『スリー・ビルボード』感想・考察:作り手もある意味、差別的なのでは?

映画『スリー・ビルボード』の一場面 ドラマ
(C)2017 Twentieth Century Fox
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僕はこの映画が嫌いです。評価される理由は何となく理解できますが、主に2つの理由から本作に好意的にななれなくなりました。

タイレンジャー
タイレンジャー

本当に良い映画かどうか怪しくなってきたかも。

作品概要

原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
2017年/イギリス/116分
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
撮影:ベン・デイビス
音楽:カーター・バーウェル
出演:フランシス・マクドーマンド/ウッディ・ハレルソン/サム・ロックウェル/アビー・コーニッシュ ほか

2017年・第74回ベネチア国際映画祭で脚本賞、同年のトロント国際映画祭でも最高賞にあたる観客賞を受賞するなど各国で高い評価を獲得し、第90回アカデミー賞では主演女優賞、助演男優賞の2部門を受賞したドラマ。米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。娘のために孤独に奮闘する母親ミルドレッドをフランシス・マクドーマンドが熱演し、自身2度目のアカデミー主演女優賞を受賞。警察署長役のウッディ・ハレルソンと差別主義者の警察官役のサム・ロックウェルがともにアカデミー助演男優賞候補となり、ロックウェルが受賞を果たした。監督は「セブン・サイコパス」「ヒットマンズ・レクイエム」のマーティン・マクドナー。

(映画.comより)

予告編

アカデミー賞有力!映画『スリー・ビルボード』予告編

感想・考察(ネタバレなし)

アカデミー賞、必勝メソッド?

「アカデミー賞、狙っています」感が強いなぁっていう印象。 

確かに脚本がよくできた良作なんですよ。俳優の演技も良いし、作品が発する問題提起力も強い。

でも、狙いすぎな所が好きになれない。 

本作の肝は「人間のギャップ」。人間は必ずしも一面だけで語れるものではない。一般的な印象とは異なる一面は誰でも持っている。差別主義者が実は心優しい繊細な人だったり、人望の厚い人格者が裏で悪事に手を染めていたり。そういう「それまでの印象とは真逆の一面が見えるとき」って、映画としてカタルシスがある展開だと思うんです。 

例えば、『ホーム・アローン』の人殺し疑惑のある隣の怖い爺さんが実はいい人だったとか。

または俳優のイメージを逆手に取るパターンもあって、デンゼル・ワシントンが悪役を演じるとギャップがすごいとか。 

こういう「人間のギャップ」に特化した映画と言えば、『アメリカン・ビューティー』や『クラッシュ』(クローネンバーグじゃないほう)がそうだ。しかもどちらもその年のアカデミー作品賞。  

 『アメリカン〜』はこの手法が突出して上手くて、これ以上はないくらいの傑作だと思う。後発の『クラッシュ』はその手法に乗っかり過ぎた感があって好きになれなかったけど。 

でも、この手法がアカデミー賞においては評価される傾向にあるのは間違いない。 本作は『クラッシュ』と同様に、その点を狙い過ぎた感がある。あざといなぁ。

同時に、世相を反映する問題提起があるのもいかにもアカデミー賞向けだと思う トランプ政権になった途端、差別問題に意識的な映画が増えた気がする。ハリウッドはリベラルが多いらしいからな。 

問題提起の内容は置いておいて、天邪鬼な僕はそういう「賞狙い」がどうしても好きにはなれない。『タイタニック』だって大嫌いだ。ジェームズ・キャメロンは本当に作りたかった映画なのだろうけど、アカデミー賞狙いの魂胆が見えすぎていて興ざめだった。

映画『スリー・ビルボード』の一場面

(C)2017 Twentieth Century Fox

作り手の悪意が気になる

登場人物に目を向けると、フランシス・マクドーマンド演じる暴走オバハン(オバサンよりもオバハンの方がしっくりくる)、いくら何でも暴走しすぎだろ。後半、あまりに常軌を逸した行動にでるので、ポカーンとしながら観ていた。感情移入するのは難しい。何なの?このオバハン、って感じで最後まで呆れながら。 

それから、サム・ロックウェル演じる警官がバカなのは分かるけど、その描き方はやり過ぎかと思う。差別主義者の保守系白人=バカ、というバイアスが強すぎるので、もう少し加減した方がバランスが良かったと思う。仕事中にマヌケな表情でABBAを聴きながらフンフンフーン♪なんて言ってるシーンはちょっと作り手の悪意を感じて嫌な気分になった。 

暴走オバハンの元旦那が19歳のピチピチギャルと付き合っているのだけど、その女もバカ。だけど、これまた悪意たっぷりに意地悪く描くもんだから、笑えない。この娘のことを随分とイジる割に、この娘の意外な一面は描かれず、「世間知らずのバカ」のまま終わってしまう。 

バカは仕方がない。でも、バカを晒し物にするような作り手の姿勢が僕には合わなかった。 結局、作り手が「リベラルの上から目線」になっちゃってる気がする。彼らが米国の保守系に対して同じ米国民として絶望していて、彼らに憎悪に近い念を持っているのは分かるけど、観ていて気持ちの良いものではなかった。

リベラルがこんなことやり出したら保守系の反感は強まり、米国内の分断は益々深まるだけだ。 「憎しみは憎しみを生む」という本作の1つのテーマがあるけど、作り手がそれをやっちゃってるのはどうかと思うんですよねぇ。 

何度も言うけど、脚本も、俳優も良くて、出来のいい映画。でも、作り手の姿勢には大いに疑問がある。頭イイけど、嫌な奴って感じかな。この映画は。

(画像は映画.comより引用)

僕の評価

4点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

よく出来た映画ですよ。でも嫌いです。

どうでも雑感

・やっぱり僕はウッディ・ハレルソン演じる警察署長がなぜあんな行動をとってしまったのか、納得がいきませんでした。家族を想うならそんなことはしないだろうに。

鑑賞方法

『スリー・ビルボード』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
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