『ブルータル・ジャスティス』【じっくりコトコト】この長さは一体何なんだ?

映画『ブルータル・ジャスティス』の一場面 アクション
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Twitter上で「#2020年映画ベスト10」の中に本作を上位に挙げる人が多くて、気になり鑑賞した次第です。

既に多くの方が書かれている通り、本作の何よりの特徴はその「あまりにゆったりした展開と長い尺」です。なぜこんなに展開が先に進まないのか?そのへんについて書いてみました。

タイレンジャー
タイレンジャー

時間の使い方にすごく癖のある映画でしたね。

作品概要

2018年製作/159分/R15+/カナダ・イギリス・アメリカ合作
原題:Dragged Across Concrete
配給:クロックワークス
監督・脚本:S・クレイグ・ザラー
撮影:ベンジ・バクシ
音楽:ジェフ・ヘリオット/S・クレイグ・ザラー
出演:メル・ギブソン/ヴィンス・ヴォーン/トリー・キトルズ/マイケル・ジェイ・ホワイト/ジェニファー・カーペンター/トーマス・クレッチマン/ウド・キア/ドン・ジョンソン/ローリー・ホールデン ほか

「トマホーク ガンマンvs食人族」「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」などでカルト的人気を集める気鋭の監督S・クレイグ・ザラーが手がけたバイオレンスアクション。ベテラン刑事のブレットと相棒のトニーは、強引な逮捕が原因で6週間の無給の停職処分を受けてしまう。どうしても大金を必要としていたブレットは、犯罪者たちを監視し、彼らが取引した金を強奪するという計画を練る。ブレットはトニーを誘って計画を実行に移し、ボーゲルマンという男の監視を開始する。そしてある朝、動き始めたボーゲルマンとその仲間を尾行するが……。ブレット役をメル・ギブソンが演じ、トニー役は「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」でもザラー監督とタッグを組んだビンス・ボーンが務めた。そのほか「戦場のピアニスト」「タクシー運転手 約束は海を越えて」のトーマス・クレッチマンが出演し、極悪非道の強盗犯を演じている。

映画.comより)

予告編

『ブルータル・ジャスティス』予告映像

感想・考察(ネタバレなし)

な、長ッ・・・!

スローフード、スローライフの流れを汲んだ【スロームービー】なるものがあるとしたら、本作のような映画を指すのではと思います。

時間の制約にとらわれず、ゆっくりと、丹念に、ある意味では緩慢とも言える時間の使い方にこそ本作の価値があるからです。

上映時間は159分と、この時点ですでに長いのですが、実際に鑑賞してみると体感上映時間はその倍くらいだと思いました。僕は2回も寝落ちしてしまった為、完走するまで3日間を要したほどです。映画には「事件など」をきかっけに物語が転がりだすターニングポイントのようなものがありますが、それが本作においてはだいたい90分過ぎになるまで起こりません。それくらい本作の展開は遅く、一見不要と思えるような場面が長いし、多いのです。

ほぼ何も起こらない最初の90分間で何を描いているのかと言うと、その多くは登場人物の背景や行動原理です。主人公にあたるベテラン刑事(メルギブ)だけでなく、その相棒刑事や、後に交差するであろう出所したてのチンピラに至るまで、彼らの性格、家族構成、財政状況といった要素が実に淡々と描かれます。

これらの一見どうでも良さげな情報も伏線なんだろなと我慢しながら観続けますが、中盤においてこれまた本筋とは関係なさそうな銀行員の女性が唐突に登場し、彼女の日常生活が長々と描写されるのには唖然としました。後に彼女が本筋の展開に関与することが判りますが、重要な役割ではなく、モブキャラの1人であったという扱いにまたしても唖然。

なぜこんなに人物の背景描写に時間を割くのかと言うと、本作は情報の見せ方が映画よりも小説に近いからだと思いました。

映画『ブルータル・ジャスティス』の一場面

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これは小説のような人物描写

もちろんすべての小説がそうではないのですが、小説は映画よりも「時間」の制約が無いぶん、登場人物の背景を丹念に書き込むことができます。

例えば、映画化もされたトマス・ハリスの『ハンニバル』では、章が変わると舞台も米国からイタリアに移り変わって、フィレンツェに住む中年刑事の経歴や家庭環境、個人的な問題(カネがもっと欲しい)が延々と描かれて「なんだこれは」と思いました。しかし、それがフィレンツェに潜伏するレクター博士を捕らえて一攫千金を得ようとする動機に繋がってくるのです。

個人の苦しい財政状況が背景としてあるから、リスクが高いながらもレクター博士を生け捕りにしよう計画の動機となり、読者は彼の「想い」とサスペンスを共有できるようになるのかなぁと。

本作もまた、荒っぽい刑事2人が不本意ながらも悪事に手を染めるまでの動機がじっくりコトコトと描かれます。まさに犯罪小説を読んでいるときのような情報量と時間の流れ方を観客は体感するのですね。

