『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀』(1991) 【本家】ゾンビ観て我が振り直せ

映画『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/死霊創世記』の一場面 ホラー
この記事は約6分で読めます。

う~む、これは人間洞察に優れた社会派の映画ですね。

ゾンビ映画というジャンルであれど、ジョージ・A・ロメロという監督はゾンビを通じて「人間の汚さ」を描いてきた人です。今回もかなり強いメッセージをぶち込んできているので、本作をどのように受け止めるべきかについて書いていこうと思いますー。

タイレンジャー
タイレンジャー

もちろん、1本のゾンビ映画としても十分に楽しめるのですが、本作をどのように位置づけて鑑賞するかも重要なのです。

作品概要

1990年製作/アメリカ
原題:Night of the Living Dead
配給:にっかつ
監督:トム・サヴィーニ
製作総指揮:メナハム・ゴーラン/ジョージ・A・ロメロ
原案・脚本:ジョージ・A・ロメロ
撮影:フランク・プリンツィ
音楽:ポール・マックローグ
出演:トニー・トッド/パトリシア・トールマン/ビル・モーズリー/ウィリアム・バトラー/トム・トウルズ/マッキー・アンダーソン/ケイティ・フィナー/ランヘザー・メイザー ほか

ゾンビに囲まれた一軒の農家に立てこもった男女7人のサバイバルを描くスプラッタ・ホラー。「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968)のリメイクで、製作はジョン・A・ルッソ、ラス・ストレイナー、原作はジョン・A・ルッソ(オリジナル版脚本)、ジョージ・A・ロメロ(オリジナル版原案)、監督はトム・サヴィーニ、撮影はフランク・プリンツィ、音楽はポール・マックローグ、編集はトム・ダベンスキー、美術はジェームス・フェンが担当。出演はパトリシア・トルーマン、トニー・トッド、トム・トールズなど。

映画.comより)

予告編

【ゾンビ】ナイトオブザリビングデッド 死霊創世記 Night of the Living Dead 【ロメロ】

感想・考察(ネタバレなし)

控えおろう!このロメロ印が目に入らぬか!

これは良家のお嬢様のようなゾンビ映画です。 

『28日後…』『ドーン・オブ・ザ・デッド』以降の「走る」ハイスペック・ゾンビがすっかり当たり前となった昨今。それと比べると1990年制作の本作に登場するノロノロとしたオールドスクールなゾンビは逆に新鮮であり、「コレだよコレ!」と言いたくなる本家本元の感があります。 

それもそのはずで、ゾンビの生みの親ジョージ・A・ロメロが監督したゾンビ映画の実質的な第一作『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)のリメイクに当たるのが本作だからです。

Night of the living Dead (1968) TRAILER

本作の監督は特殊効果マンとして有名なトム・サヴィーニに譲る形になったものの、ロメロ自身が製作総指揮と脚本を務めているため、名門による由緒正しきゾンビ映画になっています。

ゾンビが映画の一大人気ジャンルになったのは一体いつからでしょうか。最近はゾンビ映画が好き!という人が増えた気がします。実際にゾンビ映画の制作本数もかなり増えてきているのは事実で、ジャンルの市場規模としては恋愛映画を超えつつあるのではないでしょーか。 

そんな中でも「ロメロのゾンビ映画こそが至高」と決して譲らぬ信者の多さがロメロの特徴ですね。それほどロメロ印への信頼感は絶対であり、「このロメロが目に入らぬかっ!」という威圧感さえ放ちます。 

そんな名門ロメロによる一作なのですから、本作は良家のお嬢様を眺めるような気持ちで鑑賞せねばなりません。 

さすがはロメロ家のお嬢様!ノロノロと人肉に食らいつくゾンビの何と優雅なことか! ほぉ、やはりロメロ・ゾンビの掟をきちんと遵守されておられる。その上、現代的な女性キャラへの配慮もされている。これは徳の高いお嬢様の証だ! …というノリで観ると楽しさ倍増です。

映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記』の一場面

IMDbより)

やはりロメロのゾンビは人間社会の写し鏡である

僕がお嬢様に対して最も関心したのは「ゾンビよりも恐ろしいのは人間」というロメロ家普遍のテーマの見せ方です。 

終盤、武装した自警団たちがゾンビの群れを制圧します。囲いの中でゾンビ同士を闘わせて賭けに興じたり、木から吊るしたゾンビを銃で狙い撃ちしたり、活動停止したゾンビを積み上げてキャンプファイヤーのようなノリで燃やしたりと、相手がゾンビとは言え非道の限りを尽くします。 

これにはもちろんゾンビに対する恨み辛みから来るものですが、その報復の様子がいかにも「娯楽的」なのです。 『地獄の黙示録』のキルゴア中佐は戦争という大義名分のもとに享楽的にサーフィンと大量殺戮を行う狂人でしたが、そんな娯楽的な殺しの怖さが本作の終盤にも表れているということです。

で、この自警団のゾンビたちに対する意識を端的に言うと「ざまあwww」なのです。「ざまあみろ」がネットスラング化したものですね。 攻撃対象に対する状況がこちらに有利に好転した場合に起こる集団心理というやつですが、客観的に見れば気持ちの良いものではありません。 

「メシウマ」も同じような意味ですが、ここにも相手に対する嘲笑や、特定の対象を社会的に攻撃するようなニュアンスが込められています。 事件があればメディアなどの印象操作により誰かがスケープゴートにされたり、印象の良い人物が不倫でもすれば手の平を返したように集団で徹底的に追求をしたり、そしてその炎上する様子を見て楽しんだりと、思い当たる節は多様です。 

社会的に有利な立場(マジョリティ)に立った途端に、残酷とも言える弱者への攻撃性を見せるのが人間。 特に「出る杭を打つ」国民性である日本人はその傾向が強いかと。マスメディアやSNSを通じた過剰なるバッシングを目にしているとそう思えます。

ゾンビ映画観て我が振り直せ。 …という人類への戒めこそが名門ロメロの真骨頂でしょうね。 

お嬢様、ありがたきお言葉に平伏します。

(画像はIMDbより引用)

僕の評価

7点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

人間社会に対する痛烈なる一撃。この精神性こそがロメロ・ゾンビの本質ですね。

どうでも雑感

・思い返してみると、ゾンビ映画が市民権を得たのは映画版『バイオハザード』ですね。あれがデート向けゾンビ映画、ファミリー向けゾンビ映画の礎を築く一作だったと思います。僕も小学生くらいの時はキョンシーやバタリアンのことは知っていたので、この世代は幼い時から慣れ親しんできた題材なんですよね。で、大人になってから彼女連れでバイオハザード、子連れでワールドウォーZって感じの人も多いのでしょうか。すごいなぁ。ゾンビは1日にしてならずですね。

鑑賞方法

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀』はアマゾン・プライム、ビデオマーケットにて配信中です。

また、DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

そのほかのゾンビ映画

コメント