『ザ・ビーチ』感想・考察:【軽薄】ダークな原作小説の映画化はなぜ失敗したか

映画『ザ・ビーチ』の一場面 ドラマ
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尖った内容の小説が映像化されると、何だかマイルドにされてしまうケースは多いと思います。

本作もその一例として知られていますが、そもそもなぜマイルドになってしまったのか、について
考察します。

タイレンジャー
タイレンジャー

本作を観てタイ貧乏旅行に憧れましたなぁ。

作品概要

2000年製作/119分/アメリカ
原題:The Beach
配給:20世紀フォックス映画
監督:ダニー・ボイル
原作:アレックス・ガーランド
脚本:ジョン・ホッジ
撮影:ダリアス・コンジ
音楽:アンジェロ・バラメンティ
出演:レオナルド・ディカプリオ/ティルダ・スウィントン/ヴィルジニー・ルドワイヤンギヨーム・カネ/ロバート・カーライル ほか

現代の若者の倦怠と狂気を美しいリゾート地を舞台に描いたサスペンス・ロマン。アレックス・ガーランドの同名ベストセラー小説の映画化。監督は「普通じゃない」のダニー・ボイル。脚本は「普通じゃない」のジョン・ホッジ。撮影は「エビータ」のダリアス・コンジ。音楽は「隣人は静かに笑う」のアンジェロ・バラメンティ。出演は「仮面の男」のレオナルド・ディカプリオ、「愛の悪魔」のティルダ・スウィントン、「プレイバック」のヴィルジニー・ルドワイヤンほか。

映画.comより)

予告編

The Beach (2000) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers

感想・考察(ネタバレなし)


世間的には失敗作と言われた一本ですが、僕はけっこう好きです。
ざっくり言うと、人間たちの「身勝手な」楽園が崩壊する話ですね。

僕は本作の主人公と同年代の頃に原作を読んで映画も観ましたから、インターネット世代にとって手の届きそうな冒険物語として共感を覚えたものです。

その後、僕もバックパッカーで東南アジアをほっつき歩いたのでよく分かるのですが、他人と違う体験をすることがステータス、になってくるんですよね。他の旅人たちが行ってない場所を求めたり、もっとレアで危険な体験を自然と求めるようになってくるもんです。なぜなら自分だけが優越感に浸りたいからです。

で、一度そういう優越感を味わうと、自然と他の旅人たちを見下すようになってきます(笑)。「俗物たちめ、ばーか」っていう。

そんなバックパッカー特有の嫌〜な一面をえぐるような内容だったのが、アレックス・ガーランド著の原作本ですね。若干26歳のデビュー作ながら、全世界の若者に支持されました。

青春冒険風の映画版と違って、原作はやや内省的でダークな作風です。これはもうガーランド自身が暗い人なのは間違いない。デビュー当時の写真はこんなんだし。

どよーんとした目!しかも、好きな作家は三島由紀夫!映画版しか観てない人にとって、この暗さはなかなかのギャップではないでしょーか。

陽光降り注ぐ南国とは相容れぬ「暗さ」こそが原作の魅力であり、「楽園」の裏に潜む人間の醜さを暴き出すカタルシスがあります。

カルト教団とか秘密クラブとかもそうですけど、「自分たちだけの楽園を作ろうする連中はキモい」ということを痛烈に突きつける内容になっているのです。

優越感に浸りたくて「閉ざされた楽園」を求めた若者が結局は楽園の欺瞞を目の当たりにすることになります。

では、そんなダークな文学の映画版に失敗作の烙印が押された原因は何か。それはシンプルで、ハリウッド映画になってしまったから、だと考えます。

当初はユアン・マクレガー主演で予定

スポンサーの意向でディカプリオ主演に

予算が大幅アップ

映画づくりに口を出す人も増える

主人公は英国人から米国人に設定変更

ディカプリオの持ち味が反映されて、やや内省的な主人公は活発で軽薄な男に

ハリウッドナイズされて、ロマンス要素追加爽やか度アップ。ダーク要素は軽減

なんか薄っぺらい映画になった?

…という経緯かと思いますー。ユアン・マクレガー主演でも作品の出来は変わらなかったかもしれませんが、やはり『タイタニック』直後でアイドル的人気だったディカプリオが主演に「なってしまった」ことが分岐点だったかと。

映画『ザ・ビーチ』の一場面

IMDbより)

結局は「映画化したら原作の薄味ダイジェストになってしまった」のパターンなのかもしれません。それでも僕はこの映画版は好きです。原作に比べてかなりマイルドになっているとは言え、「人とは違う経験がしたい」と思っていた頃のワクワク感はしっかり詰まっているからです。若さゆえの軽薄な冒険だって大切ですよ。

ちなみに原作者ガーランドは傑作『エクス・マキナ』(2015)で映画監督デビューを果たします。この作品でも人間の理想や楽園が欺瞞のもとに成り立っており、内部崩壊していくことが描かれていました。

僕の評価

7点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

原作に比べるとかなり物足りないものの、個人的には思い入れがあるので。

どうでも雑感

・余談ですが、本作で撮影監督を務めたのは『セブン』(1996)のダークな映像で一躍有名になったダリウス・コンジ。陰影の強い絵作りが特徴の人なんですけど、太陽光の強い南国タイでロケされた本作では彼の良さが活かされず(笑。でも、暗いシーンでは流石でしたね。

鑑賞方法

『ザ・ビーチ』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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