はその後の『ミザリー』に影響を与えているんですかねぇ。
僕の評価
7点/10点

ドロドロした人間模様で楽しかったですね~。ジェーンの過剰なキャラ造形も素晴らしい。
どうでも雑感
・この映画に関心を寄せるきっかけは、怖いもの見たさとか野次馬根性とかだと思うんですが、結果的には、いたたまれなさとか、やるせなさが強く刻まれていきますね。
鑑賞方法
『何がジェーンに起ったか?』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。
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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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