『青いパパイヤの香り』感想・考察:ベトナム生まれフランス育ち。ほんのり香る微エロス

映画『青いパパイヤの香り』の一場面 ドラマ
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ある意味、日本人の感性に合うタイプに映画かもしれません。
表面的にはほとんど何も起こらないような映画なのですが、作り手の意図を「察し」ながら読み解いていけば微エロの理由にたどり着けるのかもしれませんね。

タイレンジャー
タイレンジャー

直接的なエロ描写はありません!

作品概要

原題:L’odeur de la Papaye verte | Mùi du du xanh | The Scent of Green Papaya
1993年/フランス、ベトナム/120分
監督:トラン・アン・ユン
脚本:トラン・アン・ユン
撮影:ブノワ・ドゥローム
音楽:トン=ツァ・ティエ
出演:トラン・ヌー・イェン・ケー/リュ・マン・サン/トルォン・チー・ロック/グエン・アン・ホア ほか

パリ郊外のセットの中で在仏ベトナム人監督やスタッフたちによって再現されたサイゴンで、一人の女性の生涯を淡々としたリズムで語った一編。監督のトラン・アン・ユンは幼い頃フランスに移住し、リヨンの映画学校を卒業。本作品ではカンヌ国際映画祭で新人監督賞を獲得し、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。製作はアアドリーヌ・ルカリエとアラン・ロッカ、エグゼクティヴ・プロデューサーはクリストフ・ロシニョン。撮影・照明はブノワ・ドゥローム、録音はミシェル・ギファン、美術はアラン・ネーグルが担当。出演は、幼いムイに、リュ・マン・サン、成熟したムイにはトラン・ヌー・イェン・ケーが当っている。ムイを雇う一家の母にトルゥオン・チー・ロック、父にトラン・ゴック・トゥルン、年老いた女中ティーにグエン・アン・ホア、そしてムイの憧れの対象クェンにヴォン・ホア・ホイが扮している。ほとんどの俳優がフランス在住のベトナム人で映画初出演。

(映画.comより)

予告編

青いパパイヤの香り

感想・考察(ネタバレなし)

ベトナム生まれフランス育ちの監督、独特の感性

まずは「青いパパイヤの香り」というタイトルが絶妙。
なんだか昭和の歌謡曲みたいな感じ。その後、島谷ひとみがカバーしてそうな。
それではお聴き下さい!島谷ひとみさんで「青いパパイヤの香り」!
うーん、違和感ないな。

いや、それだけじゃなくて、このタイトルの語感は、ほんのりエロそうな感じもするし、文学っぽさもある。つまり、エロかしこい。いや、違うか。

実際に「青いパパイヤの香り」のような日々の生活の中にあるふとした美しさを愛でるのがこの映画だと思う。日常のごく微細な変化に美を見い出す日本人の感性に近いんじゃないかと。俳句を嗜む人には合うかも。

監督は12歳でベトナムからフランスに亡命をしたトラン・アン・ユン。旅行雑誌「TRANSIT」のベトナム特集号での彼のインタビューにはこのようなことが書いてあった。

貧しくても日常生活に美は潜んでいますし、美はどこにでも転がっています。ベトナムでもフランスでも、どんなに汚いところにあっても美を見出し、そこに目を向ける姿勢は昔から変わりませんでしたね

TRANSIT 38号より

決して物語で魅せる映画ではない。
合わない人にとっては「だから、どーした」という印象しかないと思う。

でも、監督のインタビューを読めば、この映画のことをスッキリ理解できるんじゃないかと。
逆に言えば、ただそれだけの映画でもある。趣があることが本作にとっては重要で、物語は二の次だ。

映画『青いパパイヤの香り』の一場面

© Lorber Films

ほんのり香り立つ微エロス

本作のタイトルがほんのりエロいと書きましたが、それは恐らく少女が大人の女性になることをパパイヤに例えているからだと思います。

パパイヤは青いときは野菜とみなされ、
熟したときにはじめて果物となる

『青いパパイヤの香り』日本版予告編より

本作はまさに10歳の女の子が大人の女性へと成熟していき、男性と愛を交わすようになるまでが描かれています。その間のふっと匂いたつような微エロスが特徴でもあります。

主人公のムイちゃん(10歳)は幼いながらも使用人として健気に頑張る。ゆっくり食事もできないほど忙しいのに、食事はそっちのけでアリさんを見て微笑む優しく純朴な女の子だ。ベトナム版、朝ドラの主人公ってとこかな。日本人としてはつい応援したくなる。

僕は子役を褒めることは滅多にないのですが…ムイちゃんを演じた子はめっちゃ可愛いです!
子役にして、このほんのりとした色気はどうだ(誤解のなきよう)。演技の自然さから言っても、過去最高の子役ではないか。

映画の後半は10年後のムイちゃんの恋が描かれるけれど、この女優がまた綺麗なんですわ。
服を着たまま水浴びをするシーンがまたほんのりエロい。しかも、2回もある。

ちょっと、監督!「日常に潜む美を見い出す」とか格調高いことを言いながらも、「日常に潜むエロス」にもご熱心じゃないか。監督のスケベ!!(褒め言葉)

※実際には直接的なエロ描写は一切ありません。エロいと思えばエロく見えるというだけのことで、観る者の心が問われる映画です。

(画像はIMDbより引用)

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

何とも趣のある作品ですが、作り手が何を描こうとしているのか読み取ることに楽しみを見い出せる映画でもあります。

どうでも雑感

・あと、すごいなぁと唸ったのはカメラワーク。普通、カメラの裏側はカメラマンや監督やスタッフさんが大勢いて、というイメージが湧くのだけど、本作はカメラの裏側に人がいる気がしない。つまり、画面に映ってない部分にもこの映画の世界が続いているような感じがするんですね。これはすごい。
セット撮影で、人物の動きを追う長回しが多いのだけど、あまり細かくカットを割らないからそんな効果があるのかも。

鑑賞方法

『青いパパイヤの香り』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
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