『ダンガル きっと、つよくなる〈オリジナル版〉』熱盛り!高濃度・高機能なスポ根

映画『ダンガル きっと、つよくなる』の一場面 ドラマ
(C)Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016
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テレビやパソコンで映画を観るときは、どんなに面白い映画であっても途中スマホをいじったりしてしまうのは僕の悪い癖。 

ところが、本作はスマホを覗くヒマなし!一瞬たりとも退屈しませんでした。 

僕が観たのは日本公開版よりも20分ほど長いオリジナル版で、上映時間は160分。長尺にも関わらず、画面から全く目が離せないのですよ、これが。


タイレンジャー
タイレンジャー

これは観て良かった!

作品概要

2016年製作/161分/G/インド
原題:Dangal
配給:ディズニー、ギャガ
監督・脚本:ニテーシュ・ティワーリー
撮影:サタジット・パンデ
音楽:プリータム・チャクラボルティー
出演:アーミル・カーン/サークシー・タンワル/ファティマ・サナ・シャイーク/サニヤー・マルホートラ/ザイラー・ワシーム/スハーニー・バトナーガル/アパルシャクティ・クラーナー ほか

実話をもとに2人の娘をレスリングの世界で成功させるべく奮闘する父親を描き、本国インドのほか世界各国で大ヒットを記録した人間ドラマ。レスリングを愛する男。生活のため選手の道を諦めた彼は、いつか自分の息子を金メダリストにすることを夢見ながら道場で若手の指導に励む日々を送っていた。しかし生まれたのは4人連続で女の子。意気消沈した男は道場からも遠ざかってしまうが、ある日ケンカで男の子を打ち負かした長女と次女の格闘センスに希望を見出し、コーチとして2人を鍛えはじめる。町中の笑いものになっても意に介さず突き進もうとする父と、そんな父にささやかな抵抗を続ける娘たちだったが……。主演は「きっと、うまくいく」のアーミル・カーン。

映画.comより)

予告編

【公式】『ダンガル きっと、つよくなる』大ヒット上映中!/本予告

感想・考察(ネタバレなし)

一瞬も目が離せなくなる160分間!

面白い映画でも中弛みはあるものです。

前半にかっ飛ばし過ぎた場合、結果的に静的な場面が怠く感じられたり、またはメリハリをつけるために意図的にテンポを落とす場合もあると思います。 しかし、本作は160分間、中弛みがまるで無い。これはとんでもないことです。 

物語としては昭和の少年漫画のようなド直球というか、正統派すぎるくらいのスポ根ものです。 話として新鮮味があるわけではないのに、これだけ目が釘付けになるのは脚本の出来が良いというのが大きいですが、それ以上に撮影・編集による「情報の見せ方」というテクニカルな部分のレベルが非常に高いです。 

観客に見せる必要がある情報を、適切な画角で、適切な秒数で、スマートに確実に提供してくれます。 1カット1カットを見ても、伝えるべき情報をいかに要領よく見せるかという点の最適解から成り立っているように思えます。一見普通なんですけど、実はすごくレベルの高い情報の見せ方ではないでしょーか。 

結果として異常なくらいテンポが良く、無駄を感じさせない流れを作り出せています。 そして観る側は、要点が分かりやすい文章を読んでいる時のように、情報の咀嚼にストレスを感じないのです。頭がいい人の説明が明快なのと同じですね。 

あ、「具体的にどこが?」って訊かないでくださいね。僕も本作の撮影と編集を研究しようと思ってもう一回観ましたが、とにかく面白いので、途中から物語に没頭してしまうのです(笑)。 

映画『ダンガルきっと、つよくなる』の一場面

(C)Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016

競技の面白さ・本質をきちんと描いている

もう一つ、本作が素晴らしいのはスポーツ映画としての機能性の高さです。 

レスリングのルールってよく分からないんだけど、という人は多いと思いますが、本作はそのルールをものの1分くらいでサラリと説明してのけます。 そしてそのルール説明を踏まえた展開が具体例として必ず作品中に配置されているんですね。 

さらには対戦相手を研究した上での明確なゲームプランのもとで試合を見せてくれます。だから、何を狙ってどのように戦うのかが非常に分かりやすい。 しかも、それは試合ごとに異なるのです。

本作はレスリングの本質的な面白さを外していない気がします。 本作を観れば誰だってレスリングの「にわかファン」になれるはず。それは競技の本質を理解できるという価値の提供が本作にあるからでしょう。 

(こういうスポーツ映画の戦術的な面白さを描くことは邦画は苦手としていると思いますね。日本は戦術よりも根性論ですから) 

映画『ダンガルきっと、つよくなる』の一場面

(C)Aamir Khan Productions Private Limited and UTV Software Communications Limited 2016

高濃度なインドの「画」

最後にもう一つ。映っているものが素晴らしい。 とにかくインドは絵になるのです。

(え?言ってることがバカっぽい?) 

僕は数ヶ月間インドを放浪していたことがあるのでよく分かりますが、とにかく絵になる。インドで写真を撮るのはすっごく楽しいですよ。 それこそ、僕が住むカンボジアよりもインドのほうが濃く、色鮮やかで、生命力がみなぎった絵が撮れます。これはカンボジア在住者でも認めざるを得ません。 

そういうインド特有のフォトジェニック感がありつつも、主演のアーミル・カーンの岩山のごとき存在感、 本物の選手にしか見えない娘役の女優さんたち、 といった俳優陣の説得力も見事でした。 

アーミル・カーンの「目は口ほどに物を言う」演技には僕も貰い泣きしましたから。 ゲスい思考に毒された僕に、爽やかな感動をもたらした本作はやはり万人に訴える力のある映画だと言えるでしょう。 

それでは皆さん、ご一緒に。 
♪だんがる♪だんがる(はいっ!はいっ!)

僕の評価

8点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

いや~、物語は超ベタなんですが、なぜこんなに引き込まれるんでしょうね。非常に計算された演出のもとに成り立っているのは確かです。

どうでも雑感

・インド映画と言えばミュージカルのイメージが強いと思います。本作はミュージカルではないのですが、MTV風?みたいに音楽が物語の展開を捕捉したり、登場人物の心情を代弁したりはします。その点もスマートで且つアクセントとしても効果的だったと思います。

鑑賞方法

『ダンガル きっと、つよくなる』(日本公開版)は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

・U-NEXT |31日間無料トライアルキャンペーン実施中

U-NEXT

あいにく2020年11月時点で『ダンガル きっと、つよくなる』(オリジナル版)はVODによる動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにてブルーレイで鑑賞をすることができます。初月は無料です!

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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