『マン・オブ・スティール』感想・考察:ドラゴンボールとスーパーマンの関連性とは

映画『マン・オブ・スティール』の一場面 SF
TM & (C)DC COMICS. (C)2013 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
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どうも世間の評判はよろしくない。特に「こんなのスーパーマンじゃない」「重いし暗い」「破壊的すぎる」というオールドファンからの否定的な意見が多いような気がする。
でも、僕にとってはそういう「スーパーマンらしからぬ部分」こそが本作の好きな部分なんですよねぇ。

タイレンジャー
タイレンジャー

今回は『マン・オブ・スティール』を全力で肯定的に語ります。

作品概要

原題:Man of Steel
2013年/アメリカ/143分
監督:ザック・スナイダー
製作:クリストファー・ノーラン ほか
脚本:デビッド・S・ゴイヤー/クリストファー・ノーラン
撮影:アミール・モクリ
音楽:ハンス・ジマー
出演:ヘンリー・カヴィル/エイミー・アダムス/マイケル・シャノン/ケヴィン・コスナー/ダイアン・レイン/ローレンス・フィッシュバーン/ラッセル・クロウ ほか

「ダークナイト」のクリストファー・ノーランが製作、「300 スリーハンドレッド」のザック・スナイダー監督のメガホンでリブートされた新たな「スーパーマン」。無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。クラーク・ケント=スーパーマンに、新鋭ヘンリー・カビルを抜てき。育ての親ジョナサン・ケントにケビン・コスナー、生みの親ジョー=エルにラッセル・クロウ、ヒロインのロイス・レインにエイミー・アダムス、仇敵ゾッド将軍にマイケル・シャノンなど豪華キャストが集結。脚本に「ダークナイト」3部作のデビッド・S・ゴイヤー。音楽も「ダークナイト」や「インセプション」など、近年のノーラン作品を手がけているハンス・ジマーが担当。

映画.comより)

予告編

映画『マン・オブ・スティール』本予告 2013年8月30日公開

感想・考察(ネタバレなし)

ドラゴンボール風スーパーマン

本作のアクションシーンがドラゴンボールのサイヤ人同士の戦いのようだ、というのは多くの人が思うところ。たしかに日本の漫画アニメが世界に与える影響は誇らしく思う。

でも、そもそもは逆で、ドラゴンボールそのものがスーパーマンからの影響が非常に強いと思う。

特に悟空の生い立ちが描かれるアニメスペシャル「たったひとりの最終決戦 フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父」がスーパーマンと同じような話ですからね。

カカロット(孫悟空)の父はサイヤ人の下級戦士バーダック。

しかし、フリーザの裏切りに遭い、同胞のサイヤ人は一人また一人と倒され、バーダックもまた尽き果てる。サイヤ人の故郷である惑星ベジータの消滅と共に。

それと入れ替わるようにまだ赤ん坊であるカカロットを乗せた脱出ポッドが地球へと飛ばされ、カカロットは地球人の手によって育てられる。自らの強大な力を知ることもなく。。。

アニメスペシャルの話はここまで。

これが『スーパーマン』(1978)の序盤とよく似ているのだ。

その後、地球にて成長したカカロットを待ち受けていたのは「同胞」であるサイヤ人たちの襲来。

「たったひとりの最終決戦~」は鳥山明先生は関わっていないらしいが、かつて消滅した生まれ故郷の同胞との対峙というのは完全に「スーパーマンⅡ 冒険編」(1981)の影響では。

なので、僕が思うに、ドラゴンボールのキャラクターやその設定は下記のように、そのままスーパーマンに置き換えることができる。

サイヤ人 = クリプトン星人
孫悟空(カカロット) = スーパーマン(クラーク・ケント、カル゠エル)
バーダック = ジョー゠エル(スーパーマンの本当の父)
ラディッツ、ベジータ = ゾッド将軍

まぁ、スーパーマン自体はキリストやユダヤ人をモデルにしているとも言われているけど、こういう話は神話なんかでも見られる普遍的なものかと。

このように、ドラゴンボールは設定や物語において「スーパーマン」とその続編の影響が強いのだけど、今回の「マン・オブ・スティール」はアクション表現の部分においてドラゴンボールの影響が見られる。

作り手たちがドラゴンボールの中のスーパーマン要素を見抜いたかどどうかは不明だけど、敢えてドラゴンボール要素を取り込んでいるのが面白い。

まるでスーパーマン、ドラゴンボールを介して日米がキャッチボールをしているような。

あまりに破壊的すぎる「超人同士のバトル」こそは僕が本当に観たかった実写版ドラゴンボールだと言える。

映画『マン・オブ・スティール』の一場面

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都市破壊のカタルシス

1作目の『スーパーマン』(1979)は言わば、悟空(スーパーマン)が誕生してから、「地球上でイチバンつぇえ存在」になるまでですね。

『スーパーマンⅡ 冒険編』はいよいよ悟空vsベジータ(ゾッド将軍)の話になる訳で、大都会を舞台にした超人同士の死闘に僕の胸は期待でいっぱいに。破壊の限りを尽くす怪獣映画のようなカタルシスを望んでいたのだ。

しかーし、「一般人が犠牲にならないよう、場所を移そう」と、スーパーマンがヒーローらしい良心溢れる提案を。これが僕を失望させた。

結果、こぢんまりとした場所でコチョコチョ戦う尻すぼみのクライマックスになってしまったと思う。

超人vs超人、怪獣vs怪獣には制約のない舞台で派手に暴れまわってほしいのだ。

ザック・スナイダーはそんな僕の気持ちを汲み取ってくれたのか、本作では9.11の10倍くらいの都市破壊が超人同士のバトルによってもたらされる。そのド派手な都市破壊は鬼神同士の争いどころか、怪獣映画の様相すら呈している。

これだよこれ!大都会のサイヤ人戦!

まぁ、いくらなんでも破壊しすぎだろ、という気がしないでもないけど。

映画『マン・オブ・スティール』の一場面

TM & (C)DC COMICS. (C)2013 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

でも、冒涜ではない

この一般人への配慮の足りなさ、荒々しさが従来のスーパーマン像からかけ離れている、というのが本作が主に批判される点だけど、スーパーマンとして観るのか、怪獣映画やドラゴンボールとして観るのかで評価は分かれると思う。

スーパーマンという題材をダークに、破壊的に描くという思い切ったアプローチにこそ本作の価値がある。それこそ、旧作ファンへの媚び売りしか芸が無かった『スーパーマン リターンズ』(2006)よりも遥に志が高い。

この点もシリーズものとして評価したいし、大胆な変革を試みているのだけど、決して従来の作品を冒涜するようなものにはなっていない。(『スター・ウォーズ最後のジェダイ』との違いはここだ)

そして何よりも、少年時代にドラゴンボール直撃だった世代としては、大人版ドラゴンボールとも言える『マン・オブ・スティール』を観られるのは格別の喜びだ。

僕の評価

8点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

ダークで破壊的というのが僕の好みにマッチしました!

どうでも雑感

・ゾッド将軍一味が好きですね~。鎧のような衣装に黒い髑髏のようなマスクも、カブトムシみたいな宇宙船も、デザインが最高です。

鑑賞方法

『マン・オブ・スティール』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
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