鬼畜レベルでの寝取られ展開があるという点では、サム・ペキンパー監督にとっては傑作『わらの犬』に続く作品になるかと思います。
妻が夫のために(?)敢えて他の男に寝取られるのが、主人公夫婦と脇役夫婦とで同時多発します。
一般的には夫婦が絆を取り戻す逃走アクションの名作とされていますが、個人的には寝取られ展開が何よりも気になるので、それについて駄話を。

世にも鬼畜なネトラレが実にサラっと描かれています。
作品概要
1972年製作/122分/アメリカ
原題:The Getaway
配給:東和
監督:サム・ペキンパー
原作:ジム・トンプソン
脚本:ウォルター・ヒル
撮影:ルシアン・バラード
音楽:クインシー・ジョーンズ
出演:スティーヴ・マックィーン/アリ・マッグロー/ベン・ジョンソン/アル・レッティエリ/サリー・ストラザース/スリム・ピケンズ/ボー・ホプキンス/リチャード・ブライト/ジャック・ドッドソン/ダブ・テイラー ほか
「ワイルドバンチ」「わらの犬」などの作品でバイオレンスの真髄を鮮明に捕らえたサム・ペキンパーが、「ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦」に続いて再びスティーヴ・マックィーンとコンビを組み、組織に追われる男と女が必死で逃亡する姿を描く。製作はデビッド、フォスター、ミッチェル・プロウアー、脚色は「生き残るヤツ」のウォルター・ヒル、原作はジム・トンプソンの同名小説。撮影はルシエン・バラード、音楽はクインシー・ジョーンズ、編集はロバート・L・ウォルフが各々担当。出演はスティーヴ・マックィーン、アリ・マックグロー、ベン・ジョンソン、サリー・ストラザーズ、アル・レッティエリ、ボー・ホプキンス、ジョン・ブライソンなど。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
主人公夫婦の場合
サム・ペキンパー監督の『わらの犬』(1971)は史上最高の【寝取られ映画】だと思っています。
暴力の詩人とも謳われる同監督ですが、僕は本作も観たことによってペキンパーは【寝取られの詩人】でもあると確信しました。
冒頭にも書いたように、寝取られ展開は主人公夫婦に起こるだけでなく、脇役夫婦にも起こり、寝取られ同士の両夫婦が対比されるように描かれるのが本作です。
まず、主人公夫婦(スティーブ・マックイーンとアリ・マッグロー)ですが、服役中の旦那を保釈するために、奥さんが文字通り一肌脱ぎます。街の権力者と裏取引をすれば刑務から出してもらえるはずだ、とダンナに指示された奥さん。堅気ではなさそうな権力者のオッサンのもとを訪ねる奥さん・・・やたらと胸元の開いた服で・・・。
奥さんと権力者の間で起きたことは直接的には描かれないものの、奥さんは旦那を出所させるためにオッサンに身体を差し出していたことが後に判明します。もちろん旦那はそこまで指示していませんが、奥さんは旦那の為に寝取られた、というわけです。
それを知った旦那は憤慨し、夫婦の間に亀裂が生じますが、権力者の大金を持って命がけで逃走することになった2人は徐々にその関係を修復していく、というのが本筋になります。寝取られ事件はあったけど、それを乗り越えて再生する夫婦なのですね。最後は後味良く爽やかですしね。
(IMDbより)
脇役夫婦の場合
で、それと対照的なのが脇役のハロルドとその奥さん。
ハロルドはテキサス州の田舎で開業している獣医。若くてイケイケな奥さん(巨乳)はインテリだけど草食動物のようにおとなしいハロルドとの田舎暮らしにすっかり退屈しきっています。
そこにフラリと現われたのが主人公夫婦を追う悪党であるルディ。どう見てもギラギラして精のみなぎった肉食動物のような男です。負傷していたルディはハロルドを脅して傷の手当をさせ、さらにはイケイケ奥さんを寝取ってしまいます。イケイケ奥さんはルディに銃で脅された結果、ハロルドと自身の身を守るために「寝取られた」のですなぁ。
イケイケ奥さんを人質に、ハロルドに車の運転をさせて主人公夫婦を追跡させるルディ。奥さんは寝取られるし、奥さんの見ている前で完全に言いなりになってしまっているハロルドの心中察するに・・・ですが、彼には更なる地獄展開が訪れます。
なんとイケイケ奥さんがすっかりルディの野性的な魅力にメロメロになってしまう!!
銃を突きつけられて渋々と運転をするハロルドの傍ら、高校生のようにイチャつくルディとイケイケ奥さん!!
(IMDbより)
そして、椅子に縛られたハロルドが見ている前で、悦んでルディに抱かれるイケイケ奥さん!!
ここまで酷い寝取られ展開はそうお目にかかれません。不本意ながらも寝取られた、という点では同じでも主人公夫婦とはあまりにもギャップが大きいがために、ことの異常性が際立ちます。
また、インテリで草食系の旦那との田舎暮らしに退屈しきっていた若い奥さん(巨乳)が、粗野な男に寝取られるという展開は実は『わらの犬』と全く同じなんですよね。なので「ペキンパー、またこの話やるん?」という感じですが、その後の展開は全く異なるものであるのは興味深いところ。
なんなんですかね、このペキンパーの「寝取られ」に対するコダワリのようなものは。
僕の評価
7点/10点

奥さんが寝取られても関係を修復できるかは、日ごろの関係性によるって話ですかね。
どうでも雑感
・銃撃戦のスローモーションのカッコよさはさすがでしたが、銀行強盗の場面の緊張感も良かったですね~。
・ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドを初めて観たときは「スティーブ・マックイーン風のボンドなのかな?」なんて思ったことをふと
・↓このポスターがカッコ良くて好きなんですよね~。
(IMDbより)
鑑賞方法
『ゲッタウェイ』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。
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※本ページの情報は2021年2月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
コメント
「粗っぽい言動だけど正義の人」というマックイーンの印象を見事にぶち壊してくれる作品でござった。劇場公開版とラストが異なるバージョン(2人が射殺されてEND)が存在するのは有名な裏話でござる
( ^o^)
ライオン丸殿、出張ご足労でござった!
ラストにそんな別バージョンが??逃避行する2人が射殺されて終わりなんて『俺たちに明日はない』みたいですね。
それだと救いが無さすぎるので、僕はハッピーエンドで正解だったと思います。
寝取られの詩人ときましたか!
名誉な称号ですね!
イケイケ奥さんの方はもうちょっとこう、「いけないわ、私には主人が…」みたいな葛藤があってくれないと、風情が感じられませんが、旦那からしてみればある意味最悪のケースですね。
そもそもなんで結婚したんや…。
たぶんサム・ペキンパーは実生活でも大事な人を寝取られた苦い経験があるんじゃないかと邪推します。
イケイケ奥さんについては、田舎はヤンキーの男がモテるという法則を実証するかのような展開でした。
(若い女性にとって)刺激もない退屈な田舎で、急にオラオラ系の男が現われたらコロッといっちゃうのかもしれません。