ざっくり言うと、ケヴィン・コスナーの名作『ダンス・ウィズ・ウルブズ』のサムライ版が本作ですね。
アメリカ先住民族を日本のサムライに置き換えたような話じゃないかということです。
ジェームズ・キャメロンの『アバター』もそうです。あれはモロにアメリカ先住民族っぽい異星人の話でした。
『ダンス~』のテンプレートはその後の様々な映画に用いられていて影響力大だな~と。

本作がいかに『ダンス~』の影響を受けたかというお話を。
作品概要
2003年製作/154分/アメリカ
原題:The Last Samurai
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:エドワード・ズウィック
脚本:ジョン・ローガン/エドワード・ズウィック/マーシャル・ハースコビッツ
撮影:ジョン・トール
音楽:ハンス・ジマー
出演:トム・クルーズ/渡辺謙/真田広之/小雪/ティモシー・スポール/ビリー・コノリー/池松壮亮/中村七之助/原田眞人 ほか
かつての南北戦争の英雄、オールグレン大尉は戦争の無意味さに疲弊し、今はアル中暮らし。そんな彼が、近代化を目指す日本の軍隊の教官として雇われて日本へ渡り、国を挙げての近代化の波の中でサムライの生き方を貫こうとする武将、勝元に出会う。 監督・共同脚本はデンゼル・ワシントンにオスカーをもたらした南北戦争映画「グローリー」のエドワード・ズウィック、共同脚本は「グラディエーター」のジョン・ローガン。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』が画期的だったのは、西部劇に「視点の転換」をもたらしたことです。
西部劇と言えば超保守的な映画ジャンルで、従来は一方的に開拓者の視点から描かれた作品のみで、先住民に関してはステレオタイプな描かれ方しかされなかったそうです。少なくとも先住民の視点に立った映画は無かったかと。
ところが『ダンス~』は先住民と同化した開拓者(白人)の目を通して、先住民の精神性・文化などを最大限に理解、尊重したんですよね。加えて、同胞である開拓者たちに対する批判のニュアンスもあったと思います。
初監督作品でもあったケヴィン・コスナーにとっては大きな賭けでしたが、作品は大絶賛でもって受け入れられ、アカデミー作品賞を受賞したのはご存じの通り。映画史的にも重要な一本だったのではと思います。
まぁこのまま『ダンス~』は偉大な映画である、という話で終わらせてもいいんですが(笑)、『ラスト サムライ』に話を移しましょう。
本作もまた他民族(サムライおよび日本人)の精神性・文化の理解・尊重の意向もちゃんと見られます。『ダンス~』と話が似ているだけでなく、米国人が他民族の視点に立つという手法まで模されているわけです。
日本人出演者たちが現場でアドバイスをしていたこともあって、トンチンカンな日本描写はさほど見られません。ハリウッド映画の中では出来がいい部類の日本描写ではないでしょうか。
ビジネスとして日本マーケットを意識した”日本人接待映画”かと思いきや、そういうレベルではなく、ちゃんとリスペクトの念を感じるのです。
ただし、『ダンス~』が無ければ本作も無かったと思うので、半分くらいは『ダンス~』のおかげという気もします。
気になったのは、武士道が極端に美化されている点です。
「主君の為、己の志を貫き通す為なら、死をもいとわない」という点がクローズアップされすぎかな。
サムライたちが主義・信条の為にほぼ全員玉砕する一方、アメリカ人は愛する人の為にちゃっかり生き残ります。
こじつけかもしれませんが、太平洋戦争の勝敗はこの時点で決していたのだなと思わずにいられません。
武士道に最大限のリスペクトを示しつつも、でも最後は「死んじまったらおしまいよ」とか「愛だろ。愛っ」とさらりと主張するあたりは米国らしいですね。
では、本作が映画として単純に面白いのかで言うと、『ダンス~』手法に乗っかった日本リスペクト映画と考えれば、まずまず楽しめます。
ただ、長ったらしいよ。これ。
クドイ描写がとことんクドイです。特にクライマックスでサムライたちが壮絶な最期を遂げる場面。ドラマチックに描こうとしすぎるあまり冗長です。
サッカーのアニメでありがちな、選手がドリブルを開始しても一向にゴール付近まで辿り着かない感じに似ています。
「ここ、アツいシーンですからね~。どうぞしっかり涙してくださいね~」と言われているようで、「泣かせ誘導」の一種かと。
日本リスペクトの念が強すぎるがゆえ?上映時間が2時間半もありますが、少なくともあと15分は短くできると思うんですけどね。
(画像はIMDbより引用)
僕の評価
5点/10点

難しいことを考えなければそれなりに楽しめるけど、とにかく冗長なので減点。
どうでも雑感
・映画としては綺麗にまとまったと思いますが、あんなに都合よくトムだけ被弾しないのもなぁ…とは思っちゃいました。スターのエゴでしょうか。ただ、トムが生き延びることを選択したことで、結果的に日米の命の価値観の違いをうまくほのめかしていますがね。
鑑賞方法
『ラスト サムライ』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。
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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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