『大アマゾンの半魚人』【悲恋】田舎の王様、都会の美女に恋をする

映画『大アマゾンの半魚人』の一場面 ホラー
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田舎の王様が都会の美女に恋する悲劇です。

この映画は古典的なモンスター映画なので、「怪物と遭遇する恐怖を人間たちの視点で描く」という型通りの作品ですね。でも、ちょっと切り替えて【半魚人の視点】で物語を読んだほうが面白いかもしれません。

タイレンジャー
タイレンジャー

半魚人に100%感情移入しましたね。人間たちの行いは本当に酷いです。

作品概要

1954年製作/79分/アメリカ
原題:Creature from the Black Lagoon
配給:ユニヴァーサル日本支社
監督:ジャック・アーノルド
原作:モーリス・ジム
脚本:ハリー・エセックス/アーサー・ロス
撮影:ウィリアム・スナイダー
音楽:ジョセフ・ガーシェンソン
出演:ジュリー・アダムス/リチャード・カールソン/リチャード・デニング/ウィット・ビセル ほか

ウィリアム・アランド製作、ジャック・アーノルド監督になる空想怪奇映画1954年作品。モーリス・ジムの原作を「地獄の狼」のハリー・エセックスとアーサー・ロスが脚色した。撮影は「第二の機会」のウィリアム・E・スナイダー、音楽は「サスカチワンの狼火」のジョセフ・ガーシェンソンの担当。「偽りの花園」のリチャード・カールソン、「ミシシッピの賭博師」のジュリア・アダムス、「ネヴァダ決死隊」のリチャード・デニング、「サスカチワンの狼火」のアントニオ・モレノ、ネスター・ペイヴァなどが出演。立体、平面の2版があるが本邦公開は平面版である。

映画.comより)

予告編

Creature from the Black Lagoon Official Trailer #1 – Julie Adams Movie (1954) HD

感想・考察(ネタバレなし)

「田舎王」、土足で踏み入る「都会人」と遭遇

本作での半魚人は、言わば田舎で生まれ育った王様です。外の世界のことは知らないけど、地元のアマゾンは彼にとって十分に幸せな環境でした。

しかし平穏な日々は突然破られ、見ず知らずの人間たちが半魚人の王国に土足で踏み込んできます。半魚人から見たら不法侵入、いやこれは侵略です。

「おめだぢ!ここはオラの土地だべよ!出てかねか!」

憤慨した半魚人は初めて目にする「人間」に戸惑いながらも彼らを殺めてしまう。

探検にやって来た人間たちは言わば「都会人」。田舎でひとりぼっちの半魚人とは対照的に洗練されていて、社会的な集団です。

都会人たちは半魚人のことを一方的に「未開地の野蛮人」と決めつけ、差別します。半魚人はただ平和に、彼にとって当たり前の暮らしをしていただけなのに。

ところが半魚人に魔が差します。都会人の紅一点の女性に惚れて、心をかき乱されてしまうのです。今まで見たこともない美しいものに目がくらんでしまったのでしょう。

「オラの嫁にならねが?」

恋愛などしたこともない「お山の大将」は美女を無理やり連れ去ってしまいます。当然、都会の美女は田舎の王様の価値観など分かるはずもなく、両者の溝は深まる一方でした…。

映画『大アマゾンの半魚人』の一場面

IMDbより)

文明との出会いに自身の価値観が揺らいでしまう

ウィキペディアにも書かれてありますが、『キングコング』もこれとよく似た話なんですね。これも田舎王が都会の美女に目がくらんで、ついには自身の身を滅ぼしてしまう。

背景としてあるのは自然vs文明の対比です。もっと言えば、自然はただそのままでも美しく幸せなのに、文明と遭遇することによって全く異なる価値観を知り、自身の価値観が揺らいでしまうということだと思います。

「なんか文明的なほうがイケてるんじゃね?」という疑問と誘惑が生じるんですね。その象徴となるのが人間の美女なんですなぁ。

例えとして適切かどうかは分かりませんが、ラオスのとある農村の人々は、外国人たちがせっせと自分たちに支援を行うのを見て「初めて自分たちが貧しいことを知った」という話があります。

↑この本、オススメです。

貧しい、支援が必要である、というのはあくまで外国人の目線で見たときの話。ラオスの村人たちはごく普通の「自分たちの暮らし」をしていただけなのです。異なる価値観が遭遇すると、こういう認識の相違が生じるもんです。

そしてやはり、半魚人は都会の美女に象徴される文明と「出会ってしまった」ことが悲劇のはじまりだったんですねぇ。

なんでも一方の側から物事を見るのはおこがましいもんです。本作がそんな「文明に対する自己批判」の精神を持ち合わせているのかは微妙なところですが、あると信じたいです。

映画『大アマゾンの半魚人』の一場面

IMDbより)

モテない男にとっては他人事じゃない

あと、本作のもう一つの視点としては半魚人=非モテ男というものです。モテない男の失恋物語。

アマゾンの奥地でぬくぬくと引きこもった生活を送るオタク童貞である半魚人がリア充グループの美女に恋をしてしまうという話です(そしてリア充グループの男連中に因縁をつけられてボッコボコにされてしまう)。

モンスター映画が好きなオタクなら、だいたいはこの視点で半魚人に感情移入するでしょうね。ギレルモ・デルトロが「半魚人と美女が結ばれてもええやないか!」と主張して『シェイプ・オブ・ウォーター』を撮ってますから。


本作とセットで観ると、やはり田舎の非モテ男の悲劇がうまく補完されるような感じなので、デルトロのやりたかったことがよーく理解できますね。

『シェイプ〜』は長年に渡り社会的に立場が弱かった人に対する優しい晴れ舞台だったんですね。
田舎の王様もこれでようやく報われたんだなぁと。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

真意は分かりかねますが、作り手側は必ずしも心情的には半魚人寄りという訳でもないだけに評価は難しいとことです。

どうでも雑感

・半魚人もあんな見た目でも、中身は初恋をした少年みたいなもんですからね。田舎育ちで非モテ男の僕はもう半魚人やキングコングの気持ちがすごいよく分かります笑笑。それだけに、これらのモンスター悲恋映画は作り手が意識した以上にそういった人たちの心に刺さる気がします。

・それから本作の水中撮影も見事ですねぇ。半魚人は着ぐるみながらも、そうとは感じさせぬ見事な泳ぎっぷりで、「実在感」がありました。

鑑賞方法

あいにく2020年11月時点で『大アマゾンの半魚人』はVODによる動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

異形者の悲恋シリーズ

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