「金儲けは悪いことですか?」- 村上世彰
本作を観ながら、そんな平成の名言(迷言)が頭をよぎった。
誰もが興味あるくせに、人前では声を大にして言えない、金儲けの話です。

イケナイ金儲け。映画を観て学べるなら安いもんです。
作品概要
1987年製作/126分/アメリカ
原題:Wall Street
配給:20世紀フォックス
監督:オリヴァー・ストーン
脚本:オリヴァー・ストーン/スタンリー・ワイザー
撮影:ロバート・リチャードソン
音楽:スチュワート・コープランド
出演:チャーリー・シーン/マイケル・ダグラス/ダリル・ハンナ/テレンス・スタンプ/マーティン・シーン/ショーン・ヤング/ジェームズ・スペイダー ほか
ニューヨーク・ウォール街を舞台に一獲千金を狙う男たちの世界を描く。製作はエドワード・R・プレスマン、監督は「プラトーン」のオリヴァー・ストーン、脚本はストーンとスタンリー・ワイザー、撮影はロバート・リチャードソン、音楽はスチュワート・コープランドが担当。出演はチャーリー・シーン、マイケル・ダグラス、マーティー・シーン、ダリル・ハンナほか。専門用語監修は寺沢芳男(野村証券取締役副社長)。
(映画.comより)
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
基本的に本作の作り手の思想としては、お金至上主義に対しては否定的です。金の亡者になってはイカンぞと、観るものに真っ当な教訓を与えてくれます。
しかし、そんな作り手のメッセージとは逆の現象が公開後に起きています。
マイケル・ダグラス演じる大物投資家ゴードン・ゲッコーに憧れ、彼のファッションや言動を真似る男性が増え、果ては投資家の道を歩む者までが続出したそうです。
さらに当時バブルに沸いていた日本でもサラリーマンたちが投資に熱中する後押しになったとのこと。
金が金を生むビジネスに没頭しすぎると痛いしっぺ返しをくらうぞと、本作が忠告したにも関わらずです。なぜこんな皮肉な現象が起きたのでしょうか?
それは投資家ゲッコーがカッコ良かったからに他ありません。
高級スーツに、高級車、自家用ジェット機、いい女をはべらせて、巧みな話術に、よく通る声、決断が早く、分刻みのスケジュールをスマートにこなす。
要はビジネスマンとしてのカッコ良さを体現するキャラクターだったんですね。
しかし同時に、ゲッコーは手段を選ばない男で、使えそうな人間をとことん悪用するという二面性を持っています。儲けのためなら(村上世彰と同じく)インサイダー取引にも手を染める人物。
※インサイダー取引とは会社内部の重要情報を知る人間が情報公開の前に株式の売買をする行為で、違法。(本作のおかげで理解できた笑)
野心に燃える若き主人公バドは狡猾なゲッコーにいいように使われてしまうという話なので、ゲッコーは悪役にあたります。しかし、ビジネスマンとしてのカッコ良さが際立っていた為、結果的にレクター博士やジョーカーのように魅力的な悪役になっています。
そう、ゲッコーが持ち合わせているのは悪のカリスマ性ですね。悪いと知っていながらも人々は魅了されてしまうんですよ。中学生がちょっと悪い先輩に憧れるように、ワルな投資家に憧れるのビジネスマンもいるのかもしれませんね。
加えて、声に出して読みたいゲッコー語録も独特です。
「欲は善です。欲は正しい。欲は導く。
『ウォール街』より
欲は物事を明確にし、道を開き、発展の精神を磨き上げます。
人類進歩の推進力です。」
そうそう、こういう人はこれくらい自己肯定感が強くなきゃね。
日本では露骨な拝金主義は嫌われる風潮がありますが、それでも自らの欲望に哲学を持ったゲッコーのカッコ良さは否定できないのではないでしょーか。
マイケル・ダグラスはこの役でアカデミー賞主演男優賞を受賞。やはり、欲望に素直でガツガツした男を演じさせたらピカイチです。
ただ、本作が「金儲けはいいぜぇ!金儲けはよ〜!」というゲッコーの独壇場なのかと言うとそうではありません。最後は主人公の父親(マーティン・シーン)が愛のムチとなる金言を与えて締めてくれます。金の亡者に振り回されて挫折を味わった若者にとっては父親の愛が嫌というほど身に沁みる映画でもあるんですよね。
(画像はIMDbより引用)
僕の評価
8点/10点

いや~!面白かったです。欲望のままに動くマイケル・ダグラスは完全にハマリ役で素晴らしいゲス男ぶりでした。
どうでも雑感
・ヒロインがダリル・ハンナで、ゲッコーの奥さん役がショーン・ヤング(出番少ない!)ということで、『ブレードランナー』同窓会っぽくもあったのがまた嬉しかったですね。
・最後にマイケル・ダグラスが狼狽するところは思わずニヤニヤしてしまいました~。彼は自分の立場が悪くなると激しく狼狽する役柄のイメージが強いので笑。一般大衆(特に日本人)にとっては出る杭が打たれるというのはカタルシスなんですね。
・アメリカの良心を象徴するのが本作の主人公の父親。で、そんな良心と対立するように強烈にインモラルな悪役が登場するのはオリヴァー・ストーンの前作『プラトーン』と同じですね。「ウィレム・デフォー(良心)対トム・ベレンジャー(インモラル)、間に挟まれるチャーリー・シーン(若者)」の構図をウォール街に持ち込んだのが本作という気がしてきました。
鑑賞方法
『ウォール街』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。
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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。
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