グラビアアイドル小倉優香(ぐらちゃん)からも好かれるギャスパー・ノエ監督作品。
性のタブーに挑む作品が3D上映だなんてワクワクする企画の映画ですが、決して「エロ」に惑わされてはいけません。エロは表現なだけで、本当に描きたいことは別にあるからです。

愛と情欲を混同してしまいがちな若者たち、そしてかつてはそうだった人たちに向けた作品だと思います。
作品概要
2015年製作/135分/R18+/フランス・ベルギー合作
原題:Love
配給:クロックワークス
監督・脚本・編集:ギャスパー・ノエ
撮影:ブノワ・デビエ
音楽:ケン・ヤスモト
出演:カール・グルスマン/アオミ・ムヤック/クララ・クリスティン/ジョアン・サアベドラ/ヴィンセント・マラベル ほか
「アレックス」「エンター・ザ・ボイド」の鬼才ギャスパー・ノエが、若者たちの情熱的な愛を大胆な性描写を交えながら3D映像で描き、カンヌ国際映画祭で物議を醸した異色のラブストーリー。1月1日の早朝。若い妻と2歳の子どもと暮らすマーフィーのもとに、元恋人エレクトラの母親から留守番電話が入る。エレクトラはずっと行方不明のままで、母親は彼女から連絡がないか知りたがっているのだ。外で雨が降りしきる中、アパートにいるマーフィーはエレクトラとの駆け引きに満ちた濃密な2年間を思い返していく。カール・グルスマン、アオミ・ムヨック、クララ・クリスティンら新人俳優たちが体当たりで役を演じきった。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
節操なき性描写の連打
本作、全体の7割くらいは性描写です。手コキ、3P、青姦、乱行パーティー…とまるで現代のカーマ・スートラのようにありとあらゆる性行為が詰め込まれています。
しかも、劇場公開時はこれが3D上映だったというではありませぬか。今回僕は通常版で観たので3Dの効果の程は分からなかったのですが、それでも最も強烈に3D感を味わった場面は、男性器が画面(観客)に向かって精液を飛ばすというとんでもないものでした。観客にピュッピュッとぶっかけるとは流石はノエ。
ちなみに、このシーンは主演俳優が実際に射精した様子をカメラに収めたそうです。しかも撮影初日に。あの精液はCGじゃなかったのか…。奥さん、これは事件ですよ。
実際にノエの言葉を拾うと「当初は3Dポルノを作ろうと思っていた」とのこと。実際にその名残ではと感じさせる場面もいくつかあります。
しかし、その言葉を真に受けるべきではないでしょう。ポルノか、芸術か、で言ったら本作は100%後者です。 ポルノ並みに性描写がふんだんにあっても、それらは完全に飽和状態にあり、逆にエロさを感じなくなるような効果があります。
また、そもそも本作の性描写の目的が何かと言ったらポルノとは異なることは明白です。 過剰なセックス三昧(表現・手段)を通して何を描くのか、どのようなテーマを浮き彫りにするのか(目的)という点を観客は嫌でも意識せざるを得ないのではないでしょーか。
(C)2015 LES CINEMAS DE LA ZONE . RECTANGLE PRODUCTIONS . WILD BUNCH . RT FEATURES . SCOPE PICTURES .
若者同士のありふれた拙い恋愛
浮き彫りになったテーマのひとつは、若さゆえの拙い恋愛ですかね。
まず、主人公のマーフィーがクズ男です。自分が浮気したことは棚に上げるくせに、彼女の浮気は徹底的に追求。その浮気相手の男を相手に暴力を働いて警察沙汰。そのくせ彼女にフラれたら人目をはばからず泣き出すし。も〜後先考えない自己チューなガキですよ。 きっと女心をくすぐらないタイプのダメ男。コイツは説教部屋行きだな。
それに対して相手のエレクトラは随分と大人の女性に見えます。それどころかマーフィーに対する母性愛のようなものまで醸し出す雰囲気です。客観的に2人を見ると、恋愛経験が少ないけどセックスの探究心に溢れ、自己チューなガキがうんと歳の離れた大人の女性と恋愛をしているように見えますね。
よってマーフィーへの感情移入は困難を極める作品ですが、「若い男なんてそんなもんだろ」とノエに言われているような気がします。多少エキセントリックな性描写こそ多めですが、基本は「ありふれた拙い恋愛」なのでしょうね。 そんな稚拙な恋愛の一例である本作に対し、堂々と『LOVE』と名乗らせるあたりはノエの皮肉と捉えるべきなのかもしれません。
愛は綺麗事ばかりではなく、同時にネガティヴな感情も生み出す。愛のダークサイドの物語なのかなぁと。でも、言語化すると陳腐ですね。
(C)2015 LES CINEMAS DE LA ZONE . RECTANGLE PRODUCTIONS . WILD BUNCH . RT FEATURES . SCOPE PICTURES .
今回のノエには停滞感が漂う
そんなこともあってか、本作はイマイチ僕の心には響きませんでした。さらに言うとノエ自身が作品の方向性を見定められていないような気がするからです。 テーマは理解できるのですが、それを前提にここまでのセックス百科事典にする必要はなかったように感じます。テーマと表現がいまひとつリンクしないという印象です。
性行為の場面でサンタナみたいな情熱的なギターソロの音楽を流したり、カメラワークはやけに安定感があるし、ノエ自身が変化を望んだのでは思わせる節があるのですが、その試みがうまく行ってない感じなのかなぁ。
癖の強い映画監督が過渡期を迎えるとよく分からない作品を作ってしまうということはしばしばあると思いますが、本作もそのパターンなのかもしれません。 それはきっと新しいものに挑戦する「生みの苦しみ」なのでしょう。
でもそんな苦しみを経た後は素晴らしい作品が出来上がることも多々あります。ですので、ノエの次回作『クライマックス』には期待大です。
僕の評価
5点/10点

失恋した男の心情そのままにか、終始ダウナーで気が滅入ることもあるかと思います。
どうでも雑感
・男目線であっても性描写が多すぎるのは飽きるものです笑。個人的には性描写に至るまでの経緯がすごく大事なので、そこを省いて濡れ場ばかりでも…という感じです。大事なのはストーリーですから。最後に2人が出会った頃のシーンが終盤に入って少し持ち直した印象でした。
・まぁ、僕も自分の若き日のことを思えば主人公のことはとやかく言えない立場なのですが。若いうちに恋愛すれば他人の気持ちは考えられるようになりますから、こういう経験も肥やしになりますよねぇ。
鑑賞方法
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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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