『デンジャー・クロース 極限着弾』美談にあらず!好感の持てる殺伐戦争映画

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』の一場面 アクション
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ベトナム戦争にオーストラリア軍やニュージーランド軍が参戦していたという事実は知りませんでしたねぇ。

そんなオーストラリア軍が経験した最も激しい戦闘「ロンタンの戦い」の映画化が本作です!

なかなか良かったですよ。殺伐としているところが。

タイレンジャー
タイレンジャー

僕は殺伐としていて不穏な戦争映画が好きなのです。

作品概要

2019年製作/118分/G/オーストラリア
原題:Danger Close: The Battle of Long Tan
配給:彩プロ
監督:クリフ・ステンダーズ
脚本:スチュアート・ビーティー
撮影:ベン・ノット
音楽:ケイトリン・ヨー
出演:トラヴィス・フィメル/ルーク・ブレイシー/リチャード・ロクスバーグ/ニコラス・ハミルトン/ダニエル・ウェッバー/マット・ドーラン/スティーヴン・ピーコック/アレクサンダー・イングランド ほか

ベトナム戦争でオーストラリア軍と南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)が繰り広げた「ログンタンの戦い」を映画化したオーストラリア製戦争アクション。1966年8月18日未明の南ベトナム。ヌイダット地区にあるオーストラリア軍司令部の基地がベトコン部隊による砲撃を受ける。ハリー・スミス少佐率いるオーストラリア軍の部隊が発射地点を突き止めるため偵察に向かうが、農園地帯のロングタンで敵部隊に包囲され、容赦ない攻撃にさらされてしまう。味方からの応援も容易に駆けつけることができないジャングルで絶体絶命の危機に陥ったスミス少佐の部隊は、基地本部に連絡し、目前にいる敵への後方から迫撃砲=「極限着弾(デンジャー・クロース)」を要請するが……。

映画.comより)

予告編

映画『デンジャー・クロース 極限着弾』予告編

感想・考察(ネタバレなし)


同じ戦争映画でも、アカデミー賞ノミネートの『1917 命をかけた伝令』よりも僕は本作のほうが好みです。

『1917』は話が綺麗すぎるのが面白くないんですね。『プライベート・ライアン』や『永遠の0』もそうです。なに美談かまそうとしてんねん、と。

もう当ブログでは何度も書いていることですが、戦場の美談は白ける、のです。その点、本作は綺麗事は言わないし、無理に美談にしようともしていないからイイです。

お涙頂戴なし。過度に命の尊さを訴えることもなし。娯楽映画らしいご都合主義もなし。
同胞を守るための自己犠牲もなし。間一髪のところで味方が助けに来ても、爽快感なし。

本作にあるのは、少しでも気を抜いたら即死、という殺伐とした現実なのです。ただただ被弾しないよう祈ることしかできない状況なのですね。

しかも戦況はかなりの数的不利。まるでアラモの砦。そして本作のベトコン兵たちはあまりゲリラ戦法を使わず、非効率にも旧日本軍のように正面からの突撃を繰り返します。

しかし、これが怖い。撃てども撃てども、相手の数はなかなか減らず、絶えず突撃をしてくるのです。とても綺麗事が入る余地はありません。

この極めて劣勢な状況をキレイゴト無しに描く作風はリドリー・スコットの『ブラックホーク・ダウン』に近いです。あれもまた殺伐たる戦争映画だったので僕は大好きです。

さて、本作はベトナム戦争においてオーストラリアとニュージーランドの両軍が経験した中で最も激しかったと言われる戦闘「ロンタンの戦い」を描いています。

当時ベトナムに軍隊を派遣したのは米国、韓国だけではなかったのですね。他にも少数ですが、タイ軍、フィリピン軍も派遣されていたようです。

参加した志願兵の多くは20歳そこそこの若者ばかりという点、自国民の支持を得られなかった戦争であったという点では米国もオーストラリアも同じだったようです。その後の1970年、米軍と時を同じくしてオーストラリア軍は撤退を始めたとのこと。その間、5万人のオーストラリア兵が南ベトナムに派遣されていたそうです。

なお、ロンタンにはゴムの木のプランテーションがあり、被弾した木の幹から白い液体がドバッと出たりするのはゴムの樹液ですね。

最後のエンドロールでは当時の記録映像が出てきますが、この見せ方のドヤ顔感の無さも好感が持てました。

最近の実話ベースの映画はエンドロール付近で実際の映像を見せたがりますが、「どうだ本物ソックリだろう」と言わんばかりで、僕はあまり好きではありません。その点、本作は戦闘に参加した人々への敬意をサラリと表現しつつ、自慢ではなくあくまで補足的な役割として用いているのが良い塩梅でした。

てな訳で僕は概ね満足でしたが、演出なり展開なりほかに突出した要素があればなぁ、という点では惜しい作品だなぁと。あと一発、パンチが欲しかったです。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

全体的には好きですよ!7点でもいいくらい。

どうでも雑感

・主人公を演じたトラヴィス・フィメルは時々、松平健に見える…。

鑑賞方法

『デンジャー・クロース 極限着弾』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

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