こ、これは酷い…。 大スターを起用し莫大な予算を投じた大作ですが、根本的に映画として下手すぎます。 ダメな点を挙げると下記の2点です。
・話の段取りが悪すぎる
・撮影が短調すぎる
あくまで個人的な観点なのですが、今回はこれらについて書いていきますー。

本作がお好きな人は読まないように…。
作品概要
2005年製作/121分/アメリカ
原題:Constantine
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:フランシス・ローレンス
原作:ジェイミー・デラノ ガース・エニス
脚本:ケビン・ブロドビン フランク・カペロ
撮影:フィリップ・ルースロ
音楽:ブライアン・タイラー/クラウス・バテルト
出演:キアヌ・リーヴス/レイチェル・ワイズ/シャイア・ラブーフ/ジャイモン・フンスー/マックス・ベイカー/プルイット・テイラー・ヴィンス/ティルダ・スウィントン/ギャヴィン・ロズデイル/ピーター・ストーメア ほか
鬼才アラン・ムーアのコミック「ヘルブレイザー」を原作に、キアヌ・リーブスがオカルト探偵を演じるVFXアクション。悪魔や天使を見る特殊能力を持つ探偵コンスタンティンは、女性刑事アンジェラと共に彼女の妹の死の真相を探るが……。堕天使役でティルダ・スウィントンが共演。監督はMTV出身で本作が映画初挑戦となるフランシス・ローレンス。撮影は「リバー・ランズ・スルー・イット」でオスカー受賞のフィリップ・ルスロー。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
話の段取りが悪すぎる
僕は2時間の上映時間を通じて、本作の設定と物語がよく理解できないままでした。
確かにキリスト教文化に根づいた設定が多かった為、その点は日本人にとって理解しにくいというのもあります。ですが、その点を差し引いても、説明が下手だなぁと思いました。
単純に言えば本作は、平凡な一般人が現実世界から異世界へと迷い込んでしまい冒険を繰り広げる、という『不思議の国のアリス』方式の話です。ごく普通の日常生活の裏では、壮大で奇想天外な世界が展開されていた!というやつですね。 この方式の応用と思われるのが『マトリックス』で、キアヌ扮するアンダーソンはトリニティ(白ウサギと同じ役割)に導かれて本当の現実世界へと迷い込みます。
『マトリックス』の設定はなかなか複雑ですぐに咀嚼できるものではありません。そのため、いきなりその異世界からスタートするのではなく、日常生活を営む一般人を白ウサギが異世界へ連れ出してあれこれ説明し、観客はそれを追体験するという流れにしてありますね。 モーフィアスはけっこう時間を割いて、例を交えながら丁寧に説明していた印象があります。普通っちゃ普通ですが、物語の段取りとしてはオーソドックスで適切だったと思います。
で、本作も『マトリックス』と同様に複雑な異世界を観客に説明する必要があるのですが、その導き方がスムーズではありません。 本作で言うと、レイチェル・ワイズ扮する女刑事が異世界に迷い込む一般人、キアヌ扮するコンスタンティンが異世界へ誘う白ウサギの役割です。
なので、観客は女刑事の視点で物語を見ていくことが定石になるのですが、本作は逆でどちらかと言うとコンスタンティンの視点で物語を見るように作られています。 謎の男が謎の世界で謎の行動をしているという、よく分からない展開がしばらく続くので、観る側はけっこうしんどいです。ルールを知らないままスポーツ観戦をしているような感じなのですね。
『マトリックス』と同じになっちゃいますが、ここはやはり一般人視点で始めたほうが分かりやすかったのではないでしょーか。 コンスタンティンが女刑事に対して説明をするまでが長いですしね。本編開始後40分経過くらいで説明開始。これはペース配分として遅い気がします。
あと、黒幕の伏線が不十分だったり、何の説明も無いまま終盤になって超強力キャラが登場したりと、「物事には前フリと根回しってもんがあるだろ」と言いたくなる展開の唐突さ、説明不足はけっこう目立ちました。 うーむ、この脚本はなんとかならんのか。
撮影(画作り)が短調すぎる
フランシス・ローレンス監督の作品は『レッド・スパロー』を観たことがありますが、正対・シンメトリーの構図を重視した丁寧な絵作りが特徴だという印象がありました。
映画における正対・シンメトリーの構図と言えば、スタンリー・キューブリックの得意技としてお馴染みです。絵画的な美しさがあり、思わず画面に引き込まれるような効果があります。
いやぁ、デザイン的で超〜カッコイイですね!
でもキューブリックがこの構図を多用したのは単にカッコイイからというだけではないと思います。それは下記を表現するための手段として用いられていると僕は考えます。
1. 画面の奥行き
2. 建築、美術などの様式
3. 整いすぎた画がもたらす不自然さ、不気味さ
→どこか非人間的な冷たさ
これらの演出上の「狙い」は実際に抜群の効果を上げており、モノリスや双子の亡霊の(明らかに非人間的な)異様さが引き立っています。 また、人間の愚かで滑稽な姿を冷めた皮肉っぽい視点で描くキューブリックの作風にもマッチしています。つまり、正対・シンメトリーとは非感情的な画でもあるのですね。
そんなキューブリックの影響を強く受けたのか、本作も正対・シンメトリーを多用しています。ところが、この演出は「狙い」が明確でないのが残念なところで、せいぜい「絵的な美しさ」や「様式を見せる」というくらいの気がします。
(偉大なるキューブリックと比較するのも酷ではありますが)本作のそれは演出意図が弱く、スタイル重視の正対・シンメトリーの構図なわけで、それを2時間の中で極端に連発されるのはなかなか辛いものがありまして…
真正面ドンッ!
真横ドンッ!
真上ドンッ!
…というパターンの画ばかりが続くと、段々と飽きてきます。 しかもその結果、正対・シンメトリーが持つ特徴が悪い方向に作用しています。
1. 絵的には美しいが、多用すると変化の乏しい短調な映像になりがち
2. 整然としすぎているため、動きを表現するアクションには不向き
3. 冷たい印象を与えるため、キャラクターの感情を表現するにも不向き
なので、そもそも正対・シンメトリーは活劇である本作には合わない演出なのですね。
そんな本作の反省?もあってか、その後の『レッド・スパロー』は正対・シンメトリーはある程度は効果的に見せられていて、バランスはかなり改善されているように感じました。フランシス・ローレンス、腕を上げましたね…。良かった良かった。
(画像はIMDbより引用)
僕の評価
2点/10点

設定は面白くなりそうだったのに、脚本と演出という2大要素でしくじった映画でしたね。
どうでも雑感
・ティルダ・スウィントンの中性的なスーツ姿が宝塚の男役みたいでしたね。序盤にチョロっとだけ出て、終盤の忘れた頃に再登場ということでティルダ様の無駄使い感が…。
・あと、キアヌが悪魔と対決する映画なら、『ディアボロス 悪魔の扉』の方が面白いですね。
鑑賞方法
『コンスタンティン』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。
・U-NEXT |31日間無料トライアルキャンペーン実施中

※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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