『マザー!』(2017) 感想・考察:バレてもいい【ネタバレ】聖書映画ではないという体裁

映画『マザー!』の一場面 ホラー
(C)2017, 2018 Paramount Pictures.
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これはもうネタバレしても許されるでしょう(笑)。重層的な構造になっている本作は実に考察のしがいがある映画です。観客がどのように受け止めるかという点を考えて、ある意味では狡猾に作られていますね。そのへんの話をば。

タイレンジャー
タイレンジャー

アロノフスキーが鬼畜っぷりを発揮!

作品概要

原題:Mother!
2017年/アメリカ/121分
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー
撮影:マシュー・リバティーク
出演:ジェニファー・ローレンス/ハビエル・バルデム/エド・ハリス/ミシェル・ファイファー/ドーナル・グリーソン ほか

「ブラック・スワン」の鬼才ダーレン・アロノフスキー監督が、「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞を受賞した若手実力派のジェニファー・ローレンスを主演に迎えて描くサイコミステリー。郊外の一軒家に暮らす一組の夫婦のもとに、ある夜、不審な訪問者が現れたことから、夫婦の穏やかな生活は一変。翌日以降も次々と謎の訪問者が現れるが、夫は招かれざる客たちを拒む素振りも見せず、受け入れていく。そんな夫の行動に妻は不安と恐怖を募らせていき、やがてエスカレートしていく訪問者たちの行動によって事件が相次ぐ。そんな中でも妊娠し、やがて出産して母親になった妻だったが、そんな彼女を想像もしない出来事が待ち受ける。

(映画.comより)

予告編

10月11日『マザー!』ブルーレイ&DVDレンタル開始!

感想・考察(ネタバレあり)

表向きはマタニティ・ホラー

まず、本作の表面上の物語は「妊娠〜出産」への不安をホラー化したマタニティ・ホラー (以下、マタホ) だ。

この手の代表格は当然『ローズマリーの赤ちゃん』。本作のポスターの中には『ローズマリーの赤ちゃん』へのオマージュ版もあったので、アロノフスキーの新作はマタホなのね、と僕は解釈した。

序盤は夫婦あるあるみたいな展開で、「どうしてあんな人を家に入れるのよ!?」とか「なぜ私に相談してくれないの?」とか、既婚者なら身に覚えのありそうなやりとり。未婚の僕さえ、奥さんが苛立つ気持ちがよく分かります笑。

で、中盤で奥さんが妊娠してからはマタホ展開に突入。
総じてマタホ映画(他には『イレイザーヘッド』や『プロメテウス』など)は妊娠中の女性には決して勧められないけど、本作もまたかなりエグい展開。マタホ指数は高めと言っていいでしょう。

この調子でいけば僕が大好きな「ブラック・スワン」みたいな主人公追いつめられ系統の映画になるな、なんて思ったけど、そうはならない。後半の展開があまりに突飛で、安直にそういうカテゴリーとして観ると全然スッキリしないのだ。

これがなぜかと言うと、表面的な物語とは異なる裏テーマをアロノフスキー監督が仕込んでいるからなんですね。僕はこれをダヴィンチ・コードならぬアロノフスキー・コードと勝手に呼んでおります。

※以下、バレてもいいネタバレあり。個人的にはこれを読んだ上で観たほうが楽しめると思います。むしろ何も知らないで観る方が作り手の意図が分からず、辛い。なので、敢えて以下のネタバレを読んだ上で観て頂くことをお勧めします。

ストーリー展開やオチのネタバレはしません。作り手が設けた裏テーマについてのネタバレです。

映画『マザー!』の一場面

(C)2017, 2018 Paramount Pictures.

聖書映画ではないという体裁

ネットを見ると本作について様々な考察がなされているけど、主流の解釈をまとめると下記のようになる。

『マザー!』の三重構造

第1階層:表面的なストーリー
→マタホ、追いつめられ系

第2階層:意図された裏テーマ
→主人公を母なる地球に見立てたキリスト教の物語。または環境問題の物語。

第3階層:作者が無意識?に織り込んだテーマ
→主人公の夫はキリスト教で言うところの創造主であり、アロノフスキーが自らの創造の苦悩を意識的にか無意識的にかキャラクターに反映。


第3階層はぶっちゃけどうでも良いのだけど、第2階層は予め分かってないと、または観てるうちにそうと気づかないと、訳が分からないまま終わってしまう。

第1階層だけでは映画として破綻しているので、あまり面白くないんですわな。つまり、第2階層を理解しないと映画を公平に評価できないという面倒な構造になっている。

実際に中盤以降の訳の分からない展開は聖書に忠実であるがゆえ。聖書に馴染みがない日本人にとっては辛いところ。だから、予備知識無しに第2階層に気づく日本人は勘の鋭い人か、キリスト教にある程度詳しい人でしょうね。

以上を念頭に、本作に出てくる人物や出来事がキリスト教で言うところの何を表しているのかと考えながら観ると、この映画は面白いと思います、ハイ。

で、本作がすごいのはキリスト教(の信者)に対して否定的とも取れる過激な展開があること。表面的に見れば本当に目を背けたくなるような胸糞悪いシーン。でも、キリスト教徒を揶揄しているのだと思えば「確かに〜」という感じ。むしろ痛快ですらある。

当然、キリスト教関係者から非難が殺到するはず。でも、アロノフスキーが「いや、これは環境問題についての映画だから」とか「私自身の物語だ」と逃げることができる構造にもなっているのが本作の狡猾なところ。アロノフスキー、よく考えてるな〜笑。

つまり、本作は意図的にキリスト教について描いているのだけど、それは解釈の一つに過ぎないという体裁をとってるんですわな恐らくアロノフスキーはそうだと認めないでしょう。でも作り手が公式に認めなくても、俗説(解釈)がより強い発信力を持つことを見越して作ってますね。

『太陽がいっぱい』は同性愛についての映画、という説があるけど、それに近い感じがする。あれも恐らく作り手は同性愛要素を意図してるでしょう。当時でも淀川長治さんなどその裏コードに気づく人はいたわけで。そして今ではすっかりその解釈が一般的ですよね。

そういう風に作者が明言しなくとも誰がが裏テーマを読み取る→その解釈が一般化する→でも事実はグレーなまま、ということを狙ったのが「マザー!」なのかな、と。

(画像は映画.comより引用)

僕の評価

8点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

聖書メタファー映画、と言うと収まりがいい感じです。

どうでも雑感

・それにしても、ジェニファー・ローレンスは絶妙にエロい。のっぺりした顔×むっちり巨乳=彼女の絶妙なエロさ、なんだよな。

・冒頭、業火に包まれた女性の姿から幕を明けますが、いきなりファンタジーっぽい画から入っちゃったのは残念。主人公がベッドで目覚める何気ない日常から始まったほうが良かったと思う。

鑑賞方法

『マザー!』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
(2020年10月時点)

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