『ラストエンペラー』対比と反復がスゲエ刺さる!

映画『ラストエンペラー』の一場面 ドラマ
この記事は約6分で読めます。

自分の意思ではなく、周囲の思惑によって人生を動かされていってしまった男の話。皇帝なのに、です。

言わずと知れた超・名作ですが、僕は最近になって初鑑賞しました。これがもう世間様が大絶賛したのも100%頷ける素晴らしい映画でしたので、できるだけ僕なりの視点で感想を書こうと思ったのですが・・・。

タイレンジャー
タイレンジャー

素晴らしい映画なのに、感想が書きにくい!という事態が発生。

作品概要

1987年製作/163分/PG12/イタリア・イギリス・中国合作
原題:The last emperor
配給:松竹富士
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
製作:ジェレミー・トーマス
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプロー/エンツォ・ウンガリ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
美術:フェルナンド・スカルフィオッティ
衣装:ジェームズ・アシュソン
音楽:坂本龍一/デヴィッド・バーン/スー・ソン
出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/坂本龍一/デニス・ダン/ヴィクター・ウォン/高松英郎 ほか

3歳で清王朝の皇帝に即位した溥儀の生涯を、絢爛豪華に描いた歴史大作。1950年中国人戦犯として護送される最中、溥儀は自殺を図る。意識が遠のいていくなか、幼き日の情景が脳裏によみがえってくる……。外国人に初めて撮影許可が下りた紫禁城での即位式は、幼い溥儀に500人の家臣がかしずく圧巻のシーンである。1987年アカデミー賞では作品、監督、撮影、脚色、編集、録音、衣装、美術、作曲とノミネートされた9部門すべてを受賞。出演のほか音楽も担当した坂本龍一は、日本人として初めてアカデミー作曲賞を受賞した。ディレクターズカット版は218分。

映画.comより)

予告編

The Last Emperor (1987) Trailer (Fan Remaster)

感想・考察(ネタバレなし)

まずはフツーの感想を

スッゲ〜面白かったんですが、感想が書きにくい映画ですね。

観賞後、感想が書けないまま2ヶ月以上、放置してしまいました。

僕は映画の感想を書く時は、できるだけ僕個人の視点や解釈で書くように努めているのですが、本作の場合はそれが難しかったのです。

本作はその完成度の高さゆえ、または世間の評価や解釈が一般的に確立されているがゆえに、僕個人の視点や解釈が入る余地(隙)が無いのかもしれません。

そのせいか、下記のような普通の感想しか出てきません。

① 溥儀の人生そのものが数奇でドラマチック

② その人生の中の対比を強調する物語構成

③ 世界遺産、紫禁城(故宮)での大規模ロケが圧巻

④ ヴィットリオ・ストラーロの撮影が色彩豊か

⑤ 坂本龍一の音楽がこの上なくエモーショナル

歴史的に名を残す名作はそういうものかもしれませんね。隙が無いのです。

上記のように本作は非常に見どころが多い傑作というのは誰しもが思うところですが、僕は特に②の物語構成が素晴らしいなと思いました。

映画『ラストエンペラー』の一場面

IMDbより)

【対比】を強調する物語構成

ベルトリッチ監督が本作でやりたかったことは「対比」。この1点に尽きるんじゃないかなぁと考えます。

もしも人生というものが複雑怪奇なものであるとするなら、自分のこれまでの人生はまったくそれにかなったものだった

溥儀 1946年の東京裁判にて


溥儀ほど人生の上昇下降、コントラストの激しい人も稀有でしょうね。2歳で皇帝に即位して、最後は平凡な庭師として人生を終えた人ですから。その間にも「雇われ皇帝」として満洲国の執権に祭り上げられ、その後は戦犯として収容所で臭い飯を食わされています。

「皇帝」であった時期と「罪人・平民」であった時期の落差の激し〜い対比。これこそが本作の肝ですね。

で、この対比を表現する為に、「皇帝」期と「罪人・平民」期を同時並行で描く物語構成になっています。人生のハイとロウを行ったり来たりすることで、対比が強調されているのです。

