『スカイライン-征服-』感想:ラスト5分は頑張ったご褒美(ボンクラ向け)

映画『スカイライン征服』の一場面 SF
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本作は世間での評判が悪いようですが・・・・めっちゃええやん!
という訳で以下、絶賛の感想です。

タイレンジャー
タイレンジャー

評価が低いなんてホントに意味が分かりません。

作品概要

原題:Skyline
2010年/アメリカ/94分
監督:グレッグ・ストラウス/コリン・ストラウス
脚本:ジョシュア・コーズ/リアム・オドネル
撮影:マイケル・ワトソン
音楽:マシュー・マージェソン
出演:エリック・バルフォー/スコッティ・トンプソン/ブリタニー・ダニエル/デヴィッド・ザヤス/ドナルド・フェイソン ほか

「タイタニック」「ターミネーター3」ほか多数のSF作品においてビジュアル・エフェクトを手がけ、「AVP2 エイリアンズ VS. プレデター」で長編監督デビューを果たしたコリン&グレッグのストラウス兄弟の長編第2作。ある夜、ロサンゼルス上空に突如として巨大宇宙船が現れ、人間たちを吸い上げていく。人類は謎の異星人たちに立ち向かうが……。

映画.comより)

予告編

映画『スカイライン-征服-』予告編

感想・考察(ネタバレなし)

大人になったストラウス兄弟

監督は『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』で正統なるボンクラ魂を見せつけたストラウス兄弟。散々な評価を受けた「AVP2」の反省を生かしてか、本作はかなり抑制の効いた大人の仕上がりに。

とにかく人間描写がトンチンカンだった『AVP2』に比べると、人間の描き方は上手いとまでは言わなくとも、かなりマトモに。元がヒドイだけに、これは飛躍的な向上。(トンチンカンなのに傑作と思わせるあたりが『AVP2』の凄さでもあるが)

話はエイリアン侵略ものだけど、舞台を高級マンションだけに絞ったのも良かった。情報が遮断された中で右往左往する主人公たちの視点のみで描かれるので、荒唐無稽な話のなかにも一定のリアリティが。

あと、『AVP2』では「画面が暗すぎる!」とボロクソに言われた兄弟。今回は明るい昼間のシーンばかりです!誰が何をしているかもちゃーんと見えます。やっぱり今回はキッチリ修正してきなぁ。

ストラウス兄弟が急激に上手くなったのか?スタッフがみんな優秀なのか?とにかく「AVP2」に比べたら映画として格段に上手くなっていて驚くばかり。

映画『スカイライン征服』の一場面

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「そして父になる」系の話

意図的に分かりにくくしていると思うけど、本作のベースは「父親としての責任感に欠けるダメ男が、未曾有の危機に直面して、父親としての自覚に目覚める」というパターンのものです。

冒頭では思いやりのある男のように描かれていた主人公。しかーし、いざ恋人の妊娠が発覚した時の残念すぎる反応に、観ている方も「ダメだこりゃ」となって、異星人襲来後はほとんど良いところなし。見た目はイケメンだが、まだ真の男ではない、と。

途中から主人公よりも遥かに頼りになる存在が登場し、まるで主人公に対して父親のように「現実を見ろ」とか「考えは無いのか」とダメ出しをすることからも主人公のダメダメっぷりは明らか。

で、この「大人のご意見」に対して主人公は逆ギレしちゃって「海なら安全だ〜!」とまるで根拠のない計画を主張するもんだから、呆れるばかり。

なので、「劇中での主人公の言動にイライラする」という感想が多いのは当然のこと。だってまだ大人の男じゃないんだから。ちゃんと物語上の意図があるんですよ、これには。

さて、そんなまるでダメ男ですが、逆ギレ以降、様子がおかしくなって、火事場の馬鹿力を発揮。そして遂には真の男になります。夫として、父親として完全に目覚めた状態になるんですわ。

表面上の話は異星人侵略もので、その背後にあるのはダメ男が真の父親になるまでという物語、というのが本作の構造。正直、この「そして父になる」系統というのはよくあるパターンの話。だからこそ、その点を控えめに描いたのが粋だなぁと。『新感染 ファイナル・エクスプレス』みたいにその話をゴリ押されるとちょっと凡庸になってしまいがちなので。

人間を描けるようになったストラウス兄弟はやっぱり大人になりましたなぁ。

映画『スカイライン征服』の一場面

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ラスト5分、いろんな意味で大逆転!


①ボンクラなストラウス兄弟が大人になった
②主人公の男はまだ大人(父親)になる覚悟ができていない

ということを書きました。

ところが、最後の5分くらいで①と②がひっくり返ります!物語上も予想を上回るサプライズ展開なのですが、それ以上にスゴイのが、監督と主人公の立場が逆転するんですね。ダメ男だった主人公が見事に「父親」になる一方、それまで堅実な演出を見せていたストラウス兄弟の大人の壁が一気に決壊してボンクラ臭がドバーッと笑笑。

(観てない人にとっては一体なんのことやらって話ですけど…)

たぶん、監督が本当にやりたいのはこのラスト5分で、映画全編がこの5分の為の壮大な伏線だったのかと。ラストから逆算して物語を考えたんじゃないかと思うと、ストラウス兄弟、天才かよとすら言いたくなってきます。

主人公の成長と監督の精神年齢が反比例するという構成はかなりトリッキーだけど、見事としか言いようがない。

人によってはこのラストを「アホくさ…」の一言で片付けるかもしれない。でも、90分間、見事に大人の仕事を見せてくれたストラウス兄弟が「最後の5分くらい好き勝手に遊ばせてくれ!」と言っているようで、微笑ましいんですよね。まるで子どもが「頑張ったご褒美」にはしゃいでいるようで。

こんな具合に、作り手の想いを勝手に解釈するのが楽しいし、95分間しっかりエンタメしている良品でもあるので、もっと評価されるべき一本だと思いマス。

僕の評価

9点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

ボンクラ男が真の男になるまでの成長物語に、【変身】要素を重ねたのがイイのです!

どうでも雑感

・エンドクレジットで使用されているテーマ曲は90年代ヘヴィロック風でちょ〜カッコイイ〜!(微妙にダサいところも好き)

鑑賞方法

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