『へレディタリー/継承』感想・考察:【世襲制度】ホラー版お家騒動じゃ!

映画『へレディタリー/継承』の一場面 ホラー
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
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2019年の個人的ベスト1だった『ミッドサマー』のアリ・アスター監督による1本前の作品。

ここでも彼個人のトラウマをホラー映画として表現・昇華するスタイルが既に確立されていますね。

果たしてこの映画が描くものとは一体何を意味しているのか、僕なりに書いてみます。

タイレンジャー
タイレンジャー

本当に理不尽で厭な話ですが、素晴らしいです。

作品概要

2018年製作/127分/PG12/アメリカ
原題:Hereditary
配給:ファントム・フィルム
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
撮影:パベウ・ポゴジェルスキ
音楽:コリン・ステットソン
出演:トニ・コレット/カブリエル・バーン/アレックス・ウルフ/ミリー・シャピロ ほか

家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。祖母エレンが亡くなったグラハム家。過去のある出来事により、母に対して愛憎交じりの感情を持ってた娘のアニーも、夫、2人の子どもたちとともに淡々と葬儀を執り行った。祖母が亡くなった喪失感を乗り越えようとするグラハム家に奇妙な出来事が頻発。最悪な事態に陥った一家は修復不能なまでに崩壊してしまうが、亡くなったエレンの遺品が収められた箱に「私を憎まないで」と書かれたメモが挟まれていた。「シックス・センス」「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレットがアニー役を演じるほか、夫役をガブリエル・バーン、息子役をアレックス・ウルフ、娘役をミリー・シャピロが演じる。監督、脚本は本作で長編監督デビューを果たしたアリ・アスター。

映画.comより)

予告編

【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

感想・考察(ネタバレなし)

世襲制度が家族崩壊を招く

あくまで僕の解釈なんですが、これは世襲制度をめぐる家族崩壊の話ですね。
平たく言えば、お家騒動です。

ほら、歌舞伎や狂言などの伝統芸能の世界や、世界各国の皇室などに見られるアレです。

「この子こそ世継ぎに相応しい!」

「いや、継がせるべきではない!」


守るべき伝統のせいで個人の意思や自由が犠牲になることがある。

大抵、そういう大人の事情の犠牲になるのは子どもである、という話なのかなーと。

「犠牲は恩恵をもたらす」と劇中にもあるように、伝統を継承する者は(文字通り)自分を殺して、その役目を引き受けなくてはいけない。。。自分の意思とは関係なく、多くの人がそれを望むからですよ。自分が犠牲になれば、多くの他者に恩恵がある。
そんな世襲制度の理不尽な一面を描いているように思います。

で、「親父の稼業なんか継ぎたくねーんだよ!」という親子間の話も含まれているんですが、本作は祖母、娘、孫の三代に渡るお家騒動になっています。
祖母は孫に伝統を継承することを望み、娘はそれを拒んで祖母に反発するという構図です。

多かれ少なかれ、どこのお宅にもあるでしょ、こんな家族間の確執。

そんな普遍的なお家騒動を仰々しいホラーに仕立てあげたのが本作ですね。

映画『へレディタリー/継承』の一場面

(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC

集中と洞察が求められる映画

ただ、「お家騒動」という核の部分は分かりやすいんですが、そこに上塗りされているホラー映画としての話が難解です。

僕は一回観ただけではよく分からず、色々な解説レビューを読んでようやく「あ、そういうことなのー?」と分かったような分からないような。

で、一通りの知識を得た上で再び鑑賞するも、どうも腑に落ちず。

すごく的を得ているなぁと思ったのはGreenTさんの記事で、お言葉を借りれば「辻褄が合ってくる恐怖と快感が無い」んですね。


結局、伏線は張り巡らせられてはいるものの、伏線が伏線のままだったり、伏線と判別できないレベルの情報も多いので、どうしても消化不良の感は拭えません。

「こんなに分かりにくいのに、そこまで脳内補完できねーわ!」とサジを投げたくなる不親切設計な映画ではありましたー。

観客は厭(いや)なものを見せつけられる挙句、本作に対して高い集中力と深い洞察を強いられます。しかも怖い。それはそれは苦行のような映画であります。

観終わった後も恐怖感と分からないゆえのモヤモヤ感が余韻として残ってしまいます。

映画『へレディタリー/継承』の一場面

(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC

難解だけど「分からない」魅力がある

その一方で、この「分からなさ」に魅力があるのも事実だと思います。

一体、「何」がこの家族に脅威を及ぼしているのかは終盤になるまで明かされません。伏線だらけで、どういう方向に話が進んで行くかも見えないままです。

しかし分からないながらも、僕は最後まで集中を切らさずに観ることができました。これは作り手の力量(テクニック)だと思いますわ。

単純に絵作りや音楽・効果音の使い方が高度で思わず引き込まれます。特にブゥンブゥンブゥンブゥン・・・・という不穏なノイズが延々と流れるのは個人的にツボでした。こういうスタイルの部分が独特なので、この点が評価されるのも分かりますよ。

「話はよく分かんねーけど、なんかスゲーもの観たわ」という感じにはなります。

ネタバレ厳禁タイプの映画ゆえ、こういう抽象的なことしか書けませんが(笑)、

まだ観ていない方は

①予備知識を入れず(どこに連れていかれるか分からない感覚が楽しい)

②できるだけ大きい画面で(画面上のすっげー小さな情報が伏線だったりする)

③ヘッドフォンをして(聞こえるか聞こえないかくらいの効果音も多い)

観てくださーい。

僕の評価

7点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

「どーしてそうなるのか分からん」という難解さはありますが、ダークな物語も禍々しい演出スタイルも好みでした。

どうでも雑感

・老婆のようにも見える異様な顔つきをした少女チャーリーの登場時間が短いことが残念だという人も少なくないかと思います。でも、僕はチャーリーが登場しなくなってからのほうが面白く感じました。「この後、一体どうなってしまうのか」というヒッチコックの『サイコ』的なサプライズ効果があったと思います。

鑑賞方法

『へレディタリー/継承』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

・TSUTAYA TV |30日間無料お試し期間実施中

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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