『カルネ』【鬼才】ギャスパー・ノエの不気味な狼煙

映画『カルネ』の一場面 ドラマ
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本作は日本で公開された当時はミニシアター界隈ではかなり話題になっていたと記憶しています。

近親相関を匂わせるような内容に目が行きがちですが、実際にはギャスパー・ノエの独特かつ類稀なる演出センスを存分に味わうことができる映画です。

作家性の強いクリエイターの作品はデビュー作から順番に鑑賞していくのを個人的にはオススメしているので、ギャスパー・ノエ特集は本作からのスタートです。

タイレンジャー
タイレンジャー

・・・デンッ!

作品概要

1991年製作/フランス
原題:Carne
配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
監督・脚本:ギャスパー・ノエ
撮影:ドミニク・コリン
音楽:アフマド・バカエフ
出演:フィリップ・ナオン/ブランディーヌ・ルノワール/フランキー・バン ほか

フランスで公開されるや若者たちを熱狂させ、ナイト・ムービーとしてロングラン・ヒットを記録したカルト映画。近親相姦を思わせる父と娘の異様で残酷な関係を、フェティシズムとブラックユーモア、リリシズムに満ちた退廃的な映像と大胆で挑発的なモンタージュで綴っている。監督・脚本は63年生まれの新鋭ギャスパー・ノエ。製作・編集はリシャール・アジアリロヴィック、録音はオリヴィエ・ル・ヴァコン。不気味な血の色を基調にした撮影(コリン・カラー)はドミニク・コリン。出演はフィリップ・ナオン、ブランディーヌ・ルノワール、フランキー・パン、エレーヌ・テステュら。91年カンヌ国際映画祭・国際批評家週間賞をはじめ数々の賞を受賞。本作に心酔したアニエスb.のプロデュースで、現在続編というべきCarne Integraleが製作中。

映画.comより)

予告編

『カルネ』 予告編

感想・考察(ネタバレなし)

既存のモラルを覆す鬼才、ギャスパー・ノエ監督の処女作にして、彼が世界との戦いの始まりを告げる狼煙(のろし)のような一作、といったところでしょーか。 

僕はノエの映画は『アレックス』(2002)しか観たことがなく、それはあまり印象に残らなかったのですが、よくよく考えたら僕が好きそうな題材の作品が多いようなので、これを機に襟を正してノエ作品を鑑賞しようかと思った次第です。

鬼才は本作の冒頭から衝撃的な画を叩きつけてきます。まずは馬の屠殺。空気銃のようなもので馬の脳天をかち割って、首の動脈を切ります。おびただしい量の血が地面を赤黒く染めていく様子は、どう見ても本物の馬でしょう。 

続いて、赤ちゃんが産まれる瞬間。これも本物と思われます。いきなり「死」と「生」を生々しくドキュメンタリー調の映像で見せつけられるというわけです。「こんなん当たり前でしょ?」とばりに。 

物語の本筋。男手ひとつで思春期の娘を育てる馬肉屋のオヤジが主人公ですが、その養育の様子は世間からはズレています。 中学生くらいの年齢の娘をメリーゴーランド風の馬の玩具に乗せたり、 風呂では手取り足取り身体を洗ってやって、服まで着させてやるという。娘が幼い頃の習慣からそのまま来てしまった感じなのですね。 (オイオイ…) 

それでいて、胸だの脚だの、娘の体つきの変化には気づいており、オヤジはエロい目線になりつつあります。 

そもそもこのオヤジは社会のド底辺にいる孤独な男です。仕事は黙々と馬肉を切っては売るだけ。酒を飲み交わす友人もいないし、女性はセックスの相手でしかない。そばにいるのは口のきけない娘ただひとり。 

この危なっかしい状況の中、事件が起きるんですね。 しかし、劇的な展開とかではなく、やるせなさと共に物語はしぼんでいくようなエンディングを迎えます。 

正直、この物語うんぬんよりも、その殺伐とした雰囲気や映像、音響などに目が行きます。本作はテーマや物語よりも、「ノエのスタイル」を観る映画のような気がします。 

上映時間わずか40分の中編でかつ続編の『カノン』に話は続くので、どうしても物語としてはこれ一本で括れる感じではなく「後編に続く」という印象が強いです。 だから、物語とテーマにおいて本作単体だけで評価をするのは難しいと思いましたね。続編『カノン』にはまだまだ隠し球がありそうで楽しみです。 

で、前面に出ているノエの演出スタイルについて。 まず音が独特です。カットが切り替わるときに画面が暗転し、デンッ!という低く重い音がしばしば入ります。これ、すごく耳に残ります…。 

撮影に関しては意外にも構図が綺麗ですね。色味もいいです。全体的にセピアがかったようなトーンに、ところどころ馬肉や血を彷彿とさせる赤が効いています。 

 そして意表を突くカメラワーク。その際、バコーン!という仰々しい音まで付いています。思わず「今のはなんだ!?」と思わずにはいられません。 

ノエは画と音に関しては独特のセンスを持っており、本作はそのデモンストレーションのような印象の作品です。この監督がこれからどんな映画を撮るのか観てみたいっ!と思わせるには十分な才気が漲っています。 真価が問われるのは次作『カノン』だと思いますが、どんなもんでしょ。

僕の評価

7点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

いや~!今後の作品が楽しみですね~!ノエの演出スタイルにすっかり魅了されました。

どうでも雑感

・今回改まってノエのことを調べたら本当に作品数が少ないんですよね。『アレックス』から次作までは7年もブランクがあるし。映画ファンの間ではその名が知れ渡っているのに作品はあまり観られてない人かもしれませんね。内容がドギツイという評判が一人歩きして、食わず嫌いの観客が多いのかなぁと。果たして実際はどんなもんだろうかと、これから数作を観て解き明かしていきたいなと思っています。

鑑賞方法

あいにく2020年11月時点で『カルネ』はVODによる動画配信されておりません。

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

ギャスパー・ノエ監督作品

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