『イレイザーヘッド』感想・考察:大傑作!中学生だった僕が本作に120%共感した理由

映画『イレイザーヘッド』の一場面 ホラー
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僕の婚期が遅れたのは本作のせいです(笑)。
本作はもし自分の子どもが人間とは似ても似つかぬ醜い子だったらどうする?という嫌~なところを徹底的に突いてくる映画。
しかし、その点にある種の共感を覚える人も一定数いることは事実だと思います。

タイレンジャー
タイレンジャー

僕は無意識に共感を覚えた口です。

作品概要

原題:Eraserhead
1977年/アメリカ/89分
監督・製作・脚本・美術・編集:デヴィッド・リンチ
撮影:フレデリック・エルムス/ハーバート・カードウェル
音楽:ピーター・アイブス
出演:ジャック・ナンス/シャーロット・スチュワート/アレン・ジョセフ/ジーン・ベイツ ほか

鬼才デビッド・リンチ監督のデビュー作。悪夢のような出来事に見舞われ正気を失っていく男を、全編モノクロ映像でつづる。消しゴムのような髪形から「イレイザーヘッド」と呼ばれるヘンリーは、恋人から肢体が不自由な赤ん坊を産んだことを告白され、恋人との結婚を決意する。ところが彼女はおぞましい形相の赤ん坊に耐え切れずにやがて家を出てしまい、残されたヘンリーは1人で赤ん坊を育てることになるが……。1981年に日本初公開。93年に完全版が、2009年にデジタル・リマスター版がそれぞれ公開された。

(映画.comより)

予告編

Eraserhead (1977) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers

感想・考察(ネタバレなし)

父親になりたくなかったリンチが思い描いた悪夢

僕は長いあいだ結婚願望がありませんでした。
子どもを持つことが怖かったのです。

僕の両親は喧嘩が多く、父は母を聞くに堪えぬ言葉で罵ることもあったため、もともと幼少期から結婚に対してポジティブな印象はありませんでした。その影響もあってか「家庭を持たないという自由な生き方」に憧れるようになったのだと思います。

もう一つの要因はおそらく本作ですね。
本作では「父親になる」ことにおいて、考えうる限りで最悪の悪夢が描かれています。
当時、中学生であった僕は本作を観て大変な衝撃を受けるとともに、「父親になることへの恐怖」を潜在的にグリグリと擦り付けられました。それは端的に言えば疑似体験的なトラウマでした。

同時にデヴィッド・リンチという本作を生み出した監督にベタ惚れしてしまいました。
一種の心の傷を負いながらも、その異様な世界にどっぷり魅了されてしまったのです。

何よりも、リンチ自身が「結婚をすること」「父親になること」に対し強烈にネガティブなスタンスであろうことが僕にとっては重要でした。

後に調べて分かったことですが、リンチが若いころに恋人が妊娠をしたことが本作のインスピレーションとなったそうです。映画というものは個人や社会が抱える問題のメタファー(比喩)だったりします。つまり、父親になりたくなかったリンチが思い描いた悪夢がそのまま本作となった、ということです。

本作が持つ表面的な部分(グロテスクでシュールで難解)だけでなく、内面的な部分(父親になりたくない)にも当時の僕は共鳴したのだと思います。

以来、僕には「恋人が妊娠してしまったらどうしよう」「離婚したら男手ひとつで育児をしないといけないのか」「あんな醜い子どもが生まれてきたら・・・」という不安感が付きまといました。それはもちろん本作のせいではなく、僕自身が父親になる覚悟ができていないこと、自由を謳歌したかったことが最大の要因です。ただ、そんな不安感が分かりやすく具現化されたものが本作だということです。

しかし、そんな僕も徐々に丸くなり、ご縁あって37歳にして結婚をしました。そして可愛い子宝にも恵まれました。もちろん、子どもが生まれてくるまでは本作のことが何度か頭をよぎりましたが、それは杞憂に終わりました。

結局のところ、本作の制作当時のリンチや昔の僕は「まだ覚悟ができていないこと」に対する先行きの見えない不安感に恐れおののいていたのだと思います。ゆえに本作は若いころのリンチでないと作りえないという意味でも重要な作品だと思います。

結婚し父親になる覚悟がない男があたふたするコメディ映画はありがちですが、ここまでグロテスクに悪夢的に表現してみせた映画は他に類を見ないと思います。一見、難解ではありますが、言いにくいオトコの本音を率直に描いている点もまた人を惹きつける理由の一つだと思います。

(画像は映画.comより引用)

僕の評価

10点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

強烈なヴィジュアルイメージと人間の生理的嫌悪感を突きまくる内容が素晴らしいです!!

どうでも雑感

・2017年に立川シネマシティでの「極上音響上映」にて本作を再鑑賞したときの感動は忘れられません。耳をつんざくようなインダストリアルノイズの嵐に身を委ねる快感は他では得難い体験でした。

鑑賞方法

『イレイザーヘッド』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
(2020年10月時点)

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