『今日も嫌がらせ弁当』邦画論!根性で感情に訴えるのが邦画

映画『今日も嫌がらせ弁当』の一場面 ドラマ
(C)2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会
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カンボジアにて開催されたJapanese Film Festivalにて鑑賞。 

今年はコレと言って観たい作品が無かったので、とりあえずFilmarksで評価が高かった本作を選んで観た次第。 

これが良くも悪くも日本らしい映画でして、日本の文化、価値観、精神性を世界に広めるというイベントの趣旨には見事に合致していると思いました。


タイレンジャー
タイレンジャー

でも、邦画の悪い部分は目立ってしまっています。

作品概要

2019年製作/106分/G/日本
配給:ショウゲート
監督・脚本:塚本連平
原作:Kaori(ttkk)
撮影:柳田裕男
音楽:羽深由理
出演:篠原涼子/芳根京子/佐藤隆太/松井玲奈/佐藤寛太 ほか

シングルマザーの母親と反抗期の娘が弁当を通じて交流する様子をつづり、ブログから書籍化もされて人気を集めた同名エッセイを、篠原涼子と芳根京子の共演で映画化。自然と人情が豊かな八丈島で、次女の双葉と暮らしているシングルマザーの持丸かおり。幼いころは「大人になったらお母さんと一緒にレストランをやる」と言っていた双葉も、最近ではすっかり反抗期に突入し、生意気な態度で何を聞いても返事すらしない。そんな娘への逆襲にと、かおりは双葉の嫌がる「キャラ弁」を作り続けているのだが、やがてそのお弁当は、会話のない娘への大切なメッセージへと変わっていく。母親のかおりを篠原、反抗期の娘・双葉を芳根が演じるほか、佐藤隆太、松井玲奈、佐藤寛太が共演。「僕たちと駐在さんの700日戦争」「レオン」の塚本連平が監督・脚本を手がけた。

映画.comより)

予告編

ムカつくけど愛おしい『今日も嫌がらせ弁当』本予告

感想・考察(ネタバレなし)


本作の中でキョーレツに日本らしさ、邦画らしさを匂わせたのは根性が感情に訴えるという点。 

映画のクライマックス、母親は病魔に倒れますが、何としても娘の卒業式用のお弁当を作ろうと、病院を抜け出します。絶対安静という医師の忠告を振り切って。 たとえ他に合理的なやり方があろうとも、大きなリスクを伴うとしても、根性論で成し遂げるのが美徳、という訳です。 

さらに、満身創痍ながらも、ど根性で気力を振り絞る姿が観客にとって「感動的であるのが当然」とも解釈できる価値観が本作にはあります。 確かに、古くから日本人は合理性よりも根性論を好む傾向がありました。 

心頭滅却すれば火もまた涼し 
欲しがりません、勝つまでは 
思いこんだら試練の道を 

そんな背景をさらに推し進めたのか、「根性」が「論理や理屈といった現実」を凌駕し過ぎてしまう瞬間があるのが邦画の特徴ではないでしょーか。 

近年の『トリガール』や『ミックス。』といったスポーツ映画にはこの傾向が見られます。スポーツにおいて、事前準備や戦術といった現実的な要素よりも「ど根性」のほうが優位である、とされてしまうことが。

 (もちろん、邦画と言っても一括りにできないほどの多様性はあるかと思いますが) この根性至上主義はいかにも日本らしいです。 

本作で言えば、「一週間は安静に」と言われた母親が早々に病院を抜け出して弁当を作り出す行動がそれです。 安静と弁当作りをふるいにかけて、どちらを選択するかは人それぞれですが、弁当づくりを選ばせるだけの説得力は本作には乏しい気がします。 

と言うのも、結局は「大きな感動」を生むためには「ど根性」が必要で、「相応の逆境」として病気が逆算設定されているだけですから。つまり、本作での病気は根性論の強度を高めるための装置なだけです。 あと、僕は医者の言うことを聞かない人が嫌いというのもありますがね。 

嫁(カンボジア人)に感想を訊いたら「面白かった。でも、病気の人はあんなに頑張らなくても良い」とのこと。 カンボジア人から見たら、あまりにも頑張りすぎる日本人の姿は少し奇異に映ったのかもしれません。 

もう一つ、邦画ならではだったのが、音楽が(必要以上に)感情に訴える点。 悲しいシーンでは、登場人物がわざわざその悲しみを台詞で説明する上に、必要以上に感傷的な音楽が塗り重ねられます。ピアノとストリングスの分かりやすいやつが。 まるで「ここは悲しい場面ですからね。くれぐれもお間違えのないように」とばりに過剰な泣かせ誘導が入ります。 

台詞で説明する上に、音楽も説明的なんですね。 日本人は思いやりと察しの文化があるにも関わらず、そこは説明過多になってしまうのは無粋だなぁと思わずにはいられません。 

あ、でも前半はテンポ良くて楽しかったですよ。

僕の評価

4点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

こういうのがあったりするから邦画は苦手。。。

どうでも雑感

・結局、今年のJapanese Film Festivalで観ることができたのは本作のみ。 席は7割くらいは埋まっていたかと思います。相変わらずリアクションの良いカンボジアの若い観客たちで、「ハッハッハ!」とか「きゃあ♡」とか歓声が飛び交うのですが、 本作の中で、 

スギちゃん 
小島よしお 
ダンディ坂野 

などがネタ的に登場すると、 場内が静寂に包まれる のは日本人として若干、気まずかったです笑。 

鑑賞方法

『今日も嫌がらせ弁当』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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