『シティ・オブ・ゴッド』【大傑作】21歳の僕をブラジルへ旅立たせ、人生を変えてしまった映画

映画『シティ・オブ・ゴッド』の一場面 ドラマ
© 2002 - Miramax
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1本の映画がその人の人生を変えてしまうということは十分に起こりうることですが、僕にとって本作はまさにそんな作品でした。

当時の僕は21歳。東京で壁にぶち当たり、進むべき方向が見えず、燻っていました。そんな中、六本木ヒルズの映画館で本作を観て、すぐ1か月後にはブラジルに旅立ちましたね。本来、内向的な僕の性格からすれば、海外渡航など考えられませんでした。本作を観るまでは。

タイレンジャー
タイレンジャー

本作の何が僕を突き動かしたのか、について書きます。

作品概要

2002年製作/130分/ブラジル
原題:City of God
配給:アスミック・エース
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:パウロ・リンス
脚本:ブラウリオ・マントバーニ
撮影:セザール・シャローン
音楽:アントニオ・ピント/エド・コルテス
出演:アレクサンドル・ロドリゲス/レアンドロ・フィルミノ/フィリップ・アージェンセン/ジョナサン・アージェンセン/マテウス・ナシュテルゲーレ/セウ・ジョルジ/Jefechander Suplino/アリシー・ブラガ/ドグラス・シルヴァ/ダルラン・クーニャ ほか

原作は、初めてスラムの住民の視点からスラムの現実を描いた小説としてブラジルでベストセラーになった、パウロ・リンスの同名小説。これが第3作となる監督フェルナンド・メイレレスは、55年、ブラジル生まれ。主要登場人物60人、脇役150人、エキストラ2000人の群像劇で、60年代後半から80年代までのある街の変貌を描く。実際の街でロケ、主要人物のほとんどは、舞台となった街の近隣に住むアマチュア俳優たちが演じている。

映画.comより)

予告編

City of God (2002) Official Trailer – Crime Drama HD

感想・考察(ネタバレなし)

本作が僕の人生を変えた

僕が初めて海外へ行ったのは地球の真裏にあるブラジルでした。

それは21歳の時、初の海外にして初の1人旅です。事前に手配したのは往復航空券と海外旅行保険とガイドブックのみ。あとは現地で適当な安宿を探して気ままに旅をしようと思っていました。簡単な英語さえ話せれば何とかなるやろと。

しかし、当時のブラジルは治安が悪いことで知られており、両親に相談もせずに独断で進めた1人旅は親戚を巻き込んでの騒動に発展します。

今にして思えば若気の至り。無計画にして無謀ですが、それでも当時の僕は何としてでもブラジルに行きたいという熱意によって突き動かされていました。猪突猛進。全てはこの映画を観てしまったせいです。

それまでは外国に行くことに興味が無かったのですが、これ以降はよく海外に行くようになり、その結果として今やカンボジアに住んでいるので、僕の人生を変えた一本であることは間違いありません。

映画『シティ・オブ・ゴッド』の一場面

© 2002 – Miramax 

”ここは世界でいちばん陽気な地獄”

これは本作の日本公開時の宣伝コピーです。まさにその通りで僕はすっかりこの地獄に魅了されてしまったのです。地獄を観てその現場に赴きたいと思うほど当時の僕はアホだったと言えますが、恐怖心を吹っ飛ばすほどの衝撃が本作にはありました。

ブラジルと言えばサンバとサッカーとボサノヴァの国という一般的なイメージしか持ち合わせていませんでしたが、本作が描いたのはそんな観光的なイメージをぶち破る貧困、麻薬、殺し合いの世界です。小学生が小学生に銃殺される、そんな信じがたい現実を描いているのです。

2014年のブラジルW杯、2016年のリオ五輪を前にファヴェーラ(貧民街)浄化の取り組みが行われたことを覚えている方も多いと思います。それは軍を投入する大規模な麻薬組織摘発作戦でした。当時はリオデジャネイロでの犯罪被害者の人口比率が44%と言われていましたから、ファヴェーラはその上を行く治安の悪さだったわけです。

