『50回目のファーストキス』(2018/日本) 感想:和製ラブコメのアジア展開について考える

映画『50回目のファーストキス』の一場面 ドラマ
(C)2018「50回目のファーストキス」製作委員会
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  カンボジアの映画館でも邦画が上映されてるぞー!!カンボジアのシネコンで上映されるのは米国映画が6割以上、カンボジア映画が2割未満、タイ映画が1割未満、その他は英国、インドネシア、中国、韓国などという配分で、邦画は全く無かったのだけど、ようやく上映された邦画がこれ!

タイレンジャー
タイレンジャー

なぜこの映画なのかというのはさておき。

作品概要

2018年/日本/114分
監督:福田雄一
オリジナル脚本:ジョージ・ウィング
撮影:工藤哲也/鈴木靖之
音楽:瀬川英史
出演:山田孝之/長澤まさみ/ムロツヨシ/山崎紘菜 ほか

アダム・サンドラー&ドリュー・バリモア主演による2004年のハリウッド映画「50回目のファースト・キス」を、山田孝之と長澤まさみ共演でリメイクしたラブコメディ。ハワイ、オアフ島でツアーガイドとして働きながら天文学の研究をしているプレイボーイの大輔は、地元の魅力的な女性・瑠衣とカフェで出会う。2人はすぐに意気投合するが、翌朝になると、瑠衣は大輔についての記憶を完全に失っていた。瑠衣は過去の事故の後遺症のため、新しい記憶が一晩でリセットされる障害を抱えているのだ。そんな瑠衣に本気で恋をした大輔は、彼女が自分を忘れるたびにさまざまな手で口説き落とし、毎日恋に落ちて毎日ファーストキスを繰り返すが……。「銀魂」をはじめコメディ作品で手腕を振るってきた福田雄一が監督・脚本を手がけ、ラブストーリーに挑戦。オリジナル版の舞台でもあるハワイでオールロケを敢行した。

(映画.comより)

予告編

映画『50回目のファーストキス』予告

感想・考察(ネタバレなし)

男がロマンチックであり続けるという幻想

むかーしお付き合いしていた女性に勧められて観たのがドリュー・バリモア、アダム・サンドラー主演のオリジナル版。

僕の心にはまるで響かなかったけど、その女性が言うには「男性がこれだけ沢山のサプライズをしてくれるのが嬉しい」とのこと。
うん、その点ではいかにも女性が喜びそうな内容であることは当時の僕でも理解できた。

そもそも、男は釣った魚にエサはやらないもんだ。付き合う前は一生懸命でも、付き合ってからはあまりロマンチックなことをしなくなる男は多いと思う。まぁ、僕も身に覚えがあるので…。

でも、女性はずっとロマンチックでありたいし、男性に対しては付き合う前の情熱を維持することを求めたりするもんです。

勿論ロマンチックさを失わない男もいるけど、ある程度の目標をクリアしたら、そのステージであぐらをかいてしまいがちなんですよね、男は。

この男女間の意識のギャップはケンカの種になりやすく、なかなか埋めがたい悩みだと思う。

そこで、女性側にとって都合がいいような、常に男がロマンチックであり続けるというファンタジーがこの映画なんだと思う。

女性が毎日記憶を失えば、毎日口説かれてロマンチック〜!ということか、と。

こういう女性にとってのファンタジーという部分はオリジナル版も今回のリメイク版も同じですね。

実際に、男は弱い女(または病気の女)を前にすると本能的に「守ってあげたい」心理が働くので、これまた理にかなった設定だなーと感心する。

あとは、女性を口説くという狩猟本能?みたいなのも男側にあるだろうし、そういうフレッシュな気持ちが持続するっていうのもこの設定の利点ですかねー。

なので、男女のギャップを逆手にとって激甘ファンタジーに昇華した、ある意味では恋愛の教科書みたいな映画だと思うんですよね。これはオリジナルの設定を褒めるべきですが。

じゃあ、今回のリメイク版の特徴が何かというと、主演女優がちゃんと美人になったこと(ドリューはよく言えばチャーミングだけど)と、コメディ色が強くなったこと。

激甘なのはオリジナルと同じだけど、主演2人の好演もあって嫌いにはなれない佳作になっている。

カンボジア人客の反応

では、カンボジア人はこの激甘ラブコメ邦画をどう観たのか?日本人としては気になるぞー!僕が本作に関して1番興味があるのはその部分だったので。

実際、邦画はあまり馴染みがないらしく、チケット販売員に言われたのが「これはタイ映画で、英語字幕はありませんが宜しいでしょうか?」と。

「これは日本の映画ですよ」と僕が言うと「そこまでは知らないけど…とにかく英語字幕はありません」とのこと。

客の入りは日曜日にしては寂しく、12人くらい。

客層は高校生〜大学生とおぼしき若きカンボジア人の男女。

前日に観た『MEG ザ・モンスター』が大入りだったのに比べるととかなりお寒い。

しかーし!本編開始後はそんな客入りとは吹き飛ばすかのように、

カンボジア人、大 爆 笑 !!

まぁー、ギャグがもれなくウケるウケる。

カンボジア人は笑いの沸点が低い傾向があるけど、こんなにも笑うか?

正直、日本人の感覚からしたら、微妙なギャグもあったけど、周りの反応につられてか、気がついたら僕も笑えてきた。こういうコメディ色強めの恋愛映画がカンボジア人にウケるなら、邦画はもっとこの路線で東南アジアに展開したらどうだろう?

だって、日本はこういう類の映画、量産できるし?僕が知る限りでは『ヒロイン失格』とか、アレとかアレとか(どれがどれだか)。

日本独自の習慣が目立たない作品だったら受け入れられると思う(本作は舞台が南国ということもあってカンボジア人にも馴染みやすかったと思われる)。

それにカンボジアは若年層が圧倒的に多い。人口は東京都と同じくらいしかいないけど、国民の平均年齢は22歳!日本の平均は47歳だから段違いで若い。日本の高度成長期に匹敵するペースで発展が進むこの国の映画界を支えている若年層に向けた映画をどんどん輸出して欲しい。

残念ながら日本は若者が減ってきてるしね…。邦画もそろそろ内向き商売でなく、若者が多い国のマーケットも攻めないと。この点は他のアジアの国々の方が遥かに進んでいる。カンボジアの映画館での上映作品を見る限り、邦画は国際的な競争に遅れをとっているのがよーく分かります…。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

日本映画界が海外マーケットに対して消極的に見えるのはなぜなんでしょうね?

どうでも雑感

・なお、本作はシェムリアップでは公開1週間で上映終了…。まぁ、こちらの映画館は公開スパンが短くて、新しい作品がホイホイとテンポ良く公開される。どんなにヒットしても3週間で終わるので。それにしても、1週間は短すぎますわ。

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