『イップ・マン 完結』露骨にも!米中貿易戦争・恨み節

映画『イップ・マン 完結』の一場面 アクション
(C)Mandarin Motion Pictures Limited, All rights reserved.
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ブルース・リーの師匠でもある実在の武術家、葉問(イップ・マン)をモデルにしたシリーズ第4弾にして完結編。

で、史実とは異なるのかもしれませんが、イップ師匠がまさかの渡米!というのが今回。

これにはトランプ政権以降の米中関係の影響が見られる作風になっていると思うので、その辺の話を。

タイレンジャー
タイレンジャー

そもそもこのシリーズ自体が戦意高揚を狙っている部分もあると思います。

作品概要

2019年製作/105分/G/香港・中国
原題:葉問4 | Ip Man 4
配給:ギャガ・プラス
監督:ウィルソン・イップ
脚本:エドモンド・ウォン
撮影:チェン・シュウキョン
音楽:川井憲次
アクション監督:ユエン・ウーピン
出演:ドニー・イェン/スコット・アドキンス/チャン・クォックワン/ウー・ユエ ほか

「ムーラン」「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」など、ハリウッドでも活躍するドニー・イェンが、ブルース・リーの師匠として知られる詠春拳の達人イップ・マン(葉問)を演じる伝記アクションシリーズ第4作。1964年、サンフランシスコに渡ったイップ・マンは、弟子であるブルース・リーとの再会や太極拳の達人ワンとの対立などを経て、アメリカという異国の地で生きる同胞たちが直面している厳しい現実を身をもって知る。そんな中、中国武術を敵視する海兵隊軍曹バートンとの戦いでワンが敗北を喫してしまう。香港に残して来た息子にある思いを伝えたイップ・マンは、宣告された病を隠して、人びとの誇りのために最後の戦いへと挑む。シリーズ最終作となる本作は、香港電影金像奨で監督賞をはじめとする9部門にノミネートされた。監督は「イップ・マン 序章」「イップ・マン 葉問」「イップ・マン 継承」と、シリーズ全作品を手がけたウィルソン・イップ。

映画.comより)

予告編

【公式】『イップ・マン 完結』さよなら、イップ・マン。/7/3(金)公開/本予告

感想・考察(ネタバレなし)


このシリーズ、「中国を虐げるムカつく外国人をイップ師匠がぶっ倒す」のがウリになっています。

外国人というのは主に日本人や英国人、米国人のことで、本シリーズではいずれも鬼畜のような描かれ方をされています。

1作目は日中戦争が舞台で、旧日本軍の横暴に怒りの鉄拳を食らわすという分かりやすい抗日映画でした。2作目は英国人ボクサーと、3作目は米国人デベロッパーと対戦。

実際、これらの「侵略者たる外国人を倒すことで中国の観客の溜飲を下げる」作風は絶大な効果があったようで、大ヒットシリーズになっています。

で、今回の4作目でイップ師匠がわざわざ渡米して米海軍をコテンパンにするのはシリーズの性質を考えれば必然の流れ、というわけです。

特に今回は昨今の米中貿易戦争の煽りを受けている感があり、「米国人、許すまじ!」という恨み節に近い作り手の敵意を感じます。『ロッキー4/炎の友情』のように政治的メッセージが込められていると言ってもいいでしょう。

さらに深読みすると、「中国国民(香港、ウイグル含む)よ、互いに争っている場合ではない。真の敵は外にあり。鬼畜米帝である」と言っているようなストーリー展開になっています。

これは2作目とほぼ同じなのですが、イップ師匠が邪魔をする中国人と敵対関係になりますが、より強大な敵(外国人)を前に「同胞なのだから争うのはやめよう」という感じになるんですね。

米中貿易戦争に限らず、香港動乱、ウイグル問題の近況も踏まえた上での、中国共産党から国民へのメッセージのように見えてしまうのです。内政がマズくなったら他国に批判の目を向けさせる、というよくある手法でもありますが。でも、中国ではまた大ヒットを飛ばすでしょうね。

ま、そんな作り手の思惑は「それはそれ」として、サービス精神にも溢れた本作はなかなか楽しめます。

前作にも登場したブルース・リー(大人)が本作ではいよいよ本格的なアクションを見せてくれます!演じるのは『少林サッカー』で偽ブルース・リーなGKを演じたチャン・クオックワン。

映画『イップ・マン 完結』の一場面

(C)Mandarin Motion Pictures Limited, All rights reserved.

『ドラゴンへの道』の対チャック・ノリス戦を彷彿とさせるアクションを演じており、これは「ブルース・リー!半・復活!」と言いたくなる嬉しいシーンでした。まぁ、似てたり似てなかったりなんですが。

あと、このシリーズの特色は多彩なゲスト(悪役)ですね。

1作目は池内博之!
2作目はサモハン・キンポー!
3作目はマイク・タイソン!

多彩すぎてもはや異種格闘技戦が基本になっています。
さて、今回の最終作を飾るに相応しい対戦相手は…

映画『イップ・マン 完結』の一場面

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スコット・アドキンスだ!!

ん?
…なんだ!この微妙な反応は!?

アドキンスと言えばネクスト・ヴァンダムと呼ばれて久しい英国のアクション俳優。
実力者だが、どうも華がない。そのせいか、いまいちブレイクに至っていないのですが、果たして今回の悪役ぶりやいかに?

アドキンスが演じるのは米海軍の鬼教官。

映画『イップ・マン 完結』の一場面

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むむむ、その役柄にこの格好は…
まるで『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹ではないか!

IMDbより)

「タマ落としたか!ウジ虫ども!」
Sir ! Yes ! Sir !!

おお!つまり、本作はイップ・マン vs ハートマンと言っても差し支えないかと!そういう観点で見ると(本当にそうとしか見えないのですが)激アツです!

ところが、アドキンスの声に異変あり。
僕はカンボジアの映画館にてカンボジア語吹き替え版(英語と中国語の字幕付き)で観たのですが、なぜかアドキンスの吹き替え声優がフニャフニャした声で、くまのプーさんみたいなのです。

恐らく「コイツはバカでマヌケな脳筋の米国人だ」という吹き替えスタッフ(カンボジア人)の悪意の表れかと。

または外交的に傾中国化しているカンボジア政府の影響で中国に忖度した?
せっかく憎たらしい悪役を好演していたのに(主演より悪役のほうが似合う?)…。アドキンスにとっては迷惑なとばっちりなのでした。

最後に、4作に渡りイップ師匠を演じたド兄ィ、お疲れ様でした。

僕の評価

6点/10点

タイレンジャー
タイレンジャー

政治的な思惑はあるにせよ、楽しめればそれでOK。

どうでも雑感

・スコット・アドキンスは絶対に悪役のほうが合っていると思いました。それもちょいとマヌケで憎たらしい感じの悪役。その路線で行けばアドキンスもワイスピの新作に参戦できそうな気が…。アドキンスの魅力についてはキャンさんのブログをご参照ください。

・このシリーズは毎回のことですが、時代劇のようなベッタベタのストーリーで先が読めてしまうのですが、それはそれで良いのです。

鑑賞方法

『イップ・マン 完結』は下記のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にて配信中です。

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※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信・レンタルの状況は各サイトにてご確認ください。

ドニー・イェン出演作

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