エロいことで有名な映画ですが、直接的なエロ描写のほかにも何気ない会話や仕草が何とも官能的です。そこはやはり演出の妙ですな。台詞以外の要素が雄弁に物語る恋愛映画は良い作品が多いことを実証するかのようです。

2人の出逢いの場面から目が離せません!
作品概要
原題:L’Amant
1992年/フランス、イギリス/116分
監督:ジャン・ジャック・アノー
原作:マルグリット・デュラス
脚本:ジャン・ジャック・アノー/ジェラール・ブラッシュ
撮影:ロベール・フレス
音楽:ガブリエル・ヤーレ
出演:ジェーン・マーチ/レオン・カーフェイ/フレデリック・マイニンガー/アルノー・ジョパニネッティ ほか
15歳の少女と中国人青年の愛人関係を描く、マルグリット・デュラス原作の自伝的ベストセラー小説の映画化。監督は「子熊物語」のジャン・ジャック・アノー、製作は同作のクロード・ベリ、脚本はアノーとやはり「子熊物語」のジェラール・ブラッシュの共同、撮影はロベール・フレス、音楽は「カミーユ・クローデル」のガブリエル・ヤーレが担当。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
文学性と下世話の綱渡り
まず、本作は主人公2人の立場の違いが面白い。支配層であるはずなのに貧乏なフランス人と、差別を受けながらも金持ちな中国人。
2人が出会うシーンでのそれぞれの靴の描写だけで、2人の背景が見えてくるという演出がいい。ボロボロのハイヒールを履いた少女(しかもまだ履き慣れてない)と、ピカピカの革靴を履いた中国人青年。
本作はエロシーンばかりが注目されがちだけど、2人の出会いのシーンこそが最も官能的でドキドキもの。目線や手の動きが台詞以上に物語ることができるのは恋愛映画の面白いところ。32歳の中国人青年が15歳の小娘相手にドギマギするもんだから、観ているほうも余計にハラハラしてしまうのだ。
青年は意を決して少女に話しかける。「煙草はいかがですか」と。
でも、その煙草を持つ手が
めっちゃ震えとるやないか!
会話を続けるも、挙動不審な青年。こういうことに慣れてないのかもしれないけど、15歳の少女をナンパすることに悪戦苦闘するあたり、彼の本気度を感じさせます。
一方の少女はと言うと、「男たちに見られることには慣れている」という記述が原作にある通り、したたか。少女は青年に見られていることを知っていながらも、気づかないフリをします。そして青年の車に乗った後、彼が指輪をしていることを目ざとく確認!そう、青年は結婚間近だったのだー。
車内で青年が少女の手を握るべく、そーーーっと手を伸ばしていく所も好きな描写の1つ。痴漢すれすれの行動ですが、この手の動きからして、少女が仕向けた間接的なお誘いに青年が乗っかったのかとうかがわせる…。
指先が触れ合う瞬間がなんとも・・・エッロぉ〜!!
で、恥じらいながらも恍惚とした表情を浮かべるのが少女だけでなく、青年の方もという。それも女性のように「ポッ」という感じで(笑)。なんだか、『バッファロー’66』の手繋ぎシーンを思い出しましたよ。
本作、少女が終始カラッとしているのに対し、この青年はちょっとナイーブすぎやしないか、と。なんだか必要以上に2人の関係を感傷的なトーンに持って行きたがるんですよね。「結婚はキャンセルして、あなたと一緒になりたい」と。
もしや、これは男のマリッジブルーが原因か?だからこそ、異国の少女との性愛を自分で美化している節がある。彼にとっては結婚=人生の墓場。最後の思い出は美しくあってほしいのだと思う。
男のマリッジブルーっていうのがそもそも普通と逆の構図ですよねぇ。よくあるのは女性がマリッジブルーで、第三者のイケメンまたはズルいエロオヤジが女性の心の隙間につけ込んで美味しい思いをするっていう。本作はそれの逆ですね。青年が女性的な立場で、少女がイケメンまたはエロオヤジの立場です。
つまり、この恋愛においては少女が優位な立場にあって、主導権を握っています。
ただ、その優位な立場が最後に綻ぶことで、話としてバランスが取れたかなと。少女が計算高い小悪魔ではなく、これもまた苦い恋愛経験のひとつなのだという落とし所に。
エロシーンはねちっこいのに、話運びは割とアッサリしていて冗長にならず、コンパクトに楽しめる映画でした。文学性と下世話感がいい感じのバランス。
(画像はIMDbより引用)
僕の評価
7点/10点

少女がサバサバしていて、男が妙に女々しいのが強調されてますね。
どうでも雑感
・男にとって結婚前の火遊びとはやけに感傷的なものですなぁ。結局、自分で美化しているだけなんですけどね。
鑑賞方法
あいにく2020年10月時点で『愛人 ラマン』は動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!

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