中学生の頃、古本屋で1987年発行の「キネマ旬報」を買ったとき(表紙は『ブルー・ベルベット』だったかな?)、近日公開作品として本作が紹介されていました。
白黒印刷の誌面であったにも関わらず、苦悶の表情と共にドロドロに溶解していく男の姿は鮮烈な印象として僕の脳内に残ったのです。
それ以来、念願叶って、初鑑賞でございます。

ほんと、絵面の汚さはすごいです。
作品概要
1987年製作/アメリカ
原題:Street Trash
配給:日本ヘラルド
監督&脚本:ジム・ミューロー(ジェームズ・マイケル・ミューロー)
撮影:デヴィッド・スパーリング
音楽:リック・ウルフィック
特殊メイク:ジェニファー・アスピナル
出演:ビル・チェピル/マイク・ラッキー/ヴィク・ノト/マーク・スフェラッツァ ほか
古い安物ワインを飲んだ浮浪者が続々と溶け、爆発するというホラー。製作・脚本はロイ・フランクス。監督はジム・ミューロー。撮影はデイヴィッド・スパーリング、音楽はリック・ウルフィック、特殊メイクはジェニファー・アスピナルが担当。出演はビル・チェピル、マイク・ラッキーほか。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
まず、本作の最大の見どころは、人体溶解シーンです。
きったなぁぁぁい浮浪者のオッサンが60年前のワインをグビッと一杯。
するとスグに苦しみ出すオッサン。
蛍光色の分泌液をまき散らしながら、
猛烈な速度で体内組織が溶けていく!
(IMDbより)
そして最後は便器のなかに汚物として吸い込まれていく。消え入りそうな断末魔の叫びとともに。
限りなく綺麗に例えるなら、溶鉱炉に落ちたT-1000のような壮絶な最期を遂げるのだ。
歯の抜けた浮浪者のオッサンが、である。
この凄まじい阿鼻叫喚図が映画の序盤にあるので、全編に渡って一体どんなグチャドロ地獄が待っているのかと思いきや、
どうやら人体溶解は話の本筋ではないらしい。
以降、描かれるのはスラムを舞台にした、浮浪者たちの取り止めのないエピソードの羅列なのです。
雑多な登場人物に、ゆるーいやりとり。
エピソードの一つ一つに関連性は薄く、且つ意味はない(と思われる)。
一体ナニが本筋なのかは終盤になるまで見えてきません。
強いてまとめるなら浮浪者の日常やその社会性という括りでしょーか。
観る者にとっては一番の関心事である人体溶解は、そういう浮浪者社会の中でたまたま起きている珍現象というくらいの扱いです。
例えば、浮浪者がスーパーで様々な食材を万引きする場面が10分くらいも続きます。
でも、まったく意味はアリマセーン。
また別の浮浪者の男根が切り取られて、男根がキャッチボールのように弄ばれて宙を舞う展開。
(IMDbより)
これも意味はありまシェーン。
ただ、そこにあるのはユーモラスなまなざしと、80年代特有のノー天気さ。
浮浪者たちの日常が何やらホンワカしたトーンで描かれています。
だから、ホラー映画だと思って観るとかなりギャップがあるでしょう。
主人公をはじめ、登場人物の過半数が浮浪者という設定もかなり攻めています。
決して出来のいい映画じゃないですけど、「カメラを回すのが楽しくて仕方ない!」という作り手たちの活気が伝わってくるようで、その点は評価したいですー。
僕の評価
6点/10点

社会のド底辺を明るく元気にグロく描く珍作!
どうでも雑感
・本作の監督、ジム・ミューローって劇場映画は本作の1本しか撮ってないんですよね。その後はテレビシリーズの監督の仕事ばかりしていたそうで、彼が撮る劇場用映画は他にも観てみたかったなぁと。
鑑賞方法
『吐きだめの悪魔』はアマゾンでレンタル配信中です。
※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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