『ポセイドン・アドベンチャー』 ジーザス筋肉クライスト!体育会系の宗教映画

映画『ポセイドン・アドベンチャー』の一場面 アクション
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え?これって宗教映画だったの?

「人間ドラマも充実したパニック映画の傑作」は表向きの顔だった?

本作の‘‘宗教映画としての側面‘‘について感想と考察をば。

タイレンジャー
タイレンジャー

しかも「体育会系」の宗教映画というね。

作品概要

原題:The Poseidon Adventure
1972年/アメリカ/117分
監督:ロナルド・ニーム
製作:アーウィン・アレン
原作:ポール・ギャリコ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ジーン・ハックマン/アーネスト・ボーグナイン/レッド・バトンズ/キャロル・リンレイ/レッド・バトンズ ほか

1400名の乗客を乗せてニューヨークからギリシャに向かう豪華客船ポセイドン号が32メートルの大津波に襲われ転覆爆破し、生き残った船客が超人的な勇気で脱出をこころみる姿を描く。製作は「海底探検」のアーウィン・アレン、監督は「クリスマス・キャロル(1970)」のロナルド・ニーム、ポール・ギャリコのベスト・セラー小説を「夜の大走査線」のスターリング・シリファントと「脱走特急」のウェンデル・メイズが共同脚色。撮影はハロルド・E・スタイン、特撮は「トラ・トラ・トラ!」でアカデミー特撮賞を獲得したL・B・アボット、音楽はジョン・ウィリアムズ、美術はウィリアム・クリーバー、、セットデザインはラファエル・ブレットン、編集はハロルド・F・クレスが各々担当。出演はジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、ロディ・マクドウォール、ステラ・スティーヴンス、シェリー・ウィンタース、ジャック・アルバートソン、パメラ・スー・マーティン、エリック・シーア、フレッド・サドフ、レスリー・ニールセン、シーラ・マシューズ、ジャン・アーバンなど。(映画.comより)

予告編

The Poseidon Adventure | #TBT Trailer | 20th Century FOX

感想・考察(ネタバレなし)

そうか、聖書映画だったのか!

25年ぶりに鑑賞しましたが、まさに目からウロコでした。

「人間ドラマも充実したパニック映画の傑作」というのが本作の一般的な評価だと思いますが、改めて観てみるとナルホド〜。確かにこれはバリッバリの聖書映画でしたね!

まず、上下ひっくり返った船内がどんどん浸水していく中で、わずかな人々が自力での脱出を試みるという話そのものがノアの方舟を想起させます。圧倒的大多数の乗客が待機して救助を待つという選択をしたにも関わらず、まるで神の啓示でも受けたかのように自力脱出を信じて疑わないのが主人公なのです。
 
そういう観点で観ていくと、この転覆事故がまるで神が人間たちに課した試練(または怒りの制裁)のように思えてくるのです。これはいかにもキリスト教的な神と人間によるSMプレイだな〜と。さんざん人間たちを痛ぶって信仰心を試す神はドSでよ、ほんと。

アメフトのコーチのような牧師

で、「ノア」の役割にあたるのが主人公であるスコット牧師(ジーン・ハックマン)なんですが、これが実に興味深い人物像なんです。

ゴツイ風貌のジーン・ハックマンが牧師の役?似合わね〜、と観る前は思ったのですが、それはまさに作り手の狙い通りでした。

スコットは格闘家とスポーツ選手としての経歴がある異色の牧師という設定なんですな。体育会系の牧師とはなんとも型破りなキャラクターではありませんか。

スコットが牧師として乗客たちに説教をするシーンがありますが、まるで試合前にロッカールームで選手たちを鼓舞しているコーチのようにしか見えないのです。

「苦しい時は神頼みではなく、内なる神に祈れ!
勇気を持って闘え!
神が求めるのは勇敢な者だ!臆病者ではない!
勝つ努力をせよ!神は努力する者を愛する!」

 

 

牧師というよりも、その風貌も相まってアメフトのコーチのような男です。

キリストと12人の使徒たち

そんな体育会系の牧師が10人に満たない乗客を引き連れて、自力脱出という「正しい道」へと導く過程はそのまま「キリストとその使徒たち」に見立てることもできます。

何しろスコット牧師は千里眼の持ち主かというくらいの超人的な判断力を発揮します。全てお見通しなのか、スコットの「こうすれば助かる!」はことごとく的中するので、もはや神の子レベルです。

このスコット牧師が象徴する「危機に打ち勝つために人々を束ね、導くリーダー像」というものに、

・スポーツマン的

・キリスト的

という二重の意味合いを持たせてあるのが面白いですね〜。スコット牧師はジーザス筋肉クライストなのですな。

そして終盤では、両腕を広げてぶら下がった状態のスコット牧師が神に問いかける場面があります。

様々な難関により乗客が1人また1人と命を落としていく展開(神が与えし試練)に、「神よ!どれだけ人間に試練を与えれば気が済むのか!この人たちが救われるのなら私が犠牲なろう!」という旨を訴えます。

これは磔にされたキリストに見立てられていることが明白です。普通に観てもここは本作中で最も胸を打つ場面ですが、このような聖書メタファー(難易度は中級?)が隠されていることも鑑みると圧巻、の一言。

そして「使徒たち」には「天からの救い」がもたらされるところで映画は幕を下ろします。

パニック映画の皮を被った聖書映画

思うに、1950〜1960年代は『十戒』や『ベン・ハー』などに代表される聖書をモチーフにした映画の全盛期でした。それが1970年代にはニューシネマなどの現実的で暗さのある映画の隆盛によって鳴りを潜め、聖書映画は終わったジャンルと見なされていました。

しかし、パニック映画という新たな装いにて復活を遂げた聖書映画が本作ではないでしょーか。

勿論そんなことを気にせずに、パニックと人間ドラマだけでもかなり面白い映画なので、本当によく練られてあるなぁと驚嘆するばかりです。

一応、書いておきますが、僕の信仰はキリスト教でありません。強いて言えばカンボジア仏教です笑。

 

(画像はIMDbより引用)

僕の評価

8点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

パニック映画、群像劇として優れているのは勿論のこと、聖書映画でもあるという重層的な構造が素晴らしいですね。二度三度と繰り返し観ることで深みが増すと思います。

どうでも雑感

・「スカートを脱げ」
スコット牧師が女子高生のスーザン(可愛い)に放つひと言。→ええええー!!
命がけの脱出劇なのですから、太ももを露わにすることなど気にしている場合ではありません。
という訳で、以降は女優陣の太ももが拝み倒せる映画でもあります。お色気サービスが太ももに特化しているんですね。

 

・『バニー・レークは行方不明』ではメンタルが弱いシングルマザー役を演じたキャロル・リンレイは本作でも「薄幸美人」の役。男なら守ってあげたくなるキャラが似合うな~。

・で、その薄幸美人を勇気づけ、傍にいてあげるのが独身中年のマーティン。多忙であるため、出会いがなく、周囲からは変わり者を揶揄されたりお節介を焼かれたりする人物なんですな。「彼には幸せになって欲しいッ」と思わせるキャラクターなだけに、気づけば薄幸美人といつも隣同士なのには僕も思わずニヤニヤしてしまうのです。

・『エイリアン4』の水中脱出劇は本作の影響下にあるのかなー、なんてボンヤリ思いましたな。

鑑賞方法

ケチな僕はU-NEXTの31日間無料トライアルで本作を鑑賞しました。
(2020年9月時点)

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