これを聞くと、悲惨で救いの無い映画なのかと思ってしまいがちですが、この映画の本質は別にあります。

映画『シティ・オブ・ゴッド』の一場面

© 2002 – Miramax 

肩身の狭い思いをしている全ての人へ

ファヴェーラの悲惨な現実は題材としてドスンと据えられていますが、物語の核となるのは「地元の怖い先輩たちに囲まれて肩身の狭い思いをしてきたオタク童貞が、環境に左右されない自分だけの生き方を見出す」というものです。

ファヴェーラの中ではマトモな仕事は無く、ギャングになることが生きる道であり、少年たちは安易にそれに染まっていきます。

そんな中、ギャングにもドラッグ売買にも向かないと感じていたのが主人公ブスカペ。彼が唯一好きなのは写真で、ファヴェーラを抜け出しカメラマンになることを夢見ています。でも何も出来ずにいるし、童貞のまま。そんな彼がチャンスを掴むまでの話です。

これ、社会や組織の中で馴染めずにいたり、少数派だったり、立場が弱い、そんな人たちへの応援歌という普遍的な物語なんですね。

または古い慣習に囚われた狭い社会から抜け出そうとする人の話です。場所によって状況は違えど、そんな想いは万国共通。ヤンキーだらけの田舎でヤンキーになれず肩身の狭い若者の話と同じです。そんな普遍性こそが本作をアツイものにしているのです。

だからこそ終盤のブスカペ大疾走は、狭い中で燻った経験のある全ての人の魂が宿るシーンになっていると思います。走れ!ブスカペ!

地元でも東京でもいまいち馴染めず、進むべき道を見出すことができず、腐っていた当時の僕の魂はあの時、ブスカペと一緒に走っていたのです!自分が燻っていることを、周囲の人間たちや育った環境のせいにするな!

本作は僕にとって海外へ目を向けさせるキッカケになったというだけでなく、自分で勝手に決めていた壁を突き破る勢いを与えてくれた心の一本です。

映画『シティ・オブ・ゴッド』の一場面

© 2002 – Miramax 

幸運だったブラジル旅行

さて、話を僕のブラジル旅行に戻します。成田空港からヒューストンを経由してリオデジャネイロに到着するまでが24時間。そこからは完全ノープラン。

しかし僕は幸運でした。同じ便に搭乗していた日本人旅行者4人組がブラジルに詳しく、彼らのご厚意により7日間、一緒に同行させてもらうことになりました。しかも、そのうちの2人は新婚ホヤホヤでこれはハネムーンも兼ねていると。

初対面の人のハネムーンに同行するとは厚かましいことこの上なし!自分でも呆れますが、彼らのおかげで僕は安全に楽しくブラジルを旅することができました。人間、ひとりでは生きていけないと嫌でも痛感させられましたよ。感謝。

また、結果的にこの時の体験が「価値観の狭い日本社会だけで生きていく必要はない」と考えに至る第一歩となりました。本作に出会わなかったら、海外居住も含めた多様な生き方を知ることもなかったのかもしれません。

僕の評価

10点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

映画観を変えた映画は数あれど、本作のように生き方そのものに影響を及ぼした映画はそう多くはありません。

どうでも雑感

・もう冒頭のシュッと包丁を研ぐ(まさに鋭利な)カットから衝撃を受けましたね。カメラワークや編集がカッコ良すぎます!

・リトル・ゼの相棒の「いい奴」ベネのキャラクターが好きですね。彼のヒッピーかぶれの思考に当時の僕は大いに共鳴しましたし、今でもそれは僕の中に残っています。

・本作は確かにヘヴィな内容ですが、ユーモアと明るさがあって、ブラジルらしい「陽気な地獄」になっています。重くなりすぎないバランス感覚も見事だと思います。

鑑賞方法

『シティ・オブ・ゴッド』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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