『アマデウス ディレクターズ・カット』聖なる童貞、チャラ男と神に復讐を

映画『アマデウス』の一場面 ドラマ
この記事は約5分で読めます。

そうか!この映画は、サリエリ、モーツァルト、神、の「三角関係」の話だったのか!と、今さらながら理解できました。

「優秀」な音楽家であるサリエリが「超・天才」モーツァルトの才能を妬む、という話だと思っていたのですが、違いましたね。つまり、サリエリとモーツァルトの2人だけの関係性ではなく、両者の間に「神」が介在していたということですね。

タイレンジャー
タイレンジャー

とは言っても、基本はゲス~いブラックコメディなので、難しいことは考えずに楽しめます。

作品概要

2002年製作(オリジナル版は1984年)/180分/PG12/アメリカ
原題:Amadeus Director’s Cut
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ミロス・フォアマン
原作・脚本:ピーター・シェイファー
撮影:ミロスラフ・オンドリチェク
美術:カレル・サーニー
音楽監修:ネビル・マリナー
出演:F・マーリー・エイブラハム/トム・ハルス/エリザベス・ベリッジ/ロイ・ドートリス/サイモン・キャロウ/ジェフリー・ジョーンズ/クリスティーン・エバーソール/チャールズ・ケイ/ケニー・ベイカー ほか

ピーター・シェイファーによる戯曲を「カッコーの巣の上で」のアカデミー賞コンビ、製作ソウル・ゼインツ&ミロス・フォアマン監督で映画化。19世紀の楽聖ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの半生を、彼を妬む宮廷音楽家サリエリの視点から描く。出演はサリエリにF・マーレイ・エイブラハム、モーツァルトにトム・ハルス。1984年度のアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞を含む8部門で受賞した。20分の新たな映像が追加されたディレクターズ・カット版。全編にちりばめられたモーツァルトの名曲の数々が、最新のデジタル音響で鮮やかに甦る。

映画.comより)

予告編

Amadeus (1984) Official Trailer – F. Murray Abraham, Mozart Drama Movie HD

感想・考察(ネタバレなし)

モーツァルト殺しは神への復讐

サリエリはモーツァルトのことを直接的に憎んでいるのではないのですよね。サリエリが抱く憎悪の矛先は神に向けられています。

手が届かぬ圧倒的な才能を、自分ではなくモーツァルトに与えた神をサリエリは憎み、復讐を誓うという話でした。で、神への復讐として「神の子」であるモーツァルトを殺そう、と。

神への復讐ですかぁ…。何やら格調高い映画なんでしょうなぁ。と、思われがちですが。いや、むしろその逆で、本作はキャッチーでゲスくて誰でも楽しめる映画だと思います。ほぼブラックコメディです。

神童モーツァルトが実は超〜下品なゲス男であったことは今や定説ですが、本作でのトム・ハルス演じるモーツァルト像は強烈ですね。ウンコの話でキャッキャとはしゃぐ様子は精神年齢12歳かと。

この下品で幼稚な超天才というキャラクターが笑えるんですが、そんな彼に翻弄される周囲の人々の困惑模様でもかなり笑わせてくれます。

そんな中で一番困惑しちゃうのが主人公のサリエリです。ひとつ誤解されやすいのは、サリエリは凡人ではなく、優秀で才能豊かな人なんですよね。

凡人サリエリが天才モーツァルトに嫉妬した。ではなく、天才サリエリが超・天才モーツァルトに嫉妬した。なんです。

後者の方が妬みの問題が根深いですよ。サリエリは宮廷学長としての地位を築いており、自尊心も強い分、そんな自分を凌駕する存在に強い対抗心を抱くのは当然です。ましてやそのモーツァルトから侮辱された日にゃ、はらわたが煮えくりかえるどころじゃあありません。

映画『アマデウス』の一場面

IMDbより)

神に誓って童貞、サリエリ

でも、サリエリの怒りがもっと根深いのは、彼が【生涯童貞】を神に誓ったからでもあります。

少年期のサリエリは音楽の道での成功を強く望むあまり、「女性とは一切交わりませんので、音楽の才能をお与え下さい」と神に祈願します(あーあ)。願いが届いたのか、サリエリの努力が実ったのか、結果として彼は音楽家として成功を収めたのです。

ところが、そんな「神に誓って童貞」サリエリが足元にも及ばぬ才能を、神はモーツァルトに与えた、と。しかもモーツァルトはチャラ男のヤリチンで、サリエリが密かに想いを寄せていた女性をいとも簡単にパクパクしてしまいます。

モテない童貞が抱く、ヤリチンのチャラ男への恨みたるや…なのです。

同時に「私の童貞の誓いは何だったのよ?ねぇ神様?」と。本作はそんな男性諸氏にとっては重大な問題を孕んでいるため、基本的に男はサリエリ全面支持のスタンスになるはずです笑。

サリエリ率いるモテない男軍団が神の屋敷を焼き討ちにする画が目に浮かぶようです。

映画『アマデウス』の一場面

IMDbより)

すべての凡庸なる人々へ

焼き討ちと言えば…なんとなくサリエリとモーツァルトの関係性って明智光秀と織田信長っぽいんですよね…。サリエリ光秀がモーツァルト信長に復讐する話、という見方をしても楽しめる映画だと思います。

モーツァルトの死も、本能寺の変も、どちらも謎の多い「事件」ですが、2人の間にいったい何があったのかと、覗き魔的な好奇心を刺激する話であることは共通していますね。

話が逸れましたが、「天才」サリエリのネチっこい復讐劇を、「凡人」である観客が追体験するというのがこの映画の基本だと思います。

ただ、それだけに、復讐を遂げたサリエリが僕たち凡人に対して発する最後の一言にはドキッとさせられます。それは最後をキュッと締める絶妙すぎる優しさとスパイスでした。抱きしめられたような、突き放されたような。

その後のエンドクレジットで流れるモーツァルトの穏やかな曲がまた何とも言えない気持ちにさせてくれます。何なんでしょうね、この不思議な余韻は。

一言で言うと、人間のどうしようもない(罪深い、汚い)部分を「娯楽」に落とし込んでくれた映画だと思います。いやぁ、傑作です。

僕の評価

9点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

基本的にはけっこう笑える映画です。重くなりすぎない適度なゲスさと優しさが不思議な余韻を残してくれます。

どうでも雑感

・老いた主人公が自殺を図るところから始まり、回想形式で過去と現在を行き来する物語構成が先日観た『ラストエンペラー』と同じですね。本作のほうが先ですが。

・モーツァルトの妻コンスタンツェを演じたエリザベス・ベリッジのおっぱいが拝めるのはディレクターズカット版のほうですよ!お間違えのなきよう。

鑑賞方法

『アマデウス ディレクターズ・カット』はアマゾン・プライムにて配信中です。

また、DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

ミロス・フォアマン監督作品

+1

コメント