『アリス・イン・ワンダーランド』感想・考察: 大人になっちまったティム・バートン

映画『アリス・イン・ワンダーランド』の一場面 SF
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ティム・バートン。

彼の映画は大好きでした。

『ビッグ・フィッシュ』(2003)までは。
『スウィーニー・トッド」(2007)以降は全作品観ていません。まるで別れた恋人のようです。

なぜ全く観なくなったかと言うと、単純な話で、バートンがすっかり大人になってしまったからです。

タイレンジャー
タイレンジャー

本作はバートンの悪い意味での「大人」な映画なのです。

作品概要

2010年製作/109分/G/アメリカ
原題:Alice in Wonderland
配給:ディズニー
監督:ティム・バートン
原作:ルイス・キャロル
脚本:リンダ・ウールバートン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジョニー・デップ/ミア・ワシコウスカ/ヘレナ・ボナム・カーター/アン・ハサウェイ ほか

ティム・バートン監督がルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」を元にアリスの新たな冒険を描くファンタジー大作。19歳に成長したアリスは、幼い日に地下世界を冒険したことを忘れていたが、ある日、洋服を着た白ウサギを目撃し、その後を追って再び地下世界へ。するとそこは独善的な赤の女王に支配されていて……。タイトルロールに新人ミア・ワシコウスカ。共演にジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム・カーターほか。

映画.comより)

予告編

ALICE IN WONDERLAND | New Official Full Trailer (HQ) | Official Disney UK

感想・考察(ネタバレなし)

バートン映画の変化をおさらい

『バットマン リターンズ』(1992)までの初期バートン映画は、大人になることができない人たち、または世間との差異を埋められない人たちの話がメインだったと思います。

無邪気な自分と、醜い大人(世間)の狭間で嘆く人の話ですね。

バートンが嘆けば嘆くほどに作品が面白くなる時期でした。作家の不幸が作品のクオリティを上げるというパターンですね。

『バットマン リターンズ』はまさにそんな嘆きが頂点を極めた映画でした。

この頃のバートンは繊細で尖っていて、ハリウッドでも(メジャーでありながら)かなり異質な存在だったと思います。


ところが、次の『エド・ウッド』(1994)では嘆き”が”開き直り”に変わるんですよね。


「僕は僕のままでいいんだ」と。他者との違いを肯定できるようになって、「世界にひとつだけの花」みたいな思考に切り替わります。映画も痛快でした。
ただ同時に、この時からバートン映画において”嘆き”が一切無くなります。

更なる重大な変化は『ビッグ・フィッシュ』(2005)。テーマは確執のあった親との和解です。
 

これはまさに子どもだったバートンが大人になったことを意味してますよね。
(その後の『チャーリーとチョコレート工場』も同じテーマを扱っていました)

『ビッグ・フィッシュ』は主人公の精神的な成長がバートン自身に重なるところがあっただけにより感動的でした。
しかし、同時にバートン特有の幼児性は今後は一切観られないだろうな、彼の作品はつまらなくなるだろうな、と思ったものです。


実際に以降のバートン映画は彼自身の主張はかなり薄くなり、世の中の需要とうまく折り合いをつけたような作品ばかりになります。
(観てないけど、雰囲気で分かる)

さて、そんな流れで撮られたのが本作『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)。

映画『アリス・イン・ワンダーランド』の一場面

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バートン映画の本質が抜け落ちてしまった

ここで象徴的なのはディズニー社との和解です。

バートンは若いころ、ディズニー社でアニメーターとして働いており、『ヴィンセント』『フランケンウィニー』という短編を撮っていますが、その2本を「暗くて子ども向きではない」とお蔵入りにした同社との関係は良好ではなかったようです。

そんなディズニー社とタッグを組むことになったのはやはりバートンは大人になった(割り切った)なぁという印象です。

『アバター』直後の3D映画であった本作は世界中で大ヒット。

で、僕は今になってようやく鑑賞した次第ですが、全然面白くないんだな、これが。
バートンがやっつけ仕事だったのがバレバレです。

保守的な環境で育った女子が、敷かれたレールに沿った人生を歩みたくないと、冒険をした結果、自立した女性になるっていう話なんですけど、

まぁー、薄っぺらい!

話そのものに魅力も説得力も無い上に、登場人物が行動をする動機すらもまともに描けていません。風変わりなキャラクターがただゴチャゴチャ登場するだけです。

一番の問題はバートン自身の分身であるキャラクターが一人もいないことです。

従来のバートン映画(特に初期)は彼自身を投影したアウトサイダー的なキャラクターが多く登場し、且つ彼らは温かな眼差しで描かれていました。

はみ出し者たちへの愛こそ、バートン映画の神髄です。

しかし、本作ではキャラクターに作り手の心がこもっていなんです。ヴィジュアルこそバートンらしく奇妙奇天烈ながらも、愛が感じられません。

だから、各キャラクターにはイデオロギーが感じられないんですね。それでは物語に推進力が生まれません。 

商業的には成功しましたが、バートンが大人になったぶん、作品としては失うものが大きかったことを知らされる1本です。

昔は一緒に悪さをして遊んだ仲なのに、アイツはすっかりつまらない大人になっちまったな、という心境によく似ています。

かく言う僕も旧友にそう言われているかもしれませんがー。

僕の評価

2点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

バートンであることを差し引いたとしても普通につまらない映画・・・。

どうでも雑感

・何となくこのあたりからジョニー・デップとバートンのコンビが世間にうまく飼いならされてしまった感があります。大人になった2人もその役割を受け入れていったんだろうなぁと。

鑑賞方法

『アリス・イン・ワンダーランド』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルキャンペーンがあるのでぜひ。

U-NEXT

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

また、『アリス・イン・ワンダーランド』はTSUTAYA TVでも鑑賞できます。

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はTSUTAYA TVサイトにて
ご確認ください。

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