『ザ・プレデター』(2018) 感想:プレデターそもそも論。改めて1作目と比較しよう

映画『ザ・プレデター』の一場面 SF
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
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否定的な感想です。それも、シリーズ一作目との比較の上での否定が多いです。
ただ、逆説的ながら、本作をけなしたいのではなく、改めて一作目を持ち上げたいというスタンスです。そりゃあもちろん、大傑作である一作目と比較することは不毛だと分かってるんですが、申したいことがございまして…。

タイレンジャー
タイレンジャー

どんどんおかしな方向に行っているシリーズですが、そもそも1作目の本質とは?

作品概要

原題:The Predator
2018年/アメリカ/107分
監督:シェーン・ブラック
脚本:フレッド・デッカー/シェーン・ブラック
撮影:ラリー・フォン
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:ボイド・ホルブルック/トレヴァレンテ・ローズ/ジェイコブ・トレンブレイ// ほか

1987年の1作目公開以来、世界中に多くのファンを生み出した「プレデター」シリーズの正統続編として製作されたSFアクション。驚異的な格闘センスや戦闘能力、そして侍を彷彿とさせる武士道を持ち合わせる戦闘種族プレデターと人類の戦いを描く。元特殊部隊員の傭兵クイン・マッケナは、メキシコのジャングルに墜落した宇宙船と、その船に乗っていたプレデターを目撃。プレデターの存在を隠匿しようとする政府に拘束されてしまう。クインは、墜落現場から持ち帰っていたプレデターのマスクと装置を自宅に送り届けていたが、クインの息子で天才的な頭脳をもつ少年ローリーが装置を起動させてしまう。装置から発せられるシグナルによってプレデターがローリーのもとに現れ、さらにそのプレデターを追い、遺伝子レベルでアップグレードした究極のプレデターまでもが姿を現す。出演は「LOGAN ローガン」のボイド・ホルブルック、「X-MEN:アポカリプス」のオリビア・マン、「ルーム」のジェイコブ・トレンブレイ。シリーズ1作目「プレデター」に特殊部隊員として出演した経験を持つ、「アイアンマン3」のシェーン・ブラック監督がメガホンをとった。

映画.comより)

予告編

映画『ザ・プレデター』予告 究極のプレデター降臨編

感想・考察(ネタバレなし)

シュワちゃんよりも強いヤツは、どこだ

そもそも、一作目のプレデターは「シュワちゃんよりも強い敵を登場させよう」というのが出発点だと思う。

シュワちゃん単騎無双の『コマンドー』の後だっただけに、映画の作り手たちは考えた。シュワちゃんを倒せる人間などいない…。そうだ、宇宙人と戦わせよう!と。

そう、プレデターは究極の対シュワちゃん用生物兵器なわけです。姿を消したり、多彩なハイテク兵器や驚異的な身体能力を有しているのは相手が人類最強の男であるが故の高スペック。

あのシュワちゃんが苦戦すればするほど、プレデターの強さが際立つという構図が面白い映画でした。

その前提があるので、シュワちゃん以外の人間を相手にすると、途端にプレデターの高スペックぶりが「弱い者いじめ」「姑息」みたいに悪い方に目立ってしまうという問題が発生する。

これは丸顔海賊団さんからのコメントで気づいた点。

結局このシリーズはいつもこの問題にぶち当たる。つまり、プレデターの目線で言うと、シュワちゃんよりも強い(キャラ立ちした)敵がいないことが問題なのだ。

実際に『エイリアン VS. プレデター』はこの問題に対する1つの解決策であった。怪物同士の戦いにすればそれは解消できると。

ただ、それはシュワちゃんと同等以上の人間などいないことの裏返しでもある。なので、人材に頼るのではなく、それを補うアイディアがこのシリーズには必要なんだと思う。人間がプレデターと互角に戦えるような。

それを踏まえて今回がどうかというと、まぁ相変わらず弱い人間しか出てこない。でも、序盤で人間がプレデターの兵器を手に入れる展開があって、これには「なるほど!」と思わず唸った。弱い人間がプレデターのハイテク兵器を使って同等の戦闘力を手にするということか!これならプレデターにとってもいい勝負。シュワちゃん不足を補うナイスアイディア!

※「シュワちゃん不足」というキーワードはキャンさんのブログから拝借しました。

と、心踊ったのだけど、そうはならないんですよねぇ。あることにはあるけど、チョットだけ。そこが何よりも勿体ない。面白くなりそうな要素をいとも簡単にスルーしちゃったのかい、と。

映画『ザ・プレデター』の一場面

(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

論理と戦術は、どこだ

僕はサッカーの試合を観るのが好き。さらに言えば、楽しいのは試合そのものよりも、「なぜチームAはチームBに勝つことができたのか」を考察した戦評を読むのが好きなんですね。

現代サッカーにおいては、いかに相手チームの長所を消して、短所を突くかという効率的かつ論理的な戦術が多く見られます。数ある勝利のなかでも、論理が成り立った勝利というのが一番気持ちがいい勝ち方です(個人的に)。もちろん、メッシのような怪物が論理を超越したプレーで勝利をもたらすのも好きですが。

プレデターの一作目で劣勢のシュワちゃんがプレデターを倒すことができたのも、勝つための論理が成り立ったからですね。

・相手に自分を判別させぬよう身体に泥を塗る

・自分の短所を消すことで、相手と同等の条件に持ち込む

・相手がまだ知らない武器で不意打ち

・それが失敗した場合のプランBも用意

…というように、痛快な逆転劇の裏には入念なプレデター対策と、それを完遂する戦術があったんですわ。この点も一作目が非常に工夫されている点だと思う。

ま、それは既にやってしまったことなので、続編で同じようにやってしまっては芸がないというもの。戦い方には何か他の工夫が必要。

と思っていたのだけど、残念ながら本作では「一生懸命戦ったら、勝てた」という感じ。論理も戦術もないという点では一作目に比べてかなり後退したという印象。これは『プレデター2』も同じですが。

※『プレデターズ』(2010)にはシュワちゃんの戦術に対するリスペクト描写があった。

ただ、何度も言うように、これも本作を批判するより一作目を褒めるべきでしょう。

僕の評価

3点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

作る必要のなかった映画、という感は否めません。

どうでも雑感

・どうも僕は本作の製作意図が分からなかったので、シェーン・ブラック監督のインタビューを読んでみた。監督曰く、「プレデターが気味の悪いヤツだということをもう一度思い出させる」と。だとしたら、犬と子どもは出さないほうが良かったかな…。

・あと、お馴染みのテーマ曲が流れるのは嬉しいのだけど、ヘリコプターのシーンだけに使うのはやめてくれ。あれはプレデターのテーマ曲であって、ヘリコプターのテーマ曲ではないと思うぞー。確かに一作目ではヘリコプターのシーンでそのテーマ曲を使っていたけど、そういう意図じゃないと思うぞー。

・最後に、ふと思ったのだけど、なぜこのシリーズはシュワちゃんを軸にしたシリーズ展開にしなかったのかと。高度な戦術を持った人類最強の男を獲物として狩る喜びにプレデターは武者震いするはずだ。そのほうが狩猟民族にとって幸せなんじゃないかなー。

鑑賞方法

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『プレデター』シリーズ

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