ただ、小説の情報量をそのまま映画にしていたら必然的に上映時間が長くなってしまうので、普通はそういう要素をカットするんですが、本作は敢えて小説のような映画作りをしているんだなぁなんて思った次第です。

中盤に登場する銀行員の女性については、我が子と離れるのがツライからと仕事に行きたくないと駄々をこねるし、あまりに挙動不審なので何か深い意味があるのかな?と思いましたが、彼女の場合はどうやら暴力の凄惨性を強調する役割だったようですね。モブキャラの1人にだって人生があるし、人並みに大事な人がいて、同時に満たされぬ思いを抱えて生きている、と。

また、ようやく話が軌道に乗ってくる後半以降も展開はおっそいですが、これはリアリズムが緊張感を生み出す効果を意図してのことかなと思います。爆発的に盛り上がることはありませんが、ジリジリと身が焦げていくような小さな緊張感が長ーく持続します。

だから、ドリップコーヒーの一滴一滴がポタポタ落ちる様子を眺めながら香りを楽しむような心の余裕がないと観るのがツライかもしれませんねぇ。手っ取り早く缶コーヒー!という人には向かないでしょう。時間に余裕があるときに集中できる環境で観るのが(結局は劇場ですが)良いかと。

僕にとってはどうだったかと言うと、育児の傍ら観る映画ではなかったなぁと。子どもの面倒を見たあとで観るには眠すぎます。

僕の評価

5点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

リアルな銃撃戦や内臓があらわになるグロ描写などは良かったです。

どうでも雑感

・メル・ギブソン主演の2人組の刑事ものということで、本作が「間違えたリーサル・ウェポン5」なのかと思うと悲しい・・・。マータフ刑事の引退後に新しく後輩を相棒にした老リッグス刑事の姿がこれだったらと思えなくもないです。

・ただ、個人的にはメルギブは悪い男の役のほうがハマる(悪ギブ)と思っているので、本作の役柄はやさぐれ感も含めて合っていたと思いますけどね。

・登場人物の1人「マッチョ」が『スポーン』のマイケル・ジェイ・ホワイトだったことに鑑賞後に気づいた・・・。

鑑賞方法

『ブルータル・ジャスティス』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

・U-NEXT |31日間無料トライアルキャンペーン実施中

U-NEXT

・TSUTAYA TV |30日間無料お試し期間実施中

※本ページの情報は2021年1月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

個人的に認定する「スロームービー」

+10

コメント

  1. キャン より:

    毎度お邪魔します。
    最近レンタルショップでも猛烈アピールされてて、僕もそのうち見ることは確定している作品ですが、そんなに長かったんですか…。
    長くてもそれを感じさせないくらい面白い作品はいくつもありましたが、体感時間はさらに長いとは、判断に困りますね。
    覚悟を決めて見ることにします。

    とりあえず『リーサル・ウェポン5』の話はちゃんと別にあるようなので、切り替えていきましょう!
    実現するかはわかりませんが。

    +1
    • キャンさん、いつでもいらっしゃ~い!
      いい内容だと思うんですが、やたら長いし遅いんですよね・・・。
      その長さを心地よい、癖になる、と感じている人も多いようなので、個人の好みだと思われます。
      もしかしたら時間が経つにつれて意識の中でじわじわと評価が高まっていくような気もします。
      長くて遅いだけに時差式に心にリーチするのかもしれません。
      1年くらい経ったら僕の中では傑作に昇格している可能性もありますね(笑)。

      0
  2. じんちゅ より:

    寝落ち…、ってもうその時点でこの映画に対する評価が決まっているような(笑)
    自分もあります寝落ちしてしまう映画、それでも最後までみなきゃって思ってる時点でたぶんろくなことがない。

    本作、未見なのですが、タイさんの記事を読んで「たしかに!」って思います。

    監督としては細部まできめ細やかに人物描写をしたのでしょうが、そういうのって、小説とちがって映画の場合、“画”でもみせられるんだから、できるだけ画の中に上手にスマートに情報を詰め込む必要があるんですよねぇ。

    ※何度もコメントしてすみません。なんとなく書き込みしたくなってしまう性分なので、特に返信はしていただかなくても構いませんよ。

    +1
    • じんちゅさん、いつもコメントをありがとうございますー!
      そうなんですよね。「あー眠いなー。でもここから盛り上がるかもしれないし最後まで観なくては・・・」
      という映画の場合、だいたいは最後まで観なくてもいいパターンです(笑)。
      本作の監督はどうも画で端的にサラっと見せるのを良しとしない、そこに価値を感じていないタイプのようです。
      それがこの人の作家性というものなんでしょう。
      ただ、あれだけの尺を使って細部をっじっくり描いた割には僕にはもう一つ響かなかったのは事実です。

      ※どんな些細なことでも反応を頂けるのは書き手として嬉しいものです。
      つぶやき感覚でどうぞ気軽に書き込んでください。

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