『娼年』感想・考察:【爆笑】アゲ♂アゲ♂自己啓発映画

映画『娼年』の一場面 ドラマ
(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会
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映画館で観なくて本当に良かった…。

きっと笑い転げるのを耐え、踊り出してしまわないように自制するのが大変だったと思う。
と、書けばノリノリのミュージカルコメディのことかと思うじゃないですか。でも、これが僕の本作に対する感想なんです。

セックスを生々しく描く暗ーい映画なのかと思いきや、全然そうじゃない。コントのように笑え、ライブのように気分が高揚し、甲子園のように応援したくなるエンタテインメント性の高い映画だったんですねー。

タイレンジャー
タイレンジャー

それはお前の感性がゲスいからだ?果たして本当にそうでしょーか?

作品概要

2018年製作/119分/R18+/日本
配給:ファントム・フィルム
監督:三浦大輔
原作:石田衣良
脚本:三浦大輔
撮影:Jam Eh I
音楽:半野喜弘 RADIQ septet
出演:松坂桃李/真飛聖/冨手麻妙/小柳友猪/塚健太/桜井ユキ/馬渕英里何(馬渕英俚可)/荻野友里/西岡徳馬/江波杏子 ほか

「娼夫」として生きる男を主人公に性の極限を描いた石田衣良の同名小説を、2015年に上演した舞台版が大きな反響を呼んだ監督・三浦大輔×主演・松坂桃李のコンビで映画化。大学での生活も退屈し、バイトに明け暮れ無気力な毎日を送っているリョウ。ホストクラブで働く中学の同級生シンヤがリョウのバイト先のバーに連れてきたホストクラブの客、御堂静香。彼女は秘密の会員制ボーイズクラブ「パッション」のオーナーで、恋愛や女性に興味がないというリョウに「情熱の試験」を受けさせ、リョウは静香の店で働くこととなる。「娼夫」という仕事に最初は戸惑うリョウだったが、女性たちひとりひとりが秘めている欲望の奥深さに気づき、そこにやりがいを見つけていく。リョウは彼を買った女性たちの欲望を引き出し、そして彼女たちは自分自身を解放していった。

映画.comより)

予告編

4/6(金)公開 映画『娼年』予告篇

感想・考察(ネタバレなし)

人は他人のセックスを笑うもの

まず、あまりに過剰な性描写は笑いを生みます。行われていること自体はAVと大差ないのですが、それをこういうメジャー映画でやられるとギャップで余計に笑えてきます。

笑えると言っても僕は本作をバカにしてるわけじゃないですよ!本来、他人のセックスは客観的に見れば見る程、カッコ悪く、滑稽なものです。人間が他人のセックスを笑うのは当然のことだと思うんですよね。

三浦大輔監督は『愛の渦』でセックスをそんな風に描いていたので、本作でもその眼差しは変わっていません。観る人が大いに笑うのは自然なことです。

だから、本作は自宅で気心知れた仲間たちとワイワイ言いながら観るのが一番楽しいと思います。「あらやだ〜」とか「そんなに激しくしたら痛いでしょー」とか言いながら。実際に映画館にて女性限定で応援上映も行われたというのも納得ですわ。静かに観ろってほうが無理ですよ。(何を応援するかは人それぞれだと思いますが…)

そして、クライマックスでは物語のテンションが最高潮に達すると共に、ズンドコズンドコとやたらのノリのいい音楽が流れます(笑)。これが本当に踊らずにはいられない!腰にくる感じでもう、画面上の盛り上がる展開も相まって「うぇーい!!」と声を出してしまいそうになるんですー。

後ろめたそうな内容の割には、観る者をアゲ♂アゲ♂なリアクション王にさせてしまう効力が本作にはあります。場面によってはかなりの高揚感をもたらすと言ってもいいでしょう。

この高揚感に貢献度大なのが半野喜弘氏が手がける音楽でしょう。モンドグロッソみたいな良い意味で俗っぽいジャズのような曲が多いんですが、映画に勢いと躍動感をもたらしています。

映画『娼年』の一場面

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

セックスはただの切り口に過ぎない

物語や構成も良く出来ています。きちんと主人公の成長が描かれているし、あらゆる伏線にも落とし前をつけています。こういう過激な題材と描写の映画って話が支離滅裂になりがちなんですが、全然そんなことがない。話自体がしっかりしていてテンポも良く全く飽きることがありませんでした。

そう。性描写の連打に目が眩んでしまいそうですが、本作には真に見るべき物語やテーマがあります。セックスはただの切り口に過ぎません。ざっくり言うと、コミュニケーション論とか、その先にある仕事論とかというテーマになってくると思います。

相手の気持ちを推し量りたくても、男は性欲のほうが先立っちゃうもんです。でも、性欲を解消する時・した後も、相手を受け入れることだったり、互いに向き合うことを説く映画ですな。劇中の台詞「ふたりですれば素敵なものを…」の通りですね。

三浦大輔監督も「セックスの後に本当の男女のコミュニケーションが始まる」って言ってますし。

仕事論に関しては「人の期待に応えるのが仕事」という15年前に上司にかけられた言葉を思い出しました。本作でもそんなことを教わるとはなぁ。


だから、変な解釈をしなければ、(男は)学ぶべき点が多いはず。ある意味では自己啓発映画ではないでしょーか。『ファイト・クラブ』なんかもそうですが、過激でありながらも理路整然としたメッセージが込められた映画は自己啓発ものとしての強度が高いですよね。

本作は特に、日本の若い男に観て欲しいですね。四六時中セックスしたいという人も、恋愛メンドクセーなんて人も全てひっくるめて。きっかけはエロ目的でも良いです。ただ、表面的に観るのではなく、本作が発するテーマを読み取ってほしいのです。

僕の評価

8点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

てっきり湿気の多い話かと思っていたんですが、パキッと竹を割ったような明快な話でしたね。しかもめっちゃ笑えるし、盛り上がる!

どうでも雑感

・冨手麻妙ちゃんはムッチリめで可愛かった。出てくる女優さんたちはみな素敵です。

鑑賞方法

『娼年』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルキャンペーンがあるのでぜひ。

U-NEXT

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

『娼年』はTSUTAYA TVで鑑賞できます。30日間お試し期間があるのでぜひ。

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はTSUTAYA TVサイトにて
ご確認ください。

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