『乱』【感想・考察】大傑作!秀虎はクロサワ自身?巨匠のマゾヒズムとは

映画『乱』の一場面 ドラマ
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黒澤明監督(以下、クロサワ)の作品の中では本作が一番好きだ。
クロサワ本人も本作をライフワークと位置付けており、「人類への遺言」とまで語る渾身の一作。
しかも、悲劇の主人公である一文字秀虎はクロサワ自身がモデルというから、驚きです。

タイレンジャー
タイレンジャー

セカイのクロサワが自分自身を徹底的に痛めつける映画。

作品概要

1985年/日本、フランス/162分
監督:黒澤明
脚本:黒澤明/小国英雄/井手雅人
撮影:斎藤孝雄/上田正治
音楽:武満徹
出演:仲代達也/寺尾聡/根津甚八/隆大介/原田美枝子/宮崎美子 ほか

巨匠・黒澤明が構想10年・製作費26億円をかけて完成させたライフワーク的作品で、シェイクスピアの悲劇「リア王」をベースに毛利元就の「3本の矢」の故事などを取り入れながら、裏切りと憎しみの中で殺し合う人々の姿を壮大なスケールで活写した戦国時代劇。70歳を迎えた猛将・一文字秀虎は、家督を3人の息子に譲ることを決意する。息子たちの団結を信じきって自らは隠居を望む弱気な父に対し、3男の三郎は異を唱えるが、怒った父に追放されてしまう。しかし三郎の予想通り、兄の太郎と次郎は秀虎に反旗を翻し、血で血を洗う骨肉の争いが始まる。ワダ・エミが衣装を担当しアカデミー衣装デザイン賞を受賞。公開から30年を経た2015年に4Kデジタル修復版としてよみがえり、第28回東京国際映画祭「Japan Classics」部門で上映された後、17年4月より劇場公開。

(映画.comより)

予告編

4/1(土)公開 映画『乱 4K』予告編

感想・考察(ネタバレなし)

巨匠の自己破壊スペクタクル

クロサワが出演者の宮崎美子さんに「一文字秀虎は私自身だ」と語ったように、老将・秀虎=クロサワなのは間違いない。家督を長男に譲る秀虎は70歳という設定で、本作の製作当時のクロサワもまた70代前半で年齢も一致する。

今回、クロサワ自身が主人公なのだという前提で本作を見直したのだけど、ぞっとした。クロサワのあまりのマゾっ気の強さに。 

厚く信頼していた子と家臣には裏切られ、仕えている者たちは皆殺しにされ、自身は半狂乱に陥り、自らが殺めた者たちの亡霊に恐れおののく。ようやく唯一の理解者に恵まれたと思ったら、一気に絶望的な結末へ。 世界的な巨匠が晩年にここまで自分を苛め抜く姿は直視に耐え難いレベルだ。

全てを手にした貴方がなぜ、そうも自分を痛めつける?これまでの作品の為に犠牲になってきたスタッフ、キャストへの懺悔?これほど名声ある人の晩年の全面的な自己否定は他に類を見ない。 

かと言って、そこには哀れな老人に対する同情を求めるような意図は全く無い。自己憐憫を徹底的に排除している。自己憐憫という逃げ道が無いのは気持ちがいい。 僕は中学生の時に初めて本作を鑑賞して、物語の重さに圧倒されたけど、クロサワ自身の物語として改めて鑑賞した結果の重さはその比ではない。 僕は本作がクロサワ最高傑作というだけでなく、邦画の頂点だとも思っている。

が、本作はどういう訳か、クロサワファンの中ではあまり人気が無い。クロサワ全作品の中で人気投票をしたら、ベスト10に入るかどうか怪しい。昔からのファンほど、本作に対しては否定的な気がする。不可解だ。 

これほどまでに作家の率直で容赦ない自己破壊は見たことが無いし、クロサワ自身を孤高の存在たらしめる決定的な映画だ。という具合に、今後は評価が高まることに期待する。

(画像は映画.comより引用)

僕の評価

10点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

魂が震える大傑作!すべてが素晴らしい!

どうでも雑感

・前作『影武者』では不完全燃焼に終わった(と言うか、敢えて見せなかった)合戦シーンが本作では怒涛の画づくりによって繰り広げられます。凄まじい迫力!

・仲代達也さんの顔面力が、堀の深い特殊メイクによって倍増するという。

鑑賞方法

『乱』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルなのでぜひ。
(2020年10月時点)

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