前作があんな出来だったにも関わらず、出資者たちは満足したのか、懲りなかったのか。間髪入れず製作されたシリーズ第三弾!
これが前作に輪をかけてヤケクソ映画になっていています。

もう滅茶苦茶です。ただ、興味深い方向性が見えたことも確かです。
作品概要
1991年製作/90分/アメリカ
原題:Basket Case 3
監督:フランク・ヘネンロッター
脚本:フランク・ヘネンロッター/ロバート・マーティン
撮影:ロバート・パオネ
音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック/アニー・ロス ほか
あらすじ:
前作で遂に童貞を卒業したフリークスの兄が今度はパパに!12人もの子どもたちが誕生!しかし、話はフリークス界と人間界の全面抗争に発展していく。
予告編
感想・考察(ネタバレなし)
わざと下手に演じているとしか思えない演技、間が悪すぎる編集など、映画の基礎力は前作よりも更に低下しています。
且つ、話としては更にとんでもない方向に向かっており、人間界vsフリークス界というスケールの大きいものに肥大しているのですー。
「作る気は無かったけど、お金を出してもらえるし〜。好き勝手やらせてもらうぜ!」とヘネンロッター監督が思ったかどーか分かりませんが、製作費を湯水のごとく使っているのは明らかです。
(IMDbより)
↑粘土細工のような兄の子どもたち
なので、1作目のファンとしては観るのが非常にしんどいのですが、本作は終盤から様相が変わってきます。ヤケクソが過ぎるあまり、逆に(少し)面白くなってくる、という現象が生じるのです。
たぶん、作り手もそうだったんじゃないかと。最初はやっつけ仕事でヌルいテンションで撮っていながらも、やっているうちに少し楽しくなってきたんじゃないでしょーか。終盤の吹っ切れ展開は、そんな楽しげな撮影現場を想起させるものでした。
それから3作を通して観ると、結果論ですが1つのテーマが浮かび上がってきます。それはフリークスの兄が「そして父になる」話なんだなぁ、と。福山雅治の映画のことじゃないですよ。自己中心的な男が人の親になることで、父親としての自覚に目覚め、精神的な強さを発揮するってパターンの話のことです。
本作では兄は12児の父として、子どもたちを守るために人間たちと闘います。そのお姿のなんと力強いことか!
1作目では私怨のために人間たちをブチ殺していた、あの兄がですよ。性欲を満たす為に女を死姦した、あの兄がですよ!
(IMDbより)
↑『エイリアン2』みたいなパワードスーツで人間と闘うお兄ちゃん!
1作目だけ観たら「満たされぬ性欲」についての映画だなーなんて思ったものですが、シリーズ通して観ると「男の子が父親になるまでの話」に見えなくもないから、アラ不思議。
その一方で、何をしなくてもモテていた弟(健常者)は作品を重ねるごとに存在意義が薄れていき、他人の気持ちを考えないワガママおじさんで終わっています。
(IMDbより)
↑モテ男からワガママおじさんに転落した弟
フリークスの兄は父親として責任ある立場を全うし、健常者の弟は成長どころか、幼児退行してしまうという。ヘネンロッターは実は(人間の)男の愚かさを痛烈に描く作家でもあるのかねーなんて。
僕の評価
3点/10点

前作よりも酷い出来ですが、パワードスーツでちょっと持ち直したかな?
どうでも雑感
・本シリーズに限らず、ヘネンロッターは一貫して「異形なるもの」と人間との共存について描いています。やっつけ仕事である本作においてもそれはしっかりと貫かれており、軸はブレない人だなと思いましたね。
鑑賞方法
『バスケット・ケース3』はU-NEXTで鑑賞できます。31日間無料トライアルキャンペーンがあるのでぜひ。

本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
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