『ブラック・クランズマン』説明過多だ!ラスト5分が蛇足である理由

映画『ブラック・クランズマン』の一場面 ドラマ
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面白かったし、好きな部類の映画だったんですが、ラスト5分がスッゲェ蛇足で、全体の良さを損ねてしまったと感じました。そのお話をば。

タイレンジャー
タイレンジャー

スパイク・リーの熱量が裏目に出たような印象です。

作品概要

2018年製作/135分/G/アメリカ
原題:BlacKkKlansman
配給:パルコ
監督:スパイク・リー
製作:ジョーダン・ピール
脚本:チャーリー・ワクテル/デビッド・ラビノウィッツ/ケビン・ウィルモット/スパイク・リー
撮影:チェイス・アービン
音楽:テレンス・ブランチャード
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/アダム・ドライバー/ローラ・ハリアー/トファー・グレイス/アレック・ボールドウィン/ライアン・エッゴールド/ロバート・ジョン・バーク/ポール・ウォルター・ハウザー ほか

黒人刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」潜入捜査した実話をつづったノンフィクション小説を、「マルコムX」のスパイク・リー監督が映画化。1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース。署内の白人刑事たちから冷遇されながらも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていたKKKのメンバー募集に勢いで電話をかけ、黒人差別発言を繰り返して入団の面接にまで漕ぎ着けてしまう。しかし黒人であるロンはKKKと対面できないため、同僚の白人刑事フリップに協力してもらうことに。電話はロン、対面はフリップが担当して2人で1人の人物を演じながら、KKKの潜入捜査を進めていくが……。主人公ロンを名優デンゼル・ワシントンの実子ジョン・デビッド・ワシントン、相棒フリップを「スター・ウォーズ」シリーズのアダム・ドライバーが演じる。第71回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。第91回アカデミー賞では作品、監督など6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。

映画.comより)

予告編

映画『ブラック・クランズマン』予告編

感想・考察(ネタバレなし)

明快で痛烈なメッセージだけど、野暮ったい

映画とは、個人や社会の問題をベースにした例え話だったりします。

『ロッキー』は売れない俳優であったスタローン個人の人生をボクシングに例えた映画だし、

『猿の惑星』は人種差別や民族間の対立というテーマを人間と猿の話に置き換えた映画です。

このようなことをメタファー(メタ、メタ的)と言いますが、分かりやすく「たとえ」で良いのではないでしょうか。

映画の作り手は個人や社会の現実をそのまま描かずに、例え話に置き換えて暗にメッセージを発することができるんですね。

そんな作り手が「たとえ」の中に忍ばせたメッセージを、観客が自由な発想で読み解くというのが映画(のみならず様々な芸術作品)の楽しみ方の一つだと思います。

だから、『ロッキー』の本編の中では「これはスタローン自身の話を元にしている」と明確に語る必要はないし、そこは観る者が思いを巡らせて楽しむ余白として残しておくものです。

余白があるからこそ、『太陽がいっぱい』は実は同性愛の話だという解釈が生まれたし(しかもそれがほぼ正解)、ロボコップはキリストがモデルだという面白い解釈が出てきたりします。

だから、作り手が「例え話」の映画の中で「実はこんな現実問題が元ネタです」と明言するのは野暮ったいんですよ。

考える間も無く答えが明かされてしまうクイズのようなもので、それでは考える楽しみは無くなってしまうんです。

スパイク・リー監督の渾身の一撃である本作は残念ながら、そんな野暮ったいことをやっちゃってます。

映画『ブラック・クランズマン』の一場面

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表現よりも現実のほうが上回ってしまった

物語は70年代の米国を舞台にした黒人に対する人種差別に関する話ですが、本編の最後に現代の米国のニュース映像が挿入されています。

「70年代は差別が酷かったが、現代においても状況は何も変わっていないし、トランプ政権下ではさらに悪化するだろう」という、かなり具体的なメッセージが表明されて本作は幕を下ろします。

誰が観てもこれこそが作り手のメッセージであり、解釈の余地がない、あまりにも明確すぎる着地点です。

もちろん、そのメッセージ自体は否定しませんが、本作の場合は最後に現代のニュース映像を入れなくてもそれは十分に伝わるものだと思うのです。

現実を例え話にすることが「表現」であり、芸術だと思うのですが、本作の場合は結局のところ、最期の「現実」が映画の大半を占める「表現」を上回ってしまうんですね。

重いテーマを時に軽快に、時に刺激的に「表現」して、最後にもっと重い「現実」を突き付ける。それこそが作り手の狙いなのかもしれません。

でも、それをやっちゃうと、【フィクション < ドキュメンタリー】ということになっちゃいます。せっかくほぼ全編が映画的な自由な表現で満ち溢れているのに。

なので、ほぼ全編を楽しんだ身としては最期の5分はどうしても蛇足に感じてしまうのです。そこまで作り手のメッセージを前面に出す必要は無かったし、もっと観客を考えさせる余白を持たせるべきだったのだと。

ほんと、惜しい映画です。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

ラスト5分さえなければもっと好きになれていた作品でした。

どうでも雑感

・もともと、ここ数年流行りの「最後に実際の映像を挿入」には食傷気味だったから余計にそう感じたのかもしれません。スパイク・リーは今回は気合い入りすぎて空回りした感がありますね~。

鑑賞方法

『ブラック・クランズマン』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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