『インデペンデンス・デイ』『2012』などで知られる大量破壊のマエストロこと、ローランド・エメリッヒ監督の最新作です。
批評的にも興行的にも惨敗続きのエメリッヒがいまだに大作の仕事を任させることに驚きを禁じ得ませんが、本作の製作背景を考えると、まぁアリなのかなという気もします。

やっぱり最大の見どころは抗日要素?
作品概要
2019年製作/138分/G/アメリカ
原題:Midway
配給:キノフィルムズ
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ウェス・トゥック
撮影:ロビー・バウムガルトナー
音楽:トーマス・ワンカー/ハラルド・クローサー
出演:ルーク・エヴァンス/ウディ・ハレルソン/パトリック・ウィルソン/ニック・ジョナス/デニス・クエイド/マンディ・ムーア/アレクサンダー・ルドウィグ/エド・スクライン/ダレン・クリス/アーロン・エッカート/豊川悦司/浅野忠信/國村隼 ほか
「インデペンデンス・デイ」「ホワイトハウス・ダウン」のローランド・エメリッヒ監督が、第2次世界大戦(太平洋戦争)のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマ。1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官・山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛ける。大打撃を受けたアメリカ海軍は、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかける。そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる3日間の壮絶な戦いが幕を開ける。キャストにはエド・スクレイン、ウッディ・ハレルソン、デニス・クエイド、豊川悦司、浅野忠信、國村隼ら実力派が海を越えて集結。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
本作は太平洋戦争における真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までを、主に米国人の視点で描いています。
敵が先制攻撃を仕掛けてくる(真珠湾攻撃)。
↓
高性能な兵器を有し、入念な準備をしてきた敵を相手に苦戦が続く。
↓
しかし、敵の研究を進め、弱点を発見。
↓
反撃をして大勝利(ミッドウェー海戦)。
…という流れが『インデペンデンス・デイ』とよく似ています。なるほど、エメリッヒの得意パターンか?
では、本作での日本軍は侵略エイリアン扱いなのかというと、そうではありません。 主に米国人の視点ではあれど、日本軍に関しても比較的、公平な描かれ方をされています。
山本五十六を演じる豊川悦司を始め、日本人俳優による日本語の台詞が思いのほか多く、日本に関しては従来のエメリッヒ映画に比べればそんなにトンチンカンな描写も無かったように思います。
例えば、山本五十六が「日本が米国とまともに戦えるのはせいぜい半年、持って一年」という旨の発言をしたり、日本の陸軍と海軍の対立とそれに起因する作戦の優先順位の不一致、戦闘機の爆弾積み替えに要した5分間など、日本がこの海戦に敗北した内部的な要因についてもある程度は触れられています。
エメリッヒ、やればできるじゃん!…と、言って欲しかったのかな?と邪推したくなるような真面目なトーンはやや拍子抜け。その分、従来の作品に比べるとバカ&パワーはやや減退ですかね。
それでもスペクタクル描写はやはりエメリッヒ節で、雑というかご愛嬌というか。
米軍の戦闘機が日本の空母に対して上空から攻撃を仕掛ける場面はちょっとデス・スター侵攻っぽく見えます。
それから、空母の甲板上に描かれた日の丸を狙って爆弾を投下します。わざわざ日の丸をピンポイント爆撃!
これには… 爆・失笑。 だーかーらー、 デス・スターのじゃねぇっつの!
※デス・スターの排熱口にプロトン魚雷が打ち込まれる場面へのマージュなのか?(エメリッヒは無意識にスター・ウォーズを模倣する傾向がある)
※空母の看板に描かれた日の丸は味方を識別する為のものだが、実際に米軍の戦闘機の格好の標的になったのだ、というご指摘あり。
あと、本作で興味深いのは抗日要素ですね。 米軍の長距離爆撃機が東京を空爆した後、乗員が中国にパラシュート降下するんですが、あっけなく中国人に捕まります。
Midway (C)2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.
米兵「私は米国人だ」
中国人「貴様、日本を爆撃したのか…?」
米兵「ああ、そうだ」
中国人「…なんだとぉ…!? (…よくやった!!)」 →ガッチリ握手!
爆・失笑。
敵の敵は味方、というわけですが、この描写はミッドウェー海戦とあまり関係がありません。
しかし、それもそのはず。本作は中国の映画会社が半分くらい出資しているからですね。ハリウッドからすると、中国の会社がリスクを半分担保してくれるからありがたい話ですよ。「なら、エメリッヒでもいっか」と言ったかどーかは分かりませんが。 当然、中国の観客に対するサービスは求められるわけです(もちろん、全ての中国人がこれに喜ぶわけではないですが)。
まぁ、こんな描写もあって一部、中国に忖度した内容になっているもんだから、日本で公開される時は歴史認識を巡って少し騒がしくなるかもしれませんね。
とは言え、そんなマジメに反応するほどの映画でもないでしょう(真顔)。 本作は果たして誰にとって必然があったのか…。政治的に、ビジネス的に、製作者たちにどのような思惑があったのかをアレコレ考えるのは楽しい映画ですが。
僕の評価
4点/10点

まぁ全体的には【平凡】ですね。
どうでも雑感
・エメリッヒお約束の、パイトロット「ふぅぅぅぅぅんっ!!」は本作でも炸裂。 しかも、くどい笑笑。
・それにしても本作はCGがいかにもCGという質感で(フォーカスが甘いような感じと言うか)、そこもまた残念でした。
鑑賞方法
あいにく2020年11月時点で『ミッドウェイ』はVODによる動画配信されておりません。
DMM.comの宅配DVDレンタルにて鑑賞をすることができます。初月は無料です!
※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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