例えば下記のシーンが対比として分かりやすかったです。

・皇帝期には「あなたは皇帝です。何でもお望み通りに」と言われたのが、罪人期では「お前は罪人だ。裁かれる身だ」と言われます。これらは明らかな対になっています。

・皇帝期には西洋文明の象徴である自転車に憧れていた溥儀が、平民期では他の労働者たちに紛れて自転車に乗っている(乗り物はそれしか無い)という状況対比の皮肉。

・かつては自身が居住していた紫禁城が観光地と化し、溥儀自身も入場料を払って(ここがすごい!)訪れる。「かつての皇帝の権力の象徴」と、「今や形骸化した観光地」の対比。

いやぁ、凄いですねぇ。人生の儚さ、無常感を強く感じます。

映画『ラストエンペラー』の一場面

IMDbより)

【反復】に込められた意味

「対比」のほかにもう1点あるなら、「セリフの反復」でしょうか。
本作では同じセリフが繰り返し使われています。同じ言葉なのですが、状況や意味合い、受ける印象が変化したりします。

最も印象的なのは ” Open the door…! “ですね。劇中で3回使われていると思いますが、うち2回は溥儀のセリフです。扉の内側にいる溥儀が「門を開けよ」と命令するも聞き届けられないというシーンです。
清朝から満洲国へと状況が変わっても溥儀自身は実権のないお飾り人形であることを表現していますね。

皇帝なのに、常に城の内側でしか生活できない、門の1つも開けられない、という無力感を繰り返し描くことで強調がなされています。

あと「私は皇帝だ」「それを証明して」というセリフも反復されていますね。1回目は皇帝の権力を表す何気ないシーンでしたが、2回目は最後のシーンなのでそれまで描かれてきた内容を考えると心にグサリと刺さるセリフになっています。これも完全に対比を含めた反復の効果でしょうね。

ただ、その直後の「少年とコオロギ」の要素はこれまた対比と反復なのですが、ちょっとやり過ぎ感がありました。最後に救いを入れたかったのか、結果としてファンタジー感が出て浮いてしまったような印象です。惜しいなぁ〜。

「少年とコオロギ」は削って、溥儀が入場料払って人気の無い紫禁城に入って、そこから唐突なスピーカーの電子音と共に現代のツアー団体が押し寄せてくる、という流れの方が良かった気がします。

感想が書きにくいと言いながらも、一応は書けました笑。本作の対比と反復に関しては誰しもが観ていてハッとする要素ではないでしょーか。

僕の評価

9点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

高尚でありながらも分かりやすさも併せ持った作品だなーと思います。若い世代にも観てほしい!

どうでも雑感

・脚本、演出、撮影、美術、衣装、演技・・・とあらゆる要素が素晴らしいですが、MVPは音楽を担当した(うちの一人である)坂本龍一だと思います。本作での楽曲は神がかり的な素晴らしさです。

・撮影に関して言うと、溥儀の「皇帝期」と「罪人・平民期」とで、画面の色調を使い分けているのが印象的でしたね。「皇帝期」は深みのある赤や黄、琥珀色が目立ち、「罪人・平民期」は暗くて彩度を落としたようなグリーンっぽい色調でした。色調もまた溥儀の人生の落差を演出しているように感じました。

・本作を観てから溥儀についてもっと知りたくなり、下記の本を手に取りましたが、なかなか面白かったです。思春期の溥儀が宦官たちと同性愛を繰り広げたエピソード、溥儀の男性としての不能、と下世話な内容で。映画では描かれなかった部分を補完する意味でも良いかと。

鑑賞方法

『ラストエンペラー』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

・U-NEXT |31日間無料トライアルキャンペーン実施中

U-NEXT

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

そのほかのアカデミー作品賞受賞作品

+2

コメント