カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイが吸血鬼カップルを演じるなんて夢のような企画です！美男美女が吸血鬼だなんてマンが好きな女性陣が喜びそうですが、本作はそうじゃあないんですね。めちゃくちゃアンチ少女マンガ的なことを見せつけてきます。
美しいだけじゃダメなのよ。
作品概要
原題：The Hunger
1983年／イギリス／96分
監督：トニー・スコット
原作：ホイットリー・ストリーバー
脚本：アイヴァン・デイヴィス／マイケル・トーマス
撮影：スティーヴン・ゴールドブラット
音楽：デニー・ジャガー／デヴィッド・ローソン／ミシェル・ルビーニ
出演：カトリーヌ・ドヌーヴ／デヴィッド・ボウイ／スーザン・サランドン／ダン・ヘダヤ ほか
不死の生命力を持つ吸血鬼のミリアムは生きた時代ごとに愛する者を見つけ、自分の仲間にしていた。ニューヨークに暮らす今の相手は、18世紀のイギリスで見つけたジョン。ミリアムは吸血鬼になることを条件に彼にも生命力を与えていたが、200年以上も若さを維持することは不可能だった。衰えを感じ始めたジョンは老化を研究している女医サラに会うが……。美男・美女の吸血鬼の末路を華麗かつ斬新な映像美で描いた退廃的スリラー。
（映画.comより）
予告編
感想・考察（ネタバレなし）
少女漫画的な吸血鬼映画かと思いきや
いやぁ、お美しゅうございました。
そもそも、カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイが吸血鬼のカップルを演じるという企画自体がすごい。少女マンガかよっていう。吸血鬼もので少女マンガと言えば『ポーの一族』が有名(未読)だと思うけど、まさにマンガのように人間離れした美しい2人を堪能できるのが本作。
でも、少女マンガと決定的に違うのは、老いの醜さを描くことに容赦がない点。
少女マンガの「老い」の表現ってすごく簡単で、口の横にほうれい線を一本描くだけで「若くない人」になるんですよね。でも、それ以外の老いの表現のバリエーションが無くて、ハゲてる人も、歯が抜けた人も、シミだらけの人も出てこない。老いたキャラに対して気を遣っているとも言えるのだけど、逆にほうれい線一本の重みが残酷だよなぁなんて思ったりもする。
そんな少女マンガのようかと思った本作の「老い表現」ときたら、大友克洋のマンガに登場する老人ばりに皺くちゃで醜い。大友マンガに出てくる若者の顔ってツルンとしていたり、のっぺりしてたりしてあまり特徴が無いのだけど、老人の顔には執拗なくらいに皺を描き込む。老人と言うよりもミイラだよってくらいに。
そんな容赦の無さが本作にも共通しているところで、
少女マンガばりにお美しい2人が…
こんな感じになる！
もしくは、こう。
いや、本当だってば！！
美男美女が徹底的に老いて醜くなる展開は個人的に大好き。綺麗なものの裏の汚いものっていう切り口は映画としては間違いなく面白い。本作は美しさの点では限りなく少女マンガに近いのですが少女マンガが成し得なかった「老い」＝「醜い」を残酷なまでに見せつけます。
これが長編映画デビュー作というトニー・スコット監督。ドヌーヴとボウイをミイラ化させるなんて、肝の座った人だなぁと思う。でもボウイなんかは登場シーンの大半は特殊メイクでの老いた姿にも関わらず、本人はノリノリで演じてるっぽかった。
若さ／老い、美しさ／醜さ、など極端な対比が多い本作。実は対比は他にもあって、それらが見どころになっている。耽美的な世界観／現代的なスタイリッシュな映像表現ヨーロッパ的な佇まいなドヌーヴとボウイ／現代アメリカ〜ンなスーザン・サランドンクラシック音楽／80年代ニューウェーブロック
対照的な要素をこれだけ網羅しても、全体的にまとまりがある感じ。
そして、何と言っても映像の美しさは特筆もの。ヨーロッパ的な人物と美術でありながら、映像表現はMTV的。細かいカットの挿入やヒラヒラした薄い布なんかはいかにもミュージックビデオ的。この作品に限ってはトニー・スコットはリド兄の映像美を超えていると言っても良いでしょう。
（画像はIMDbより引用）
僕の評価
7点／10点
のちのアクション一筋なトニー・スコットの作風とは全く異なる異色作。こんなトニー・スコットがもっと観たかった！
どうでも雑感
・スーザン・サランドンが脱いでいます。個人的には嬉しくありませんが。
鑑賞方法
あいにく2020年10月時点で『ハンガー』は動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です！
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