珍品の扱いですが、僕は大好きですねぇ。
寄生ホラーでありつつ、ドラッグのメタファーになっているという構造が面白いのです。

寄生生物のキャラクターがなかなか独創的です。
作品概要
原題:Brain Damage
1988年/アメリカ/120分
監督:フランク・ヘネンロッター
脚本:フランク・ヘネンロッター
撮影:ブルース・トーベット
音楽:クラッチ・レイザー/ガス・ルッソ
出演:リック・ハースト/ゴードン・マクドナルド/ジェニファー・ロウリー/セオ・バーンズ ほか
あらすじ:
エルマーと言う名の、男根か大便のような小怪物が登場!ラジオDJばりの美声で流暢に英語を話すエルマーは主人公の青年をそそのかし、共生関係を営むことに。だが、エルマーの目的は人間の脳を食すことであった。
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
これは麻薬ホラーの傑作。
麻薬の恐ろしさをエルマーという小怪物に置き換えた話なんですわな。
こちらがそのエルマーのご尊顔。
(IMDbより)
タレ目男根お化けです。
エルマーが分泌する液体を脳に注入すると、激しい快感と幻覚症状が現れるんですよ。オンボロの廃車の山が極彩色のイルミネーションのように輝いて見えたりするという。
で、エルマーと共生する人間はこの快感が止められなくなるし、間を置くと禁断症状が出てしまうので、エルマーの人間狩り(脳喰い)をお手伝いせざるを得なくなってしまうって話なんですー。
この設定を聞いた時点で、エルマー=麻薬と解釈できるんですが、その幻覚描写はかなり力が入っていて、さては作り手も経験者か常用者かと疑ってしまうレベル。
監督は不朽の名作『バスケットケース』(1982)のフランク・ヘネンロッター。
商業的に成功したデビュー作『バスケットケース』に続く監督2作目が本作。しかし、その間には6年もの長きブランクがある。成功者がなぜ次回作にすぐに取りかかれなかったのか?
さてはヘネンロッター、デビュー作で儲けた金をおクスリに使い果たしたな?
本作の主人公と同様におクスリに夢中になった彼は使い物にならず、映画製作どころではなくなってしまった。が、長年の放蕩生活とリハビリの末にようやくおクスリを断ち切る。
麻薬の快感と恐ろしさの両面を味わい尽くした彼が自らの経験を反映させたのが本作である(脚本もヘネンロッター)。
健全になった彼は本作以降は『バスケットケース2』など、ハイペースで映画を撮ることになる。
以上、あくまで僕の妄想。
でも、本当にそういう風にしか見えないんですよ、本作は。基本的に麻薬に対して否定的な内容になっているし。
『バスケットケース』と同じく大都会が舞台なんですが、どこか人情味溢れる下町っぽい大都会であった前作とは対照的に、本作の大都会は冷たく、人と人の距離が遠く、殺伐とした雰囲気。
やっぱり、ヘネンロッターはこの間に私生活で何かあったな?
ちなみにエルマーはあんな容姿のくせに、ええ声してます。口も達者です。黄金の声を持つ男根なんです。
村上龍さんが「いい声はカリスマの条件の1つ」と書いてたように、やはりエルマーは魅力的です。だから登場人物はエルマーに簡単にそそのかされて麻薬にズブズブはまっていくんですねー。
もし、エルマーのようにタレ目で、ええ声で、口が達者な男が言い寄って来たら要注意だ。
…という、世の女性が変なオトコに引っかからないための教訓も本作には含まれている。
(そんな訳はない
(画像はIMDbより引用)
僕の評価
8点/10点

鑑賞できる媒体が少ないですが、ご興味がある方にはぜひ観て頂きたい!
どうでも雑感
・人間と寄生生物との奇妙な共生関係という点は『寄生獣』にも影響を与えたのかもしれませんね。
・あと、エルマーが男根のようにも見えることから、「下半身に主導権がある男(性欲優先)」の意味合いもあるのかな、なんて思ったりもします。男は時として男根の言いなりですから。
鑑賞方法
あいにく2020年11月時点で『ブレイン・ダメージ』は動画配信されておりません。
アマゾンでDVD購入ができます。
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