本作は映画監督であり、画家や音楽家としても活躍する鬼才デヴィッド・リンチへのインタビューを軸にしたドキュメンタリー映画。
リンチのファンならぜひ押さえておきたいが、色々と想定内の内容であったため、ドキュメンタリー作品としての工夫が足りないかと・・・。
一本の作品としてはどうなの、これ?
作品概要
原題:David Lynch: The Art Life
2016年/アメリカ、デンマーク/88分
監督:ジョン・グエン/リック・バーンズ/オリビア・ネールガード=ホルム
撮影:ジェイソン・S
音楽:ジョナサン・ベンタ
出演:デヴィッド・リンチ ほか
「ブルーベルベット」「マルホランド・ドライブ」、テレビシリーズ「ツイン・ピークス」といった映像作品だけでなく、絵画、写真、音楽など、幅広いジャンルで独特の世界観を作り出しているデビッド・リンチの創作の謎に迫ったドキュメンタリー。ハリウッドにあるリンチの自宅兼アトリエで25時間にもおよぶインタビューがおこなわれた。アメリカの小さな田舎町で家族ともに過ごした幼少期、「マルホランド・ドライブ」で美術監督を務めた親友ジャック・フィスクとの友情、当時の妻ペギーの出産、そして長編デビュー作となった「イレイザーヘッド」など、リラックスしたリンチ自身の口から彼が描き出す「悪夢」の源流が語られていく。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
とりあえずリンチに話を聞いてきました。
リンチが自身の幼少期から長編デビュー作『イレイザーヘッド』を作るに至るまでを語るのと、自身のアトリエでの創作風景、絵画の作品群が映し出される。
本作で1番驚いたのはリンチの幼少期の写真や動画が数多く残っていること。あまりにも多数で且つ保存状態が良いのでフェイクなんじゃないかと思ってしまったくらい。1950年代の米国があまりに平和で豊かで、なんだか『ブルー・ベルベット』の冒頭に出てきたような「素朴で善良な米国(ただし嘘くさい)」そのものだ。
リンチは僕の父と同じ1946年生まれ。僕の父は戦後の食糧難の直撃世代で、食べるものが無さすぎて、代わりに木炭をむしゃむしゃと食べていたそうだ。口の中を真っ黒にしながら。小学校の頃、隣の席の女子のお弁当の中身がカブト虫の幼虫であったという話も、父から聞かされた。
そんな日本の貧しさと比べ、同学年のリンチ少年の写真や動画に見られる米国の豊かさたるや、あまりの格差で今更ながら驚く。「米国は豊かだなぁ」という僕の父の眼差しが初めてリアルに感じられた。
さて、そんな豊かなリンチ少年は一体どこで捻くれてしまったのか、彼の作風に影響を及ぼした暗い出来事があったに違いないという目で観ていたのだけど、なかなかそんな展開は無く、リンチはありふれた反抗期も含め、ごく健全に育っていく。(一部含みのある話があったけど。これはリンチの話術の巧みなところだ)
で、リンチ青年の人生に暗い影を落としたのはやはり彼が学生時代を過ごした「荒廃した街」フィラデルフィアだった。フィラデルフィアの殺伐とした環境が『イレイザーヘッド』に多大な影響を及ぼしたことはよく知られているので、この話は意外性なし。
実際に本作そのものもあまり意外性が無いもので、本作はドキュメンタリーとして出来が良いとは言えない。インタビュアーが話を聞き出せなかったのか、リンチが話の出し惜しみをしたのか、こちらが期待するような逸話はあまり出てこない。特に前半はちょっと退屈してしまって、睡魔との葛藤だった。
何だか作り手がリンチという素材そのものに頼り過ぎてしまっていて、切り口や構成の工夫が感じられないのが残念なところ。
作り手の力量不足を見抜いたのか、リンチ自身もやっつけ仕事のテンションであったのでは、と邪推する。
(画像は映画.comより引用)
僕の評価
3点/10点
何というか、そのまんまなんだよなぁ。ただ、リンチにインタビューしただけ。
どうでも雑感
・偉そうにボロクソに書いたけど、僕だったらリンチを対象にどんなドキュメンタリーを撮るか?それはあれですね。松本人志の「一人ごっつ」をリンチにやらせますね。「写真で一言」とか「出世させよう」とか、リンチならどうなるのか見てみたい。
鑑賞方法
『デヴィッド・リンチ:アートライフ』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
(2020年10月時点